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底辺から這い上がる少女  作者: 雛月いお
最終章 その手で掴み取る
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魔術師の非殺人乱舞

投稿がかなり遅れてしまいました、すみません。


「ここか」


「見ればわかるだろ」


「随分立派ですこと」


私たちは合流してから山脈を下った。視界が開けたと思ったら石で造られた壁が私たちの前に立ちはだかった。奥には城のようなものも見える。このあたりで感じる暗く重たい空気が、まさに悪事を働いてきたエールレイユを連想させた。城壁のには丁寧に紋章まで描かれている。


「なんで潰しにかかったのがたった一団体だけなんだろうな」


アッシュさんが呆れた様子で呟く。私が脱出に成功したあの一回だけということか。ということは私が捕まる少し前に組織が出来上がったということだろうか。にしては組織が大きくなるのが早すぎる。私に散々罵声を浴びせたあの大男やその他の兵、そして奴隷。意として組織の加わった者は何に心惹かれたか、もしくはどんな弱みを握られたか。奴隷として連れてこられた者はどんな理由で、何を基準にしてその者に決まったか。そして組織は何がしたいのか。それは私が考えたところで答えなど出てこないことだ。


ゼリオさんから貰った薬を飲んでからかなり時間が経つ。あの薬には感謝している。が、効果が効果だ。何かしらの副作用があってもおかしくはない。心配なのは薬の効果が消え切った後、細胞が長時間活性化した後そのまま通常の状態に戻れるはずがない。疲れ切った細胞は寿命を縮めるか死を迎えるかだろう。それが全細胞だ。最悪死を覚悟したほうがいいのかもしれないな。


それでも私には、死を怖がっている暇などないのだ。


「どうやって入る?」


「愚問だな」


「全くだ」


ミラさんの問いに、男二人は即答する。城壁の周りを歩いた末、私たちは敷地の内と外とをつなぐ唯一の門を見つけていた。それに向かって二人は言う。


「「この門ぶっ壊していこうぜ」」


「やっぱそうなる...」


こういう時のロキさんはアッシュさんを止めようとしない。それどころか便乗するというロキさんならぬ行動をとる。男という生き物はこういうものなのだろうか。まぁ私たちはもともと怒りをぶつけに来ているわけで、止める理由などどこにもないのだが。


「「オラァ!!」」


二人の掛け声と同時に木製の門が勢いよく吹っ飛ぶ。やっぱり男というか、なんというか。


「んあ?」


「「あ」」


「うわ」


吹っ飛ばした先の広場には当然のように組織の兵がいた。しかし反射的に声が出る三人。


仲間呼ばれたら厄介だな。


「やっべ...」


「《モスキーフェイント》」


「うっ...」


目にも留まらぬ速度で打ち出された針は兵士の首に刺さり、全身を麻痺させる。うまくいけば気絶までもっていくことができる。今回は成功のようだ。兵士はその場に崩れるように倒れこんだ。


「ナイスフィオラ!」


「えぇまぁ...」


「もう少し考えて行動しろってフィオラちゃんの顔が言ってるわよ?」


「わ、わりぃ...」


「俺としたことが...」


「さ、行きますよ?」


「なんかフィオラが少し見ないうちに成長したように思うんだが」


「奇遇だな、俺もだ」


「あんたらが子供なんじゃないの?」


「うっせ」



――――――――――――




「貴様ら何者だ止まれ!!」


「お前らこそなんだよ邪魔だ!!」


こんな感じでアッシュさんを先頭に兵を無双していく。アッシュさんが一番快感を味わっているなこれ。少し羨ましいな、なんて。


「おい!このまま城の扉突き破って中に入るぞ!!」


「任せてください!!」


この敷地に入ったときの二の舞にならないように今度は私が行こう。突き破るのであればアッシュさんでもよかった気もするが。ここまで城の外で派手なことをやっていれば扉の内側に兵が大量にいてもおかしくない。


私は扉に向かって走る速度を上げ、寸前で軽くジャンプする。


「《フレイムインパクト》!!」


私が付きだした手から巨大な炎の玉が勢いよく発射される。狙い通り扉は粉砕、扉付う近にいた兵も何人かれたようだ。それでも仕留めきれなかった兵がちらほら目に留まる。


「《アブソリュートソード》!!」

残りを始末するために魔術で生み出した氷を、短剣と呼ぶには少し長い剣の形に似せたものを二本造形する。


「邪魔です!!」


「うお!?」


着地したと同時に、私を切ろうとした兵士の剣を思いっきり弾く。


「ばれてます、よ!!」


「なッ!?」


すかさず後ろから来た兵士の攻撃も振り向きざまに受け止め、もう一本の氷結晶で武器を弾く。残るは一人。


「ッ!!」


「くっ...」


最後の兵士が持っていた武器はかなり重量のある斧だった。攻撃は防げたものの斧を弾くことはできなかった。だが三歩後退させることに成功。一人くらいならまぁいいだろう。


私は持っていた氷結晶を地面に突き立て、三度目の詠唱を始める。


「《フリージングシェイド》!!」


「しまっ...」


「体が、動か...な...」


兵士全員の動きを止めることに成功した。当初の目標通り、周辺を巻き込みすぎないように兵士ごと氷で固めることができた。上出来だろう。私は極力殺人はしたくないのだ。こうでもしないと戦闘を終わらせることはできない。


おっと、満足している場合ではないな。


先へ進むため、再び走り出した。


「ちょっと見ないうちにあいつすげぇ強くなってるぞ」


「フィオラちゃんかっこいい...」



―――――――――――




城の中は見た目通り広く、最上階を目指すのが若干面倒に思えてくる。ここまで来たら当然引き下がらないし黙って帰してくれるとも思えない。城は基本石煉瓦造りのようだが、ところどころに木が使われているためあまり寒々しくは感じられない。居心地は最悪だが。


ゼリオさんの薬を飲んでから、副作用と思える症状は未だ感じられない。どのタイミングでどの程度の症状が現れるのか、そもそも副作用は出るのか。いくら考えても答えは出ない。


私には組織を潰す以外にもう一つ、奴隷を解放するという目的があった。奴隷がいるとすれば、今私たちがいる一階の下の階、つまり地下へ向かわなければならない。私的には組織そのものより奴隷解放のほうが重要なのだが、先に奴隷を解放したとして、城にいる兵士のほとんどから逃げる奴隷を庇うのはさすがに無理がある。例え先に組織を抑え込んだ後だとして、城がこの規模だと攻略し終わるまでには薬の効果が切れてしまいそうだ。もしもを考えると副作用で動けなくなるかもしれない。


...どうしたものか。


などと考えているうちに、下り階段と登り階段のある大きめな空間に出た。


「...貴様らか、侵入者というのは」


その空間には男が一人、豪快に胡坐をかいていた。かなりの筋肉質、そして挑発するかのような声で言葉を放ってきた。


「んだぁ?オッサン」


「そこ通りたいんでどいてほしいんだが?」


味方の男性陣の言葉に、ゴリマッチョのおじさんは大声で笑った。


「がっはっはっはっ!!侵入してきたとは思えねぇぐらい態度でけぇなてめーら!1」


男は面倒臭そうに立ち上がり、不敵な笑みを浮かべた。


「若いやつはいぃねぇ、久しぶりにワクワクしてきたぜぇ」


指の関節を鳴らし、戦闘態勢に入る。


「ここ通りてぇんなら、俺を超えてみろ!!」

重ねて、投稿が遅れてしまい本当にすみませんでした。


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