イルミナス
サングラスを掛けた男は、銃弾を放とうと引き金を引こうとする。僕は、イノベーションの能力を使う。『予想』引き金を引く。『効果』銃弾は、放つことはできない。
イノベーションの能力は成功して、サングラスの男は銃弾を放てなかった。
一〇〇パーセント俺を殺そうとした。ここで、俺が負ければ、碧も殺される事実は間違いないだろう。
ここは、絶対に負けられない。碧の顔は真っ赤になっており、小刻みに息押している。なぜだ、さっきまで、あんなに元気だったのに。
「お前にも、死んでもらおうか」
サングラスの男は、ニヤリと笑った。
僕の体は、どんどん寒くなってくる。眩暈が起こり、膝をついてしまった。この症状は……。
「あと五分もすれば、死ぬぞ。それとも、今すぐ死ぬか」
サングラスの男は、僕の額にナイフと拳銃を見せ付けた。
「なんのつもりだ」
僕は、力を振り絞り答えた。
「お前の能力は、イノベーションとか言ったか。ナイフでお前を切りつけて。同時に拳銃を撃つ。どうなるかな」
僕のイノベーションの能力は、一つしかできない。すなわち、同時攻撃は、防げない。
「悪いが、死なない」
僕は、立ち上がった。サングラスの男は、驚いた声を上げた。
「なんで、立てる」
「お前の能力は、体温操作だろ」
サングラスの男に能力を掛けられたとき、風邪で寝込んでいる時の感覚に似ていた。体温が上がっている時と同じ症状だ。
銃で、サングラスの男の、左足を撃ち抜いた。サングラスの男は、「ぐわぁ」と悲鳴を上げた。
サングラスの男を殺してもよかった。ただ、碧を襲った理由が、わからない。碧を襲った理由をはっきりと吐かせるまでは、殺せない。
「殺さないのか?」
痛みで引き攣った顔つきでサングラスの男は、質問した。
「当たり前だ。お前には、まだ聴きたいことがある」
七海を襲った犯人もわかるかもしれない。
「なんだよ」
ふて腐れた感じで男は、答えた。僕は銃を突きつけながら、質問した。
「なぜ、碧を狙った」
「教えるわけないだろ、馬鹿」
サングラスの男は、薄ら笑いながら、答えた。
「答えろ」
僕は、右足に銃弾を放った。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」
男の悲鳴が聞こえる。右の膝小僧の辺りを打ち抜いた。当然の反応だろう。銃を突きつける。
「もう一度、聞く。碧をなぜ狙った」
「答えるわけないだろう」
男は、真顔で答えた。
「じゃあ、質問を変える。お前は、何者だ」
こいつが何者なのかわからない。そこがわかれば何かわかるかもしれない。
「イルミナスって知っているか?」
サングラスの男の言葉遮るように、サングラスの男は、爆発した。
イルミナス……。警察の特殊部隊。なぜその名前が出たんだ。それ以前に、なぜ碧は、襲われたのか? 金銭目的の可能性が高いのか?
いや、金銭目的なら、碧でなくても良かったはずだ。金持ちなら他にいっぱいいる。
しかしなぜ、僕と僕の能力を知っていたのだろうか? 謎だらけだ。
「ほんとうにイルミナスって言ったの」
雫が真剣な表情で聞いた。
「いや、正確には、『イルミナスって知ってるか』と言った」
男がイルミナスの一員だったかは知らない。というかサングラスでロンゲ。あんな格好の人間が、イルミナスにいるわけはない。
「警察庁のほうには、聞いたけど。関係ないとだけ」
雫は、いつもの口調で喋った。
「優衣は、どう思う」
雫が優しい口調で聞いたが、優衣は元気のない口調で答える。
「わからない」
「涼、ちょっと」
雫と僕は、別室に行った。
「涼、なんでそんな元気になっているの?」
雫が不思議そうに答える。
「いや、立ち直ったというか」
碧に殴られてから立ち直ったのだが……。碧に殴られたからとは言えない。
「優衣がさらに落ち込んじゃって。大変なの」
雫は、困った顔をした。正直、優衣が、落ち込もうが関係ない。てか自業自得だろ。
「僕に関係ないし」
「それ本気で言っているの」
雫の目力が一段と強くなった。やばい……。怒る寸前だ。
「じゃあ、何すりゃいいんだ」
一応、聞くだけ聞いてみるか。
「男なんだから、女の子に優しくしなさい」
雫は、教師が、生徒に注意するかのように答えた。
「向こうが優しくすれば、な」
僕は、雫との話を打ち切り、立ち去った。




