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底辺から這い上がる少女  作者: 雛月いお
最終章 その手で掴み取る
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父親という名の悪魔

最後の階段を登りきると、大きな扉だけがある部屋に出た。おそらくあの扉が最後の扉だろう。


あそこにお父さんが...


「フィオラ」


「?」


ロキさんが険しい顔で私に声をかけてきた。


「この先なにがあっても手を抜くこと、油断することだけは絶対にするな。死ぬことになるかもしれないからな」


「......はい」


そう、既に私は引き返せないところまで来ているのだ。父親が相手でも立ち止まってはいけない。そう決めたのだ。


立ち止まっては、ヒスイさんに会わせる顔がないからな。



そして扉が開かれる。





ーーーー《エールレイユ城最上階》ーーーーー




そこは赤い絨毯の弾かれた高級感漂う空間でもあり、数多くの機械が置けれた実験室のような空間でもあった。しかしその機械たちはよく見ると全てが繋がっている一つの大きな機械だった。そしてその機械の制御パネルの所に一つの人影があった。室内は薄暗いため人影がなにをしているのかまではわからない。


「やぁ、待っていたよ」


その言葉とともに人影が歪み、私たちの方へ近づいてきた。


ある程度近づかれることにより、人影は人へと変化を遂げていった。


「ようこそ、我が研究室へ」


それは茶髪で、紅い眼をした男性だった。私やフィリルと全く同色の、だ。


「てめぇが組織の長か?」


「言わなくてもわかるだろう」


「..... 」


彼は鼻で溜息をすると、私を見てこういう。


「大きくなったねフィオラ。奴隷生活は楽しかったかい?」


「....................は?」


耳を疑った。


「聞こえなかったのかい?奴隷生活は楽しかったかと......」


「テメェ!!」


アッシュさんが切り掛かった。が、アッシュさんの無数に繰り出される剣戟はかすることすらなく、奴はその身一つで全て避け切ったのだ。キリがないと把握したアッシュさんは後退して様子を伺っている。


「運動は苦手なんだよ。少し落ち着いたらどうだい?」


「どの口が言いやがる.....クソが、なんでシンテイムを襲いやがった!!」


「うるさいな声が大きいよ」


組織の長は眉間にしわを寄せアッシュさんを睨みつけた後、再びため息をついた。


「シンテイムにフィオラがいるという情報を掴んでね、こそこそやってもどうせ目立つからいっそのこと破壊してしまえ、っていうことだよ」


「ふざけんじゃねぇ!!その命令でどどれ程の人が犠牲になったと思ってやがる!!」


「だからうるさいって言ってんだろ解剖されたいか?あぁ!?」


組織の長は殺意のこもった眼差しでアッシュさんを強く睨みつけた。アッシュさんも憎悪を滾らせた目で組織の長を睨みつけた。


「......何にフィオラを使おうっってんだ?」


アッシュさんが問う。


「君には関係ないだろうが。......まぁいい、フィオラの魔力で死者を数時間だけ蘇らせる」


「!?」


死者を蘇らせる?

そんなことが本当に可能なのか。もし本当ならば、その技術はこいつ一人でそこまでたどり着いたということになる。シンテイムの図書館にそんなことができると記された本は一冊もなかった。まぁそんなことが一般に公開されているのはたまったものではないが。それでもシンテイムの図書館には気密書物が別室にあり、そこに禁断魔術系の、一般人が知ってはいけないような領域の本が少なからずあったのだ。一度だけヒスイさんに連れて行ってもらったことがある。だがそこにもなかった。


「僕は人間の体内に存在する魔力を取り出し、今まで不可能とされてきたことができるようになった。十一年だ、やっとここまで来た。しかし不可能を可能にするのはやはりそれ相応の代償が必要になる。死者を蘇らせるとなれば当たり前だ。代償は大量の魔力。そして僕の技術では同時に複数人から魔力を取り出すことはまだできない。そこでフィオラ一人の魔力全てを取り出せば天秤が釣り合う」


魔力を持つ人間にとって、魔力とは血みたいにものなのだ。それを全て取り出す。それはつまり


「死ぬ.......... 」


「いかれてやがる...... 」


「なんとでも言うがいいさ。この計画をやめようとは思わないけどね」


フィリルが私を必死で止めようとしていた理由が判明したと同時に、私はすぐ目の前にある死に恐怖した。



...まずい、足が動かない。


「とにかく僕にはフィオラが必要なんだ、どいてくれ」


「嫌だ、って言ったら?」


アッシュさんの言葉を聞いたあいつは再びため息をつき、機械の制御パネルをいじりだした。


「死んでもらうしかないかな、非魔力所持者に用はないし」


その言葉をきっかけに、機械に接続されていたカプセルが開かれた。


「なに......あれ」


カプセルから出てきたそれに、ミラさんが驚愕した。


それは個体ではなく、黒い流動体の、


...要するに黒いスライムだった。


その外見の不気味さ、そして気持ち悪さに思わず口元を押さえてしまった。


次の瞬間、そのスライムは人の形になろうとし出した。


「そいつは相手の記憶の中の人物を映し出す。今回は四人共通の人物になろうとしているようだ」


完成とばかりに変化を終えたそれは、人の形をし、きちんと服まで来ていた。


紺色の髪を生やし、その髪をオールバックにした三十代くらいの男。


それは紛れもなく


「ゼリオ、さん......... 」


「よぉフィオラちゃん」

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