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底辺から這い上がる少女  作者: 雛月いお
小さな光
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奴隷という生き地獄

―――――神はなぜ、私にこんな想いをさせるのだろうか。

いや、そう思っているのは少なくとも私だけではないはずだ。

そもそも神など存在しているのだろうか。

もし存在しているのならば、私は神にこう言い放つだろう。

 この生き地獄から早く助けてくれ、と。



―――――――――――――――――――




「おら、さっさと働けクズども!!」


「ひ、ひぃぃ!?」


 今日も相変わらず、怒声とそれに怯える奴隷の声が響く。私もその一人だ。

ここはデールレイユ軍の城の地下、軍の奴隷となった私たちみたいな人間が働く場所。

 労働の内容は、木でできた大きな歯車を回したり、井戸から水をくみ上げたり、軍の武器や防具を作ったりと多々ある。その中で私が命令されている仕事の内容は、「死体埋め」だ。

 奴隷の仕事の中で精神的にも肉体的にも最も辛いといわれている。死んでいった奴隷の体を見ていると気が狂ってしまいそうになる。


 今日も相変わらず、私は昨日死んでいった奴隷たちの体を埋めていく。


奴隷たちの死因は二つある。度重なる強制労働の末、ついに体が耐えられなくなり息を引き取った者と、自ら命を絶った者だ。

 そんな最後まで必死に頑張った仲間の体を、「おつかれさま」という想いを込めながら土に埋める。


 ここでは100人近くの奴隷が働いている。皆強制的に連れてこられ働かされている。


私は思う。

 彼らが一体何をしたというのだろうが?軍の目に触る行動をとったが故にここに連れてこられたのなら、まぁ納得しないこともない。

 なら私はどうだろうか。物心ついた頃からここにいる私が何かしたというのだろうか。

.....理不尽だ。


「おいそこのガキィ!!なにぼーっと突っ立ってやがる!!」


 軍の人間の声で我に返った私の目の前には、私よりも一回りも二回りも大きな大男が二人、まるで家畜を見るような目で私を見下ろしていた。

....この時点で、すでに手遅れだったのだ。


「おいお前、俺たちのことなめてんじゃねーのか?」


「そ、そんなこと.....!!」


男の内一人がそんなことを言い出す。

私の体が反射的に震えるのは、この先の展開を知っているからだ。


「そんな奴隷にはお仕置きが必要だなぁ」


もう一人の男が私の右腕を掴み、強引に引っ張ってくる。

ここで逆らえば、やつらは激怒し、何をしてくるかわからない。かといって大人しく連れていかれても結果は変わらないだろう。

....ほんとに理不尽だ。

無力な私は大人しく、奴隷拷問部屋へと連れていかれるのだった。



――――――――――――――――――――――――




 たぶん私は今、この世のすべてに絶望したような表情をしているだろう。

私にかかった手錠が天井にひっかけられ、宙に浮いている状態にある私はもはや逃げることなどできない。


「今どんな気分だぁクソガキィ?」


軍の男は私にそんなことを聞いてくる。

...どうせ、わかってる癖に。

怒りと恐怖にまみれた私は、黙り込むことしかできなかった。


「しかとこいてんじゃねーぞおらぁ!!!!」


「っ!?....ぁ、ぁぁ」


「うっほ、いい反応しやがるぜガキのくせに」


 私の脇腹に重い衝撃が入った。

痛い、怖い、苦しい。もういっそ、このまま殺してくれたほうが楽だろうな。


「おい、俺にもやらせろよ。おら!!」


「ああっ!!...げほっげほっ」


「おお、血吐きやがったぞこいつ。おもしれぇ」


こんどは先程と反対側の脇腹に重い衝撃が入る。

もう、いやだ。痛いのは嫌だよ。誰か....


「こんなんで終わるとおもったら大間違いだぞおらぁ!!」


「うあぁ!!...ゃぁぁ」


「おらおらぁ!!」


「うああっ!!あああっ!!」


「たまんねーなぁおい!!」


痛いよ、


「ヒャッハハハハハ!!」


怖いよ、


「もっと苦しめよぉ!!」



たす...け...て...




―――――――――――――――――――――




「なかなか楽しませてもらったぜクソガキィ」


 私は大男に髪の毛をつかまれ持ち上げられていた。

ここは、どこ?

終わったの?


「まだ明日からしっかりと働けよガキィ。おら」


そこまで言った大男は私を軽く投げた。

もうろうとする意識の中で、投げ込まれた場所がどこかの部屋だと気づいたときには牢屋の扉は閉められ、二人の大男の姿も見えなかった。


やっと、やっと一人になれた。


ここには私以外の人間はいない。誰もいないから安心できるのだ。


ボロボロになった体を休めるべく私は目を閉じる。


私は一生ここでこうして生きて、この命を失うまでここで働くんだろうな。


などと思いながら。

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