お手伝い
俺…轟隆也は、永遠亭の縁側で額に玉を乗せて暇をつぶしていた。
隣に座って同じく暇そうにしていた鈴仙は、大きなあくびをしている。
左手もほぼ全快し、お師匠様の出してくれた薬で霊力の流れも好調だ。
全快はしたものの仕事などが言い渡されているわけではないので、暇で暇で仕方がない。
「そういえば隆也、なんでボールを頭に乗せてるの?」
「バランス鍛えると能力の幅が広がるんだよ。変な体勢でも弾幕が撃てたりとか」
「へぇ~…そういうことしてたんだ…」
「なるべく時間無駄にしないようにな。置いてかれるし」
額に乗っていた玉を首の力で一旦浮かし、頭の上に移動させる。
「…器用ね」
「ここしばらく修行っぽいのはこれしかやってなかったから」
走りこみすら禁止されてしまい、することがなかったのだ。
玉を乗せて行動するだけでバランス力はかなり鍛えられる。
…と言っても、部屋で読書なんかをしている時にやっていた程度だったのだが。
今日はあまりにも暇だったのだ。
「あと、ずっと聞きたかったんだけど」
「ん?」
「あの妖刀、どうしたの?ここにあるんでしょ?」
「ああ、あれ。姫様に封印してもらったよ。蔵にあった壺の中に」
ここ永遠亭の姫、蓬莱山輝夜の能力は、『永遠と須臾を操る』程度の能力らしい。
壺を永遠とすることで変化を拒み、誰かが漏れることをなくすのだとか。
鈴仙は納得したようで、小さく「あー」と言った。
俺には理屈が分かっていないのだが…壺の時間を止めていると思えばいい、と姫様に言われた。
「そうだ鈴仙、暇なら弾幕ごっこでもしないか?」
「いいけど…」
「体が鈍っちゃってさ。相手が欲しかったんだ」
「確かに、私も最近やってなかったかも」
散歩用に縁側に移動させておいた靴を履き、頭の上の玉を座っていた場所に置いた。
立てかけておいた木刀を手に取る頃には鈴仙も靴を履き終え、トントンとつま先で地面を叩いていた。
俺が右側に歩くと、鈴仙は左側へ。
ある程度距離を置いたところで向き合った。
ぐりんぐりんと腕の付け根から回し、弾幕ごっこの準備をする。
「用意はいーい?」
「いつでも」
鈴仙が向こうから駆けてくるので、いつものように木刀を構えた。
牽制だろうか、鈴仙は銃のように構えた手から、銃弾のような弾幕を撃ってきた。
射線から外れるように動き、鈴仙がそれについてくる。
低姿勢で懐に入ろうとする鈴仙を、木刀を振って拒否した。
待っていたと言わんばかりに足払いをしてくる。
狙われた左足に霊力を溜め、受け止めた。
「いっ…」
予想外の硬さに、鈴仙は顔を歪ませた。
木刀を振り下ろして攻撃しようとするが、簡単に避けられてしまった。
後ろに跳びながら弾幕を撃ってきたので、横に移動して避けようとした。
が、足がもつれて地面を転がってしまった。
その隙を逃すまいと近づいてきた鈴仙に、今度こそ懐に入られた。
次の瞬間には、握った拳をを土手っ腹に当てられバランスを崩される。
「っぐ…」
あがくように振ろうとした左の手刀を楽々と掴まれ、投げられてしまった。
地面に叩きつけられる前に足で着地し、体を横に回転させて振り払う。
投げられた時から180度反転していた体を捻じり、追撃の弾幕を避けた。
そのまま距離をとり、また向き合って様子見になる。
ジリジリと間合いを測り、深く息を吐く。
頭の後ろ側にチリッと何かが弾けるような感覚がした時には、それをかき消すように一気に踏み込んでいた。
俺が得意な、木刀の活きる距離。
近づいてこようとする鈴仙を木刀で徹底的に拒否。
そして空いている左手で弾幕を撃って追い詰めていく。
「そこっ!」
木刀での牽制をすり抜けられ、右腕の肘を殴られた。
続いて右の手首。それで木刀を取り落としてしまう。
動揺した一瞬で、鈴仙の人差し指が顎に触れた。
「…流石だな」
「隆也も、悪くはなかったよ?」
「そりゃどうも」
両手を上げて降参すると、鈴仙がふふんと笑った。
落ちた木刀を拾い上げる。
「やっといてなんだけど、腕大丈夫?」
「ああ、大丈夫。痛んだりはしてない」
確かめるように右腕を動かしてみるが、大した痛みはない。
経験がモノを言う、絶妙な加減具合だ。
「うどんげー?あ、貴方も一緒だったの」
縁側に戻ろうとした時、鈴仙を探していた永琳が歩いてきた。
「どうしましたか?お師匠様」
「ちょうどいいから、二人で近くに生えてる薬草を採ってきてくれないかしら?」
「もちろんです」「わかりました」
お師匠様の注文は今に始まったことじゃないし、多少の素材採りなら散歩感覚で出来ることだ。
靴も履いて外に出ているので準備も必要ない。
「どういうやつですか?」
鈴仙が尋ねると、お師匠様は手に持っていた草を見せてきた。
「これよ」
「これですね」
鈴仙がそれを受け取り、まじまじと眺めた。
「じゃあ、行こ?」
「あいよ」
どうも、作者の人です。
今回は戦闘を入れつつ新しい話を始める回です。
ちょっと慣れてきたかな?という感じが伝わってくれたら嬉しいです。
次回こそ新キャラが出る予定です。この話に入れようか迷ったのですが、テンポがあまりにも悪くなるので分けました。
次こそは…!
それでは今回はこの辺で。
来週またお会いしましょう。では。




