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東方玉霊絆  作者:
1/78

旅の始まり

気が付くと、足を滑らせていた。

一瞬の落下感を味わいながら傾斜を転がっていく。

何度もリュックが背中に当たったり、木の枝が頬を掠めた。

段差から落ちる感触がしてから、転落が止まった。

「痛ってぇ...」

思わず漏らした呟きは誰に聞かれるでもなく消えた。

どれくらい落ちたかと辺りを見回すと、平坦な森が視界に映り込む。

「おかしいだろ...そんなの...」

平坦なのだ。

転がってきた傾斜も、落ちた段差も無い。

そこにはただ静かに木の葉が揺れていた。


顔から血の気が引くのがよく分かる。

帰り道も分からなければ、食糧がある訳でもない、

熊が出るくらいの覚悟はしていたが、山ですらない場所に迷い込むとは想像もしていなかった。

なにせ、近所の山に来ただけなのだ。

水とお菓子と熊対策兼杖代わりに修学旅行で買った木刀を持って。


実際、熊が出ても逃げられるような気がしていたし、危機感が薄れていたのかもしれない。

「それにしてもどうなってんだ...?」

無理矢理に自分を落ち着かせ、更に視線を巡らせた。

ここが近所の山だということが分かれば、かなり安心出来るからだ。

さっきから雰囲気がおかしいというか、自分の身を守ってくれていた常識なんかの気配が無い。


鼓動が速くなる。

帰れないかもしれない。


がさり、と背後の草むらから何かが動く気配がした。

反射的に振り向くと、そこにはこんな場所に似合わぬ格好をした小学生くらいの女の子が立っていた。


「こんなところに人間なのかー?」


間延びするような声で尋ねてくる。

純粋そうな表情で、おかしなことを。


「人間...だけど?」

「夜に出歩く人類は食べてもいい人類だって霊夢が言ってた」

「は.....?食べ...」


見上げれば日は落ちかけていて、あと30分もすれば完全に落ちる頃だ。

視線を少女に戻すと、少女は金髪を揺らしながら掌を向けていた。

まるで掌から何か発射するように。


「っ!」


生命の危機を感じ、咄嗟に横へ転がった。

数秒前までいた場所には黒く焦げ付いた跡と煙が残っていた。


「...は?」

理解が追いつかない。

転がったことすら意識していない行動だったのに、少女は何かを発射したらしい。


「外しちゃったのかー」

照準をつけるように掌を向けてくる。

「まっ...」

言葉を発する暇もなく少女は光を放つ。

さっきとは逆方向に転がり、声を荒らげた。

「待ってくれ!何なんだ急に!」

少女はもう会話をする気がないらしく、また掌を向けてきた。

「くそっ...!」

地面を見ると、落ちてきた場所の近くに持っていた木刀が転がっていた。

少女の攻撃を避けながら、木刀へ走る。

木刀を広いながら地面を転がり、起き上がると同時に肩のリュックを掴んだ。


「そっちがその気なら...!」

覚悟を決め、少女の方へ走った。

少女は驚きながら、また掌を光らせた。

持っていたリュックを投げつけて防ぎ、更に駆ける。

「おおおおおおおお!」

恐怖を絶叫でかき消し、少女に木刀を叩きつけようとしたところで、手を止めた。


「...負けちゃったのかー」

少女は少しだけ残念そうにすると、背を向けて空を飛んでいった。

光の玉を撃ってきたのだから、今更空を飛んでもあまり気にならなかった。

むしろそうだろうと思った時点で感覚が麻痺していたのかもしれない。


「本当に...何だったんだ...」

体も精神も疲弊していたが、あまりの出来事に一周して頭は冷静だった。


「とりあえず、北へ行くか...」

ボロボロになったリュックを担ぎ、見え始めた北斗七星の方へ歩き始めた。

初投稿です。

どうも扇と申します。

この作品は東方projectの二次創作となっており、一応完結済です。

定期的に更新したいと思っているので末永くよろしくお願い致します!

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