テロとの遭遇
僕は、電車に乗っていた。この時間が憂鬱だ。どうして、電車なんて乗りたくない。仲がいいならいいのだが。ここにいるのは……。
「ねぇねぇ。涼君、今日の予定、あるかな」
俺に、話しかけてきたのは、椎名優衣だ。はっきり言って、こいつはとんでもない奴で。今や絶賛、猫かぶり中だ。
今のところ、俺には、これといって被害はないのだが……。いや、もしも、この優衣の誘いに乗ったら、たぶん大変な事態になる請け合いだ。
しかも、会ってまだ三日目で「涼君」って、馴れ馴れしいだろ。
「昨日のニュースで、なぜ俺を、一般人にした」
俺は、関係のない話をした。夕方の速報のニュースでは、中学生が事件を解決と報道されていた。しかし、夜十時からのニュース報道では、一般人になっていた。
「仕事の話……。日本人って基本的に、仕事の話をしたがるよね」
優衣は、少し呆れた感じで話をした。
「俺の、予定のほうが大事なわけか?」
優衣は、俺の問いに首を振り。
「答は、あの学校に、リベルタのメンバーがいるってわかったら、まずいからだよ。リベルタの存在自体が伏せられているしね」
椎名優衣は、当たり前のように答えた。つまり、圧力を懸けたわけか。リベルタとは、政府直轄の組織だ。
「手を全員、上げろ」
嬉しそうな声で、男が言った。男は、ニヤケた笑い顔で、電車全体を見渡している。
「これは、爆弾だ。半径十キロが、爆発して消失する」
「涼君、なんとかできる」
優衣が耳元で、囁く。優衣は、自分自身の能力では犠牲者が出ると考えたのだろうか。
「そこ、喋るな」
男は、冷静な口調で注意した。男は、ポケットから銃を出し、僕に銃口を向けた。男が爆弾を使わない理由は、新宿駅で、爆発させるためだろう。
僕は「怠いな」と立ち上がった。
「おまえ、そんなに死にたいのか」
男が、初めて、怒りの口調に変わった。すぐに男は、冷静な口調に戻ったが、僕を睨みつけている。
僕は『銃が僕にあたる』と予想した。男は「死ねよ」と、引き金を引いた。
「なぜ、撃てない」
男の顔面が青くなり、硬直している。
「まぁ自業自得やつだな」
僕は言葉と同時に、男の左頬を殴った。
「これは、俺の手から離れた瞬間に爆発するんだ」
僕に、爆弾を見せつける。
「そうかい。それじゃ、残念だ」
僕は『手から離れたら、驚く』と予想し、効果は『爆発しない』とした。俺は、爆弾を取り上げた。
「なんで爆発しない。ありえない」
男は目を見開いて、ボケーとした。俺は、男が持っていた銃を男に向けた。男が、含み笑いを浮かべた。
「その銃は、使えない」
「じゃあ試してみるか」
俺が、銃の引き金に手を当てた。
「おまえ、アホだな」
最後の負け惜しみのように男が言った。
「おまえがな」
俺は、男の足に銃弾を撃ち込んだ。
「ぎゃああああああああ」
男の悲鳴が電車の前に響き渡った。新宿駅へ電車が着いた。人々は、我先にと降りる。
「涼君、最低」
俺の背中を押す。
「降りるのか」
俺たちの駅は池袋だが、電車は進まないだろう。椎名の判断は、正しい。
俺には、嫌いなものが、二つある。一つは、テロリスト。もう一つは、軽い女の子。この二つが重なっていたんだ。俺の気分が悪くなるのも、当然だ。