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底辺から這い上がる少女  作者: 雛月いお
最終章 その手で掴み取る
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親友と友情

「ゼリオか....... 」


「よぉアッシュ、元気そうじゃねぇの」


ゼリオさんは陽気に話しかけてくる。容姿、仕草、声。全てがゼリオさんそのものだった。


「おいロキ、何でそん..... 」


「ああああああッ!!」


気が付いた頃にはロキさんがゼリオさんの首を切り落としていた。頭と体が地面に叩きつけられる。


「お前自分の店が壊れて死にそうなくらい悲しんでただろうが!!なのに......なのに!!」


ロキさんは狂ったように奴の胴体を刺し続けた。三人の中で一番ゼリオさんとの付き合いが長いのはロキさんらしい。狂ったようなロキさんの表情は、ただひたすらに辛く苦しそうだった。


限界がきたロイさんは剣を胴体に刺したまま、その剣の柄の部分に頭を打ち付け膝をついた。


「ロキ........ 」


「っはは、痛いじゃねぇかロキ」


「!?」


切り落とされたはずの頭が唐突に喋りだした。次の瞬間、首の切断部分から黒い液体が広がりだしたと思えば、それが胴体に触れると糸に引かれるかのように頭が胴体の方へ引きずられていった。


再生を遂げたスライムは再びゼリオさんとなった。


「ふざけやがって..... 」


「ん?何もふざけちゃいないが」


「うるせぇ!!」


ロキさんが再び攻撃を開始する。しかしゼリオさんもどきは笑いながらその攻撃を避けていった。


「おいおいそんなもんかよォ!!はっはっ」


「黙れ!!この!!」


「落ち着けロキ!!」


我を忘れかけているロキさんを見かねてアッシュさんが叫んだ。ロキさんもキリがないのは理解できているはずだ。それでも攻撃を止める気がないのは、ロキさん自身の記憶にあるゼリオさんをバカにしているように真似するスライムが憎く、許せないからだろう。


そんなとき、ついにスライムが動きを変えた。


「今度はこっちからいくぜぇ!!」


「!!」


奴の蹴りをロキさんが剣で防いだときだった。先程は容易く切り離せた奴の体だったが、たった今は剣より硬い、いやそれ以上の強度を持った物質と剣との衝突音が響いた。想定外すぎる出来事に攻撃を防ごうとしたロキさんの腕に入った力は緩く、攻撃を防ぐはずだった剣ごと蹴り飛ばされてしまった。


「ロキ!!」


「驚いたか?俺は体を硬化させることもできるんだ」


「クソが..........この野郎」


「オラどうしたロキ、かかってこいよ」


「てめぇ!!」


「落ち着けっつってんだろうが!!」


壁に叩きつけられてもなお斬りかかろうとするロキさんをアッシュさんが殴った。何が起きたかわからないと言わんばかりの顔を浮かべるロキさんはしばらく固まった後、ゼリオさんを見て、口を開く、


「悪いアッシュ」


「いいって。それよりどうするよアイツ」


落ち着いたロキさんは少し考えた後、軽く溜息をついた。


「奴が人間でない以上、何をしてくるのか予測するのは不可能だ」


「ああ」


「....いつも通りだな」


「やっぱそうなるか」


ロキさんの答えにアッシュさんは苦笑いを浮かべる。


「行くぞロキ!」


「ああ!」


何処か嬉しそうに見える二人はスライムへと切りかかった。対するスライムゼリオさんは不敵な笑みを浮かべてつぶやく。


「熱いねぇこの展開、男の友情ってやつ? いいぜぇかかってこいよ、まとめて相手してやる」


「上等だオラァ!!」


スライムは器用な身のこなしを見せ、ほぼ同時に襲いかかる二本の剣のうち一本を避け、もう一本に向かって攻撃し、弾きかえす。この一連の流れがしばらくの間馬鹿げたスピードで繰り返された後、落ち着いたロキさんの剣術が光った。


ロキさんの高い位置からの攻撃をスライムは弾き返そうとした。しかしロキさんは突然体制を低くし、硬化が間に合っていない奴の足を切り落とした。


フェイントだ。


「おっと」


「アッシュ!!」


「わかってらぁ!!」


スライムが避けたはずのアッシュさんの剣は、空振った勢いで一回転したアッシュさんによって再びスライムに向けれた。アッシュさんの筋力に遠心力が上乗せされた剣は硬化されたスライムの胴体でさえも防ぐことができなかった。


「おいマジかよ」


驚くスライムを置いて、二人はスライムの体をひたすら切り刻んだ。もはや人の形ではなくなったスライムの体の中に、光る鉱石のようは物体が姿を現した。


恐らくあれがスライムのコアとなっているものだろう。


「もらった!!」


「これで終わりだ!!」


二人は光る鉱石に最後の攻撃を仕掛けた。


誰もが二人の勝利を確信した。


そのときだった。二人の体を、地面から生えてきた何本もの黒い刃物が突き刺したのは。

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