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底辺から這い上がる少女  作者: 雛月いお
最終章 その手で掴み取る
31/39

大人と子供

三階へ侵入、もとい突入に成功した。外観からはこの階が最上階に近い階となっていたはずだ。決戦の時は近い。



ーーーーーーーーーー




「ここも造りは同じみたいだな」


「だろうな。兵士は多少強くなってるみたいだが」


「でも数が少ないですね...」


「ストック切れっってところか?」


「どうだか」


と、会話の内容は呑気そうにも感じるだろうが口調はいつにも増して鋭くなっている。終わりが見えてきたことによって二人はさらに集中力が増しているように思う。こんな二人だから私は安心して頼れるわけで。


そうこうしているうちに兵士の波は過ぎ去っていた。


「もう終わりか?」


「雑魚は、ってところじゃねぇの?」


そういったアッシュさんの視線の先には、大きめの鎌を持った少女と刀を持った少年が、こちらに向かって

歩いてきていた。


「おいおい、幹部にしちゃ出てくるのが早すぎじゃね?」


「幹部........じゃないな」


「あったりー」


少年がニヤリと不敵な笑みを浮かべながら呟く。金髪に青眼、年は私より少し高いくらいに見える。が、声変わりなるものはまだ訪れていないのか、少年から発せられた声は低くはなかった。


「私たちは幹部じゃない。だけど兵士でもない」


一方少女は空色の髪に同色の透き通った瞳、年は少年と同じくらいだろう。少女から発せられた声にはまるで感情がこもっているようには聞こえず、ただ淡々と言葉を話すだけといった感じだった。


「だったら、何者なんだよ」


ロキさんが睨みながら質問を投げかける。だが少年少女は一切引くことなくロキさんの質問に答えた。


「そうだなぁー、うーん。『雇われもの』?かな」


少年の言葉を聞いた瞬間、アッシュさんが大きくため息をついた。


「こんな子供まで使うとは、組織はどういう頭してんだか」


「違う」


「何?」


「私たちは組織に使われてるんじゃない。私たちはーーー」


「んまあいろいろあるっていうこと!話はそこまでっていうことで」


少年は少女の言葉を無理矢理切るようにして割り込んだ。割り込まれた少女とくれば、なんとも思っていないのか表情を一切変えることなく、代わりに私を見つめていた。


「いいから早く戦おうよ」


「レナもそう思う」


少年少女は構え、戦闘願望を露わにした。


「子供相手とか......」


「やるしかないだろ」


それに比べて味方の二人は渋々といった感じで武器を取った。


「行くよ」






ーーーーーーーー






「やるじゃねぇかお前ら」


「そりゃどうも」


「別に嬉しくない」


「かわいくねーな......」


「うるさい、子供と互角のくせに」


「あ!?」


などと不毛な会話とともに繰り広げられる激しい戦闘は、とてもではないが子供と大人が戦っているようには見えなかった。


少年は刀をうまく使ってアッシュさんの攻撃を受け流しつつ、隙があれば鋭い攻撃を仕掛けてきている。少女の方は鎌を振り回し続けているのにもかかわらず疲れている様子は一切なく、今も尚少女はまともに男性と渡り合っている。


あの子供達は一体......?


「おいお前!なんで疲れてねぇんだよ、馬鹿力か?」


アッシュさんが疑問を少女にありのまま投げかける。軽く挑発めいたその言葉にも少女は顔色一つ変えず、淡々と言葉を発した。


「私に挑発は効かない、意味のないことはやめた方がいい」


「そうかよ」


「でも仕組みは教えてあげる。この鎌は特殊な構造をしてる。使用者が魔力を注ぐことで使えるようになる。だから振り回してるのは筋肉じゃなくて私の魔力」


「聞いたことねーなそんな武器」


「当たり前、これは世界に一つだけしかない。姉さんが作ってくれたから。血は繋がってないけど」


少女の言葉は誇らしげだった。だが言葉の最後の方になると声が小さくなり、同時に私を睨みつけた。


あの少女とは一回も会ったことはないはずだが。


「さっきからフィオラがどうかしたか?」


「! ......別に」


会話は途切れ、再び戦闘が続く。私も参加しようと試みたのだが、ミラさんに「ここは二人に任せて。今は魔力を回復させた方がいいよ」と言われ、こうして大人しく傍観しているである。悔しくもミラさんの言う通りなのだ。





暫くして、相手の動きが鈍くなってきた頃、戦闘は終わりを告げようとしていた。少年の方はロキさんに剣を弾かれ、少女の方はアッシュさんの強烈は切り落としを鎌で防ごうとした結果体ごと吹き飛ばされ戦いは終わった。


「......やっぱりまだまだだったかぁ。降参、煮るなり焼くなり好きにしていいよ」


「..................参った」


降参の意思を伝え瞼を閉じる二人に、アッシュさんとロキさんは互いに剣を収めた。少年少女はその姿位唖然とした様子だった。


「始めから殺意のない相手を殺すわけないだろ」


「そういうこった。ほれ」


アッシュさんが差し出した手を少女は渋々といった様子で握り立ち上がる。少年の方も苦笑いしている。


「ばれちゃってたかぁ」


「まぁな」


「遊んでくれてありがとね、お兄さん」


「あぁ、また遊んでくれよ」


「じゃあなちびっ子、また遊んでやるよ」


「.................うるさい」


先に進もうとする二人の背中をミラさんと追いかける。私の時もそうだが、なんだかんだで二人は子供に優しいのだと思う。多分あの子供達が殺意を持って襲い掛かってきても、武器を壊すか気絶くらいで殺しはしないと思う。それが二人のいいところなのかもしれない。





ーーーーーーーーーーー







「強かったね、まだ本気出してないみたいだったし」


「次は勝てる、私たちもまだ本気出してない」


「ふふっ、そうだね。でもその『本気』はこの後の最悪の場合の時に使わないとね」


「うん」


「あー、そういえばレナ、フィオラちゃんのこと睨みつけまくってでしょー」


「別に睨んでたわけじゃ......」


「わかってるよ」

人物紹介


キール・シュレイド

十四歳 男

金髪青眼、陽気な性格で楽しいことが大好き。幼馴染であるレナの不器用さをフォローすることが日々の楽しみだったりする。魔力は持たない。



レナ・ヴァレンティ

十四歳 女

空色の髪、同色の瞳。無口で不器用な性格。本人はこの性格をよく思っていない。が、キールにフォローしてもらうのは嫌いではない。魔力持ちで魔力量はフィオラに少し劣るものの豊富。しかし魔術も魔法もセンスがないと思い込んでしまい、小さい頃から魔導具を使う特殊な戦闘を行っている。

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