精霊と元神様
「《フレイムインパクト》!!」
「《アクアグランツ》」
一応、互角には戦えているようだ。これが本気かどうかはわからないが。
私が打った魔術はフィリルの魔術で相殺され、その逆も然りだ。きりがないのはわかっているが未だ解決策が頭に浮かばない。
「魔力と魔術の相性がいいわね」
「? 。そうなんですか?」
「無意識なの?じゃあ才能?」
「いえ、教えてもらって......でも相性なんて単語は一度も...」
「なるほどね。その人は見る目がいいわ。相性を見抜くのはかなり難しいことなのよ」
「へぇ......」
ヒスイさんは教え方がうまいだけじゃなかったのか。いや、別に小馬鹿にしているわけではない。ヒスイさんは私が魔術関係で最も尊敬する人だ。できることなら私の魔力を分けてあげたいぐらいだ。
なぜヒスイさんは相性のことを口にしなかったのか、気がかりでならない。
今そんなことは関係ないか。
「......ちょっと時間かけすぎたかもしれないわね」
「?」
「あの人頭に血がのぼると厄介だからもう終わらせてもらうわね」
「何を言って...?」
「こういうことよ」
フィリルは静かに目を閉じて、聞いたことのない詠唱を始めた。
「《水を司る精霊よ、我が魔力の全てを持って使役せん。そして使役者である我にその力を貸せ》」
フィリルの前に水色に光る魔法陣が出現し、そこから水の柱が勢いよく吹き出る。
「来て頂戴、《アクエリアス》」
吹き出た水の柱が弾け、中から現れたのは蒼眼蒼髪の少女だった。だがその子は見るからに人間ではなかった。何より少女は完全に実体を持っておらず、若干だがその体は透けて、向こう側が見えていた。
「......悪いわねエリー。ちょっと借りるわ」
「ううん、気にしないでいいんだよ?」
フィリルとアクエリアスが手を取り合うとアクエリアスは光となって消え、代わりにフィリルの腕に青い腕輪がついた。
そしてフィリルは私に手のひらを見せる動作をした。
「《放て》」
「!?」
フィリルの手から恐るべき勢いで水流が飛び出した。詠唱の時間が全くと言っていいほどない。私の目には一瞬魔法陣が浮かび上がったようにも見えたが...
「ぐっ...」
私はその水流に押されて壁に叩きつけられた。水流自体がそもそも巨大な鉄球に殴られるような痛さだったが、壁にぶつかった時が死ぬほど痛い。感覚的には鉄球と石の壁に挟まれるイメージなのだ。無理もない。
私は水流がフィリルの手から途絶えると壁から床に放り出される。あまりの衝撃にその場で動けなくなってしまった。
「ぅ.....ぁ...」
臓器が、体の内側が痛い。この痛さには覚えがあった。
奴隷時代の、あの拷問を受けている最中の感覚だ。
こういう時なんて言うんだっけかな...
「くそっ、たれぇ...」
「なんてこと言ってるのよ...」
状況は最悪だ。フィリルがあの少女と何かをしたことにより、魔力も、それを操る感覚も格段に上がっている。今の私の全てでもきっと勝てないだろう。
フィリルは私に近づいて口を開く。
「ねぇフィオラ、これは精霊とかそういう類の血液を体内に取り込むことでできる、一種の憑依的な能力なのよ」
「なぜ、それを」
「それはあなたもできるからよ」
「え...」
驚いたものの、私には心当たりがあった。
あの時夢に出てきた、自らを太陽神「だった」と名乗る女。
「心当たりがあるのね。成功かしら」
「確信がなかったんですか...」
「そこはごめん。でもあの人を倒してもらうためにはこれしかなかったの。別にあなたを利用しようとかそういうのじゃなくて、単に強くなって欲しかったのよ。自分の身を守るためにね」
事実、私はそれに助けられていたわけだ。
「あなたと戦ってわかったけど、ちゃんと憑依しなくてもマリナの力が出ていたわ。あなたのことを気に入ったみたいね」
あの子はマリナというのか。以前は名前はないと言っていたが。
「時間が無いわ。今からやり方をざっくり説明するからやってみて」
「わかりました」
「あぁ立たなくていいわ、倒れたままのほうが気づかれなさそうだし」
「そうですか」
「自分に問いかけるように強く読んでみて」
「............それだけ、ですか?」
「そうよ。早くやってみて」
私は瞳を閉じ、強く念じる。
『マリナ』
......
『マリナ!』
『...う、うーん?』
『マリナ!!』
『んん?あぁやっと教えてもらったのね。ふあぁ』
『欠伸なんかしてないで、ちょっと力を貸して欲しいの」
『お、やっと暴れられる感じかな?いいよ、じゃあ私に続けて唱えてみて』
『太陽の力を持つ神よ、あらゆる炎の根源たるその力、我に貸したまえ』
「《太陽の力を持つ神よ、あらゆる炎の根源たるその力、我に貸したまえ》」
詠唱が終わると同時に私は目を開け、立ち上がる。
すると私の足元には紅く炎を帯びた魔法陣が浮かび上がっっていた。そして私のまえには巨大な炎が現れ、その中からマリアが姿を現した。
「そうそう、私の名前はマリアだったよ。あっはは」
「笑い事じゃ無いよ...」
「まぁいいじゃない、それよりさっさと暴れちゃおうよ」
「ふふっ、程々にね」
私たちは手を握りあい、意識を集中する。
「成功したみたいね、想像以上だわ」
金色の光を放つローブが私の身に付き、手首足首には燃え盛る炎がまとった。これに熱いという感覚はなく、文字通り「飾り」といった感じだ。
か、かっこいいぞこれ...
『おー似合うね』
マリナの声が頭にとても心地よく響く。自然と心が落ち着く。
『ここからだよフィオラ』
「うん、いくよマリナ」
「来なさいフィオラ、最初は慣れの運動を...」
「《イグニッション》!!」
私の腕が振り払われるのと同時に、前方に噴火のような勢いで炎だか溶岩だかよくわからないものが飛んで行った。
...それは容易に壁を破壊し、大きな穴が痛々しく残った。
「......は、必要ないみたいね」
投稿が遅れましたすみません




