表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/27

危険な女の子

 間違いなく、七海の死体だった。僕が、七海の異変にさえ気づいていれば、こんな状況にはならなかったかもしれない。

 くそっ……。

 僕は学校すら、二日も休んだ。リベルタにも行っていない。メールが数件入っていた。奈那からのメールが気になり、開いてみた。

「人殺し」

 と三文字、書いてあった。事実、奈那の言うとおりかもしれない。

 ピンポーンとインターホンが鳴った。僕は、「はい」とインターホンに出た。

「わたし」来訪者は、雫だった。マンションの鍵を開けた。

「なぜ、リベルタに来ないの? なにか不満」

 雫は優しく丁寧な口調で、質問した。

「ただ、調子が悪いだけだ」

 僕は、微妙な嘘をついた。二日間、事実ほぼ何も食べてない。

「じゃあ、治れば、すぐに来るのね」

 雫は、僕に確認をした。僕は、ためらわず本音を言った。

「いや、正直、あいつとは無理だ」

「あいつって、誰?」

 雫は、真剣な表情だ。

 椎名の嫌がらせで、頭が一杯だった。椎名さえいなければ、七海は、死ななかったかもしれない。

「椎名だ」

「一度、決まった規則がそう易々と変えることは……」

「それだけの悪行を椎名はしている!」

 僕は雫の言葉を遮り、強く反論した。すると雫は優しい口調で僕に言った。

「少し、疲れているようね。少し休みなさい。私がなんとかしておく」

 雫は、立ち去った。ドアの鍵を閉めた。リベルタを休むのか。次の瞬間、莢乃さんの顔が思い浮かんだ。

 莢乃さんだけは、不安にさせないと誓ったのに……。くそっ。僕は、壁を叩いた。

 莢乃さんから「人が死んだんだもん。当然、気にしないで。それから、挫けないで、頑張って」というメールが届いた。

 やはり、莢乃さんに、迷惑を掛けてしまった。

学校の昼休み。あれから、二週間が経った。今でも、七海が、死んだ現実は、納得できない。犯人たちを俺は、許さない。

 僕が、あの留守電に気づければ……。七海は、死んでなかったかもしれない。

「知っているか、涼? 碧ちゃんて」

 テルが、話しかけてきた。碧……。全く聞いた覚えない名前だ。

「また転校生か」

 うちの中学に転校生なんて、あまり来ないはずだが。

「やはり知らんかったか」

 テルは、気まずそうに言った。正直、かなり気になる。

「誰だ、碧って」

「七海ちゃんのファルセダや」

 僕は、箸を落とした。

 ファルセダとは、スペイン語で、偽りの者という意味だ。現代では、全く瓜二つの人間を作る実験に、成功している。身なりも、性格も、精巧に再現できる。七海と以前と同じように接しられるかが、不安だ。西尾七海だった名前を西尾碧に変えたとの情報だった。

 テルは、本日は休みだった。テルがいないと、憂鬱だ。僕は、昼休みは、屋上で一人でいた。チャイムが鳴った。      

 あと一〇分で、昼休みが終わる。僕は、教室に戻ろうとする。僕が屋上のドアを開こうとすると、反対側からドアが開くような感じがした。

 ドアの前にいたのは、西尾碧だった。

「こんなところで、偶然だね」

 碧の口調だと、僕を知らない様子だ。ファルセダは、設定者が自由に性格も決められる。当然のように、知り合いだった人間も、昔よく知っていた人間のように話すことは、可能だ。

 碧の親とは、一度も会ったことがない。碧の知り合いという設定は、ありえない。

「キミは、なんで屋上に」

 僕も、他人の振りをした。知り合いの振りをしたら、碧を混乱させるだけだ。

「私、事故に会ってから、少し記憶喪失になってしまって。ここに何があるのかなと思って来ただけ」

 ファルセダであれば、当然だ。完全、完璧に元の人間と同じ生活ができることは、ありえない。慣れていくしかない。

「大変だったんだね」

 何でもいい。碧が元の生活に戻れるように、協力したい。

「ところで、キミ、名前なんていうの」

 不純な動機のない、無垢な笑顔で、僕の名前を聴く。

「黒木涼」

 一瞬で碧の顔が曇る。もしかして、僕の名前を覚えているのか……。

「キミだったんだね。今日のこの手紙」

 碧から出た「今日のこの手紙」という言葉に、戸惑った。心当たりがない。碧は、僕に手紙を渡した。手紙を読むと。

「こんばんミー」

 なんだ、この恥ずかしい文章は。

「突然ですが、西尾碧さん、好きです」

 単刀直入すぎるだろ。もう少し捻りが必要のはずだ。

「碧さんの好きな箇所。それは、胸です」

 七海は、自分の胸の話題に触れられるのは、あまり好きではない。

「碧ちゃんのバスト八十八センチ・Eカップだよね。(調べました)中学二年生で、反則でしょ(笑)この手紙に興味あったら、連絡ください」

 最悪な手紙だ。しかも、僕の住所や携帯番号まで書いてある。

 ていうか、僕の名前ぇ!

 なぜこんなことになっているんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。

「オッパイ星人」

 僕を睨みながら、尖った口調で話した。

「誤解だ。マジで誤解なんだ」

 僕は必死に弁明する。碧は聞く耳を持っているようには、とうてい見えない。

 このままだと、まずい。

「誤解? 奈那ちゃんから聞いたよ。ものすごい変態くん、なんでしょ」

 犯人は、奈那、お前かぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

「信じてくれ。誤解なん……」

 僕の言葉を遮り、僕の胸ぐらを掴む。

「問答無用」

 空手をやっている碧の拳が、僕の顔面を捉えた。それは、僕の周りに、優衣と奈那の他に危険な女の子が、もう一人増えたことを意味していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ