病室
優衣は、昏睡状態だった。最悪、いつ亡くなってもおかしくない状態。優衣以上の問題は、隼人が死んだ事実だ。
しかし、それ以前に、隼人の助けを借りずとも優衣なら、七海と互角以上の戦いはできるはずだ。
優衣は、能力を使えば、逃げ出すことはできたはず。なぜ逃げなかった。最後、能力を使わなかったのだろうか?
「違うわ。使わなかったんじゃない。使えなかったの」
雫は、泣きながら喋った。
「優衣の能力は、写真や鏡等、自分の顔と同じ物があれば、その移動できる能力よ。すなわち、顔が違えば……」
雫は、優衣の顔を指さす。優衣の頬には、傷ができていた。なぜ優衣なのかが、いまいちわからない。
「七海は、なぜ優衣を狙ったんだ」
「それはね。もしも碧ちゃんを誘拐したときに、優衣がいたら、邪魔になるから」
雫の答に、びっくりと僕はした。なぜだ……。なぜ七海は、拉致できると踏んでいるんだ。どんな方法を使うんだ。
「涼、あなた、この事件が終わったら、この仕事、すっぱり辞めたほうがいい」
雫は、涙を拭い僕を睨みながら言った。
「なんでだよ。俺が何か悪いことをしたか?」
思い当たる節がない。
「してるわ。あなた優衣のこと、わかっているの?」
雫は、僕に質問をした。
「イギリスから来た帰国子女。能力は、移動系能力。悪戯好き」
それぐらいしか、思いつかない。
「優衣はね。一〇年前に、涼と会っているの」
僕は、雫の答にハッとする。椎名優衣……。小学校の同級生にいたような気もする。
「優衣はね。楽しみにしていたの、涼との再会を。ただ、あなた、最低な行為をした」
雫が言う最低なこととは、最初の事件で、優衣を庇わなかった行動か。犯人が優衣を狙っていたら、優衣は、死んでいたのかもしれない。
「この事件だって、七海ちゃんの腕の傷や誘いに乗っていれば、起こっていなかったかもしれない。」
雫の能力、サイコメトリーで、僕の記憶を見たのか。
「涼、あなた決定的に気づけていないの」
雫は、核心を突くように言った。
「涼、あなた、もう二人の人生を狂わせているのよ。たぶん、あなた、今後も同じ失敗を起こすわ」
確かに、雫の言う指摘も一理あるのかもしれない。
「雫、お前の言っている意味もわかる。ただ、この責任を俺がとるよ。絶対に碧だけは、守る」
僕は、雫に宣言した。
「間違いなく、次、碧ちゃんが襲われる」
これは、間違いない未来だろう。
「たぶん、七海は、碧を拉致する気だ。行くぞ」
僕は、優衣の病室を出た。
以前から、気になっていたが、雫の運転は、荒い……。あの後、雫は、隼人の死体をサイコメトリーしていた。
「涼は、あの場に、隼人がいた理由、わかる?」
雫が唐突に質問した。
「いや、わからん」
「優衣を、見張っていたのよ」
隼人が優衣を見張る理由なんて、あるのか。
「隼人は、優衣のストーカーだったの」
「いや、ありない。隼人は、優衣が嫌いだったはずだ」
僕は、何度も隼人から優衣の悪い噂を聞いたはずだ。
「優衣と涼を仲良くさせまいとしたのよ」
「そうだったのか」
優衣の悪い噂は、すべて隼人からだった。
「あなたが人生を狂わせたのは、三人だった」
雫は、冷たく喋った。




