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底辺から這い上がる少女  作者: 雛月いお
最終章 その手で掴み取る
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少女は頭を捻る

エールレイユの基地に侵入し、城の攻略を開始してから早くも一階部分は攻略し終わろうとしていた。残るは階段の防衛命令を受けている筋肉男だけだ。


「いや、お前誰だよ」


アッシュさんが呆れたように言葉を投げる。無理もない。侵入してきた割に派手なことやってる我々も我々だし、そこを通りたいのは確かなのだが、急に「俺を越えてみろ」とか言われても反応に困ってしまう。


「あぁ、すまんな、名乗るのを忘れていたぞ」


「いや、そいう問題じゃ...」


「俺はエールレイユの幹部にして一階の指揮を任されている男、ルーザスだ」


「...はぁ」


男は、もといルーザスは、誰も頼んでなどいない自己紹介を始めた。私から言わせてもらえば、そんなの知ったこっちゃないからさっさとどいてほしい。


にしても組織の幹部か。この勢いだとルーザスのように各階に幹部が配置されていそうだな。そうなるとかなり面倒臭くなってきた。普通は 一階から順に、低い地位の幹部を配置していくだろう。ルーザスがかなりの実力を持っているのであれば、組織全体の幹部がそれ以上の強さということになりそうだ。


いや、考えるのやめよう。まずは目の前の敵からだ。


「いいから早くかかってこいよ、お前らここを通りたいんだろ?」


向こうもその気のようだしね。


「上等です」


「ちょ、なんて言葉遣いしてるのフィオラちゃん!?」


ミラさんの反応はさておき、幹部との戦闘が始まった。ルーザスからだけでなく、こちらの男性陣2人からも殺気が感じ取れる。それに対して私はルーザスを殺して先へ進もうなどとは一切考えていない。


甘い考えなのは十分わかっている。だが私は本気だ。


いつも通りアッシュさんが特攻した。猛進の域で走っていき、手持ちの太刀を振り回す。相変わらず凄まじいものを感じる。それに対しルーザスも劣らず見た目にそぐわない俊敏な動きを見せ、アッシュさんの猛攻をかわしていく。


アッシュさんが奴の足元を狙った回し切りを繰り出すと、ルーザスはそれを避けるために軽く地面をsとんだ。


私はそれを見逃さなかった。


「《アイスキャノン》!!」


「あっぶね!?」


地を離れ、無防備となったルーザスに氷塊を打ち込んでやった。当たったと思った。いや、実際当たった。がルーザスの手首にあった手錠の残骸がそれを砕き、その鍛え抜かれた肉体で退けられた。


一筋縄ではいかないことは十分すぎるほどわかっていたものの、実際に魔術が通らないと結構心にくるものがあるな。


「いい攻撃しやがるぜぇ...」


着地したルーザスはじっと私を見た。その真っ直ぐな目に私は思わず息を飲んでしまった。


「...ん?お前...」


「ボサッとしてんじゃねぇよ!!」


私を見て何かを思い出したかのように見えたルーザスだが、すぐにアッシュさんの剣がその身を襲う。奴は何を思い出したというのか。奴隷時代に私はルーザスにあったことがあるのかもしれない。それ以外に私を見て思い出すことなどないだろう。だいたいそんなこと私には関係ない。今もアッシュさんとロキさんの攻撃が続いている最中だというのに。


「ぐっ!?」


「横腹が空いてるぜ」


そうこうしている間にも展開は進む一方で、ロキさんがついに一撃貰ってしまった。にしても重そうだなあの攻撃。ロキさんは長くひるむことなく戦闘に参加しているものの辛そうだ。魔法を使いにミラさんを連れていきたいのは山々なんだが、ルーザスの戦闘スタイルがなかなかに厄介だ。魔法なんてかけている暇なんてなさそうだ。だが二人揃ってのあの戦力だ、片方が手負いの状態ではアッシュさんが辛そうだ。


さてどうするか...


一か八かってところか。


「ミラさん、ロキさんの手当をお願いしたいんですが」


「もちろんだよ。でもあれじゃ...」


「わかってます。そこでなんですがミラさん少しだけ一人で動き回ってもらっても大丈夫ですか?」


「え?...うん、わかった」


―――



未だ戦闘は続く。アッシュさんは手負いのロキさんを庇いつつの戦闘になっている。一見戦力差は釣り合っているように見えるが、二人をよく知っている私やミラさんからすると状況は悪くなる一方にしか見えない。そんなミラさんだからこそ私の危険な提案を受け入れてくれたのかもしれない。ミラさんと打ち合わせた私はそのタイミングを気配を消しつつうかがっていた。...気配が消えているとは到底思えないが。


「オラァア!!」


「う"っ!?」


アッシュさんも腹部に強烈な一撃を受けてしまった。予定外すぎる。稼げる時間は少ないだろうが、計画を少し変更しよう。そうでもしないと時間を稼ぐことは愚か二人が死んでしまう。


「アッシュ!!」


「人のこと心配してる場合かよ...早く逃げろ馬鹿」


「おせぇよ」


「クソ...ッ!」


ルーザスがその拳でロキさんを殴り飛ばす寸前だった。


このタイミングだ!!


「《フロストウォール》」


ルーザスとロキさんとの間に氷の壁を分厚めに生成する。当然ルーザスの拳を止められることはできずに壁は音を立てて盛大に割れた。。止められないにしろ、目くらましと勢いを落とすことには成功。ロキさんを守ることができた。


壁が割れたと同時に私はルーザスに向かって走り出した。計画の変更点はここからだ。


私はルーザスへ回し蹴りを繰り出した。...まぁこの細い脚から繰り出される蹴りなどたかが知れているもので、あっさりと手で受け止められてしまった。


「なんだそれは...」


だがそれが狙いだ


「《フレイムインパクト》!!」


「なッ!?」


私は受け止められた足から最高威力の火炎弾を発射した。ルーザスもその予想の斜め上を行った行動に頭も体も反応しきれず、火炎弾を体全体で受けた。そのまま部屋の壁まで吹っ飛んだ。


「ぐ、が...ぁ」


ルーザスの体は酷い火傷を負っていた。いくらここを通りたかったからとはいえ、流石に心が痛い。殺していないのがせめてもの救いか。これ以上戦いたくないし戦ってほしくない。私はルーザスの手足を氷で固めた。


「...やられた、ぜ。ったく。とんでもねぇ魔力しやがって...」


そのケガでまだ喋れるとは、恐ろしい精神力の持ち主だ。その力をもっと別のことに使ってほしいものだ。


「流石フィリルさんの妹だ」


「...」


先程思い出したことはそれだったのか。戦闘中になんて呑気な男だ。


「...なぁちびっこ、一つ頼まれてくれねぇか?」


私は迷ったものの、話だけは聞くことにした。


「話だけは聞きます」


「俺が言うのもあれだが、フィリルさんを助けてやってほしい」


「?。それはどういう...」


「あの人はこの組織にいるべき人じゃない。あの人はお前と一緒に組織を出ていくべきなんだよ」


「どうしてですか?」


「それは...」


私が理由を聞こうとすると、ルーザスは言いかけて言葉を詰まらせた。言いたくとも言えない、といったところか。それは私に気を使ってか、それとも立場上言えないことか。どちらかでしかないだろう。


「フィオラ!」


私を呼ぶアッシュさんの声。振り返ると見慣れた三人の姿が目に映った。どうやらすでに手当は済んだようだ。流石にミラさんは「いつものこと」と言っているだけあるな、早い。


「行こうぜ、道草食ってる時間はないぞ」


「...はい」


私はなんとなくルーザスを見た。ルーザスは目を閉じこう言う。


「悪い、忘れてくれ。組織を潰すんだろ?とっとと行けよ」


言葉こそそっけないが、その声色は柔らかく、優しさが垣間見れたような気がした。私は頷き三人のもとへと足を進めた。



―――――――




一人残されたルーザスはやり切れない思いに心を締め付けられていた。


「言えねぇよ。ちびっこのせいでフィリルさんが組織をやめらんねぇなんて...」

戦闘シーンって難しい...w


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