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東方玉霊絆  作者:
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星の煌めき

「起きろよ、もう朝だぜ」

少女らしい、小さな手で体を揺すられて目を覚ました。

暖かみのある床から起き上がると、自分が読み散らかした魔道書の類が目に入る。

「こんな所で寝て大丈夫だったのか?」

昨晩、幻想郷について一通り聞いた後、魔理沙が寝床を提供してくれると言ってくれた。

ベッドを貸すとまで言ってくれたのだが、流石に悪いので雑魚寝することにしたのだ。

正直、屋根のあるところで寝られるだけで嬉しいし、食事までご馳走になってしまったから頭が上がらない。

「慣れてるからな」

「慣れてるなら大丈夫だな」

魔理沙はスタスタと玄関に向かい、扉に手をかけた。

「どこ行くんだ?」

「恐ろしい巫女が住んでる神社だ。昨日話しただろ?」

「えっと...お留守番ってことか?」

「お前も行くんだよ...」

そういえば、そんなようなことを言っていた気がしないでもない。

慌ててリュックを引っ掴み、魔理沙の後を追った。

揃って家から出たところで、魔理沙が急に振り返った。

「神社に行く前に、お前の実力を見ておこうと思う」

「実力?...ああ、アレか」

「そう、スペルカードルールだ」


スペルカードルール。

妖怪や神なんかが闊歩かっぽする幻想郷で、均一の条件の元に優劣を競い合うために生まれたルール。

対戦者は弾幕の美しさで戦い、精神的な勝利を目指す。

勿論、最低限の実力が無ければ危険だし、強い妖怪はより多く弾を撃ってくる。

完全に弾幕を撒いて戦う者も居れば、機敏な身のこなしで体術を扱う者も居るらしい。

この上なく実戦に近いスポーツ...とでも例えればいいだろうか。

まあ、根底は精神や美しさだと念を押していたが。


「実力って言っても、話を聞いただけだと俺はほぼ一般人だぞ?」

「それでもルーミアに勝ったんだ。からっきしってわけでもないだろ?」

昨日襲ってきた女の子はルーミアというらしく、魔理沙も知っている妖怪なんだとか。

「勝ったというか、興味がなさそうだったな。一応襲ったというか...義務感というか...」

「そんなのはどうでもいいって。勝ったって事実は変わらないじゃないか。私も手加減するからさ」

「魔理沙がやりたいだけだろ...」

魔理沙と呼んでいるのは、一度「霧雨」と呼んだら「気持ち悪いぜ...」と返されたからだ。

かなり効いたが、こっちの方がしっくり来る。


リュックから木刀を取り出して、玄関の脇に放った。

離れすぎず、近づきすぎないような距離を取る。

ルーミアという妖怪みたいな弾を近距離で撃たれたら、避けられる気がしないからだ。

それでいて、木刀のような近距離武器を使う以上は、離れすぎるわけにもいかない。

結果、魔理沙とは10mほど離れた場所を選んだ。


「じゃあ...いくぜ!」

箒を片手に持った魔理沙がもう片方の手をかざすと、色とりどりの星をかたどった弾が流れ出した。

魔理沙を中心に廻る星達は、天の川を連想させる。

「なっ...」

てっきり直接狙ってくると思っていたので、完全に虚を突かれた状態から始まってしまった。

相手によって弾幕は違うと聞いてはいたが、ここまでとは思っていなかったのだ。

「くっ...」

それでもやるからには勝ちを狙いに行きたい。

星の銀河に飛び込むように、足を一歩前へ出した。

それが二歩、三歩と続き、ダッシュになる。

弾幕をくぐり抜けながら、頭の中では勝利への道筋を組み立てていく。

試さなければならないことはあるものの、上手くいけば勝ちを拾えるパターンを見つけた。

「まず...は!」

流れてきた星を斬り払うように木刀を振るう。

ボゥン、という爆発音と、そこそこの爆風。

そしてなにより、木刀が折れていない。


イケる、と心の中で叫んだ。

「よそ見してると抱え落ちするぜ!」

逆からも星弾が流れ始め、急いで撤退した。

あたふたしたステップを踏みながら逃げ、木刀を正面に構え直す。

「おおおおおお!!」

タイミングを測り、一直線に魔理沙へと駆け出した。

当然のように星弾が行く手を遮る。

狙っていた大きめの星に思い切り木刀を打ち付け、爆発させた。

ボゥン!とさっきより大きな音を感じながら、前へと飛ぶ。

星の上を渡るように跳んだ体は、下からの爆発をモロに受け止めていた。

高く宙を舞い、魔理沙の頭上から急襲する。

形になっていない剣撃でも、爆発を受けて回転している力を加えた飛びかかり攻撃ならそれなりの型となる。

「甘いな。激甘だぜ」

飛んでいる俺を見透かすように、魔理沙が八角形の箱のようなものを構えていた。

光を集めるように輝きだしたのを見て、頭の中で最大限の警報が鳴る。

「恋符...」

放たれる直前、木刀を盾にするように全身を屈めて祈った。

「『マスタースパーク』!!」

光の奔流に飲み込まれ、大きく後ろに吹き飛ばされていく。

眩しさは途中で消え、力を受けた後の慣性で木にぶつかって止まった。

「いっててて...」

「ごめん!やり過ぎた!」

魔理沙が急いで駆け寄ってきて、頭を下げた。

「大丈夫大丈夫。俺も本気でやってたし、お互い様だろ?」

「そ、そうか...?」

心配そうに見つめてめくる魔理沙に笑いかけ、立ち上がった。

「そうだって。木刀も無事だし、俺もピンピンしてる。ぶつかった時に痛かったくらいだ。手加減すると弾の衝撃もなくなるんだな」

「いや、そんなはずはないぜ。少なくとも私はちょっと本気でマスタースパークを撃った」

「おい...」

「そうじゃなくたって、星弾の爆風なんかに乗れば怪我したっておかしくない」

「だけど、怪我はしてないぞ?」

「そうだな...」

魔理沙は少し考え込むと、スッと手を差し出してきた。

「ちょっと木刀それ見せてくれないか?」

「ん、ああ...」

木刀を渡すと、魔理沙はまじまじと眺め始めた。

十分に見たらしく、木刀を返してくれた。

「変わったところはないな。魔道具でもないし...なんなんだ?」

「前に買った普通の木刀だ。それ以外はわからん」

「なんにせよ、神社に行けば多少は分かる」

「そんなもんか?」

「そんなもんだ。...よっと」

魔理沙は持っていた箒に跨り、後ろの空いている部分をポンポンと叩いた。

「...やっぱり飛ぶの?」

「魔法使いだからな。箒で飛ぶ」

魔理沙の後ろに跨り、どこかで見たようにしっかりと箒の柄を掴んだ。

「出発だ!」

ふわり、と箒が宙に浮き、木の上へと急浮上した。

「うお!?」

「飛ばしてくぜ!」

この後、思い切り叫んだのは言うまでもない。

間に合いました。どうも、作者の扇です。

師も忙しく走り回る師走とは言いますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

ちなみに師が忙しく走り回るというのは由来として間違いというのを聞いたことがあります。

じゃあなんだっていうんだ!

と激しく思ったので、僕はこの由来のまま走り続けます。

さて今回は魔理沙との初戦闘になりましたが、違和感とか...ないですよね...大丈夫ですよね...

毎回書く前の白紙を見るととても緊張してしまいます。

他の人さらさら書いてて本当に尊敬します...

見習わなくっちゃいけませんね!精進します!

それではまた来週にお会い出来れば幸いです。

ありがとうございました!

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