危険な日常
四時間目の授業が終わり、昼休みも、終わりに差し掛かる頃だ。
「七海ちゃん、S+や」
北﨑照間ことテルが、唐突に喋った。
「何が……」
テルが、何を言いたいのかわからない。
「美少女ランキングに決まっとるやろ」
昼休み中に堂々とそんなことを言われても……。
「ランキング……ありえないわ」
女子に聞かれたら、ドン引きされる……。
「性格が、ルックスもよく。勉強ができ、性格もすばらしい」
テルは、自信満々に答える。
「あっておりかもしれない。だが、夏海は、怒らせると怖いし。空手やってるから、強いぞ」
七海は怒ることは、稀だ。ただ、怒らない人間ほど、怒ると怖いという、あれだ……。
「そうか……。ただ、それを、補ってあまりある。バスト88ウエスト60ヒップ86これぞ、才色兼備だ」
テルは、何かを宣言するように、答えた。
「声がでかいわ」
どこで調べたのか……。
「じゃあ、小さくしゃべるわ」
いや、もうしゃべらなくていい……。
「面白いお話ですね」
俺の言葉と同時に、成城院奈那が、話しかけてきた。奈那は、黒髪のロングヘアーに白い髪止めをしようしている。
「ゆっくり、聞きたいですが、もう五時間目が、始まります」
冷たい言葉と同時に、僕たちの背中を叩いた。
「あいつ嫌いや。顔だけなら、Sだが、性格も会わせれば、Zだ」
Zだから、一番最下位あたりなのだろうか……。
「ただ、この頃は、うるさくなかったな」
テルは、嬉しそうに答えた。
「たぶん、生徒会長になったからだろ」
奈那は、一〇日ほど前から、生徒会長になった。
五時間目の授業の音楽室に向かった。途中なぜか男子が吹き出して笑っていたり。女子が、睨んでいたりする。
俺たちは、廊下をあるいていると七海が、通りかかった。
「りょう、また会ったね」
今日の朝ぶりか……。
「七海は、体育じゃないのか?」
七海たちクラスは、体育だったはずだが。制服を着ている。
「うーん。レクリエーションらしいよ」
七海は、何かを思い出すように喋った。
「そうか。まぁ頑張れよ」
もうそろそろ、昼休みの終了のチャイムが鳴る。急がねば……。
「じゃあね」
七海は、俺に、手を振った。
「やっぱり、七海ちゃんは、かわいいな」
テルが、考え深そうに言った。
「夏海ちゃん、あれ」
夏海の連れが、何かに気づく。
「ちょっとまって」
七海の焦ったような声が聞こえた。俺とテルが振り向く。すると七海が、猛スピードで駆け寄ってくる。テルの襟を掴み、夏海の拳が、テルの顔面にめり込む。
あまりの威力にテルは、倒れ込んだ。顔を押さえて、蹲る。
背中には、紙が貼られており、「夏海ちゃんのスタイル最高。おっぱい、おっぱい」と書かれていた。
これは、七海なら、切れる。七海は、スタイルのことを言われるのが、最も嫌いだ。
七海の目が、ぎりっと僕を見た。七海が、殴る体勢に入った。しかし、拳は、僕の目の前で、止まった。
「ひどい」
拳で、見えなかった七海の顔を見る。するとボロボロ泣いていた。泣きながら、立ち去っていった。
まさか、俺にも、何か書いてあるのか。背中の紙を取ってみる。「七海は、すぐ暴力を振るう、獣です♪」
後ろには奈那がいた。
「代弁したつもりだったのですが。いかがでした」
奈那は、耳元で、囁いた。
ここで、何かいえば、さらに反撃が。僕は、耐えた。そして、放課後、僕とテルが夏海に、土下座したことは、言うまでもない。