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平穏な日常

 僕が、テロの被害に遭ったのは、落ち葉が落ちる、秋の季節だった。次の日、学校に登校する際に、みんなの視線が気になったのは無論だ。ただ、それ以上に、昨日は十二時間以上も取調べをされて、疲れた。

 テロリストも含め、死人が三人も出たら、当然といえば当然なのだが……。下駄箱に靴を入れて、早々に教室に向かう。すると、背中をポンと叩かれた。

 振り向くと、西尾七海がいた。

「すごいっ、すごいよ。りょー。あんな事件一人で解決しちゃうなんて」

 飛び跳ねるような明るい声で、七海は喋った。七海の髪は茶髪のツインテールで、同年代の女子に比べると、精神年齢は、若く見える。昨日は、あんなに震えてたのに……。寝たら、治ったのだろうか。

「そんな、大したことじゃない」

 僕は、軽く否定した。俺の言葉に、七海は首を振った

「ありがとう。涼」

 七海は、ニコリと微笑んだ。七海は、下駄箱を少し過ぎた場所の廊下で、話しかけて来た。他人目があるのを、もう少し気にしてほしい。

「ニュースにも、なっていたのに……」

 このぐらいの小さなテロ事件では、扱いは小さいはずだが。でも、解決したのが中学生という理由で、同様の事件に比べると、少しだけ扱いが大きかった。

「七海、なんか、お前自身が襲われる理由とか、知っているか」

 ポカーンと七海はした。確実に顎を撃ち抜いたテロリストは、七海を狙っていたはずだった。

「りょー、失礼だよ」

 七海は、ぷいっと横を向いた。

「私は、何か人に恨みを買った記憶なんてないよ。逆に、涼のほうが、いっぱいあるんじゃない」

 僕は、七海を怒らせてしまったようだ。

「いや、僕も恨みを買った経験なんてないよ」

 僕は、事実を率直に述べた。

 七海は、目を瞑っている。というか俺を無視している。僕は、必死にお願いした。

「なんでもするから許して」

「いいよ」

 七海は、明るい声に戻った。

「立ち直り、早すぎでしょ」

 これじゃ、僕が騙されたみたいじゃないかぁぁぁ。

 僕の言葉にムスっとした。僕は、必死に前言撤回した。

「うそうそ。今の嘘です」

「でも、涼は、凄いね。普通の男の子なのに。すごいピンチの時には、活躍しちゃうなんて」

 七海は、さらっと口にした。

「僕の場合は、実力ではない。能力があったからだ」

 事実、能力がなければ、できなかっただろう。

「能力? どんなんだっけ?」

 七海は、首を横に傾げた。

「イクスペクテイショーンの能力。前に言わなかったけ?」

 イクスペクテイショーンとは、英語で、予想という意味だ。予想と効果が、実際に少しでも可能性のあるものであれば、本当に実現してしまう能力だ。

 テロ犯に対して使ったのは、予想が「テロ犯の方向に銃弾が飛ぶ」で、効果が「人質には当たらず、テロリストに当たる」だった。

 本当なら、人質に当たらない、テロ犯に当たるという条件の他に、即死という条件も、加えたかった。

 しかし、難易度が高ければ高いほど、実現度も低くなる。人質には当たらず、テロ犯に当たるという条件だけで、十分だろう。

「思い出したよ。思い出した。そんなん使えるとか、言っていたね」

 七海は、ポンと手を叩き、思い出した表情を浮かべた。

 テストの点数や、運動神経とスタイルは、いいのだが、どこか、抜けている。

 父親が五十代で、二人兄妹の妹。兄との年齢差は十歳ある。遅くにできた子供なので、甘く育てられているのかもしれない。

「でも……。なんか」

 七海が、芳しくない表情を浮かべている。なんか嫌な予感がする……。

「ネーミングセンスが、ちょっと……」

 七海は、言葉に詰まりながら、話した。

「イクスペクテイショーンって、まずいか」

 僕の言葉に、「うーん」と考えている。

「イクスペクテイショーンとかドヤ顔で言われたら、少し引いちゃうかな」

 七海の言葉に僕の、小さな胸は抉られてしまった。


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