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底辺から這い上がる少女  作者: 雛月いお
最終章 その手で掴み取る
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少女は立ち止まらない

シンテイムを出発して30分くらい経つだろうか。いまだ三人の姿は見えない。それでもゼリオさんからもらった薬のおかげで全く疲れは感じていない。これなら追いつけそうだ。


レイネシオが見えてきた。方角的には間違っていないようだ。街に入ると目立つ上にぶつかった際に謝れるほど私に余裕がないため街の外を半周する感じでレイネシオを通過しよう。


ゼリオさんはハーヴェストに隣接している≪フォートレス山脈≫を超えるとエールレイユの本拠地があるらしい。そこに到着するまでの間、つまり山脈で三人と合流するつもりだ。


そしてようやくハーヴェストに到着した。


森は以前来た時よりも空気が澄んでいて、森が平和になったことを体で感じることができた。


正直木が邪魔だ。だがいくら急いでいるとはいえ私に自然破壊などできない。黙って避けながら前に進むしかないだろう。これも敵の攻撃を避ける訓練だと思えば悪くない。


三人と会えるまで、あともう少しだ。



ーーーーーーーー




ハーヴェストは思ったより広かった。が、着々と景色は変わっているように思う。足元が次第に大きな岩場に変わってきている。山脈は近い。それと同時に、私の視界に魔物が移ることが増えている。どうやら山脈はハーヴェストとは対照的のようだ。苦労しそうだな。


足元は次第に上り坂へ変わりつつある。普通は山を駆け上がるなどというバカな真似はするものではない。しかしそれはそれ、これはこれというやつだ。駆け上がりでもしない限り、三人に追いつくのは不可能に近い。


もちろん自分の「走る」という選択に満足しているわけではない。考えればより良い案が見いだせたはずだ。正直後悔している。こういう時人間は空を飛びたいとかできもしないことを夢見るのだろうな。気持ちは痛いほどわかる。


空が飛べれば、こんな風に魔物に邪魔されることもないだろうに。


「...邪魔です《フォトンズレイ》!!」


私は威嚇している魔物を、進行方向に立たれた面倒臭さと八つ当たりを込めて思いっきり蹴散らしてやった。案外清々しい。


私の打った魔術が強すぎたのか、魔術が這って進んだ一直線には何もなくなっていた。魔物どころか木までなぎ倒してしまったようだ。まだまだ未熟だということを実感させられたような気がする。




突如として、魔物の唸り声が聞こえた。私が進むべき道の先からだ。私の魔術を受けたとは考えにくい。それにその唸り声には聞き覚えがあった。レイネシオ周辺で戦った、元人間の魔物と同じ声だ。エールレイユが放ったものだろう。それと誰かが戦っているのかもしれない。私は声のする方へ向かうことにした。三人がそこにいることを願いながら。



ーーーーーー





だいぶ近い。あともう少しだろう。



見えた!


予想通りそこにはあの魔物と、それと戦っている最中の三人がいた。偶然にもこの周辺だけ木がやたら生えていて、彼らが私に気づく様子はないようだ。


私は足音を極力立てず、それでも走るスピードは落とさず、魔物に向かって走っていった。


狙うは、頭!!


「《アブソリュートソード》!!」


「「フィオラ!?」」


私は予定通り魔物の頭に魔力でできた氷の刃を突き刺すことに成功した。だがこの魔物にはもう一撃必要だろう。


「ッ!!」


魔物の頭に突き刺したそれを、そのまま斬りおろして魔物の背中を切り裂いてやった。我ながら容赦ない。着地してしまったうえにこの位置からは心臓を貫けそうにない。


「アッシュさん!!」


「おぉらぁああああ!!」


直後に魔物の肉に刃物が刺さる音と、激しく出血しているであろう音が私の耳に聞こえてきた。魔物は死んだようだ。


私は立ち上がり、三人の方を向いた。


「流石で...」


「本当にフィオらなのか!?」


「...そ、そうですけど」


アッシュさんは何が何だかわからない表情で言葉を続ける。


「い、いや、だってお前よくわかんない女に連れてかれて...あーもう何がどうなってんだ!!」


「落ち着け、フィオラが困ってるぞ」


「あ、ああ悪りぃ」


「フィオラちゃん、なの?」


「はい。すみませんでした、心配をかけて」


「とりあえず、何があったのか説明してくれないか?」


「はい」


それから私はフィリルに連れ去られてから今までの間を三人に話した。三人は一切私の話を疑うことなく、しっかりと聞いてくれた。



「...あれが姉貴、ねぇ」


「とてもじゃないが、あれが姉のすることとは思えないな」


「でもフィオラちゃんが無事だから...まぁそういうことなのかなぁ」


「...あの」


私はまだ三人を追いかけてきた理由を話していない。本題はそれなのだ。


「皆さんは、エールレイユを叩きに行くんですよね?」


「...ああ、そのつもりだ。悪いけど、フィオラの親父を殺すことになっちまうかもしれない。でも俺らは止まらないからな」


「分かってます。私は三人を止めに来たんじゃありません」


「?」


私は一度深く呼吸し決意を固める。


「私も一緒に行かせてください!」


「...!?」


「家族が敵とか、三人と一緒にいたいからとかそういうの関係ないんです。自力で見つけた居場所を壊され、大好きな街も壊されて、黙っていられないのは私も同じですから!」


私の苦痛の叫びを聞いた三人は少しの間固まっていた。思えば私が三人に向かって自分自身の意思をしっかり伝えたのは初めてだな。ちゃんと伝わっただろうか。


「...ちょっと見ないうちにずいぶん成長したなフィオラ」


「え?」


「もちろん、いいよな?」


「当たり前だ」


「むしろ心強いかもね」


「だ、そうだ。一緒にストレス発散といこうぜ」


「はい!」


私たちがいた地点から目的地までは、すでに山脈を下るだけだった。目的地が近づくにつれて、私は緊張よりもワクワクしていた。


復讐の時は近い。

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