転校
僕は、病院のベッドから起きた。首には、包帯が巻かれていた。
奇跡的にかどうかは、わからないが、僕は助かった。二〇年前なら確実に死んでいたが、とりあえず現代医療に感謝だ。
僕は、全治二週間。雫は、昨日、退院した。
ノックする音が、聞こえた。「はい」と僕は、テルから貰ったお宝本をベッドと布団の間に隠した。
来客は、雫だった。雫は、ベッドの横にあった椅子に座った。
「大丈夫? 優衣の所に最初に寄ったけど、昨日よりも、だいぶいいって」
優衣は、未だに目覚めていない。明日には目覚めてもおかしくないし、一生ずーっと目覚めなくても不思議ではないらしい。僕のミスで、こんな結果に……。
「七海は見つかったのか?」
七海は、僕が気絶している間に、いなくなったらしい。碧が七海を逃がした責任は、ない。ましてや、責められない。
「いえ、まだ。全力で、追いかけているけど。わからない」
今は作戦を考えている途中なのだろうか。それとも、死んだのか。
「それよりも、いい物、買ってきたんだ」
雫は、ニコリと笑った。
雫は、「じじゃん」と袋から梨を取り出した。雫は、慣れた手つきで、梨を剥き、僕に差し出した。その時、僕と雫の手が触れた。雫のサイコメトリーの能力が作動した。
一瞬で、雫の顔が曇った。僕は、気にすることなく、梨を口の中に放り込んだ。みずみずしくて、甘い。
「うまいよ。なんて言うか、みずみず……」
「布団とベッドの間」
雫は、僕の言葉を遮るように指摘した。やばい……。雫は、下ネタが嫌いだ。
「涼、まだ中学三年でしょ。早くない」
雫は、ナイフを持ちながら立ち上がった。
「いや、ちょっと待って」
僕の言葉を遮るようにナイフを振り下ろす。
ベッドに突き刺さった。
ナイフを抜き、お宝本を布団の下から取り出した。お宝本は、ナイフで突き刺され、見るも無惨な形になっていた。
「じゃあ、これ、捨てとくね」
雫は、ニコリと普段の笑みに戻った。
あれから二週間が経った。僕は、退院をして自宅に戻っていた。碧と七海の父親は、逮捕はされたが、証拠不十分で釈放された。
僕は、なんか納得いかなかった。僕の携帯が鳴った。相手は、碧だ。
「ごめん、こんな遅くに」
碧が普段の口調で話した。碧は、アメリカの全寮制で最新設備の学校に転校した。
「ごめん。今回こんな事態になって」
あの時、七海が捕まっていれば、転校することなんてなかったのに。
「ううん。十分だよ。それに、こっちはこっちで楽しいし」
碧は、にこやかに受け流した。碧は、アメリカの生活に慣れそうになかったので、僕は安心した。
僕は碧に「それは、なによりだ」と答えた。
「ただ、半年以内だからね」
碧が何を言いたいのか、わからなかった。僕は碧に質問した。
「何のこと?」
「私が、高校では、日本で暮らしたいから。半年以内に解決してね」
碧は可愛らしく言った。冗談のつもりなのだろう。
「わかった。全力で努力する」
僕は、碧の期待に応えたいと思った。




