事件と留守番電話
雫と僕と優衣は、グループを組んでいる。リーダーは雫だ。僕がリベルタに着いてから、二時間後に事件が起きた。
なぜ警察は、僕たちに事件を譲ったのか? プライドを捨てさせるほどの危険な事件。それとも罠なのか?
現場は、人通りの少ない細い路地のコンクリートでできた廃墟だった。しかし、この場所は、七海の帰宅通路沿いの廃墟だ。
「なんなの、これ」
驚きの声を優衣が上げる。
当然だ。一人が、大きな鋏のようなもので、切り刻まれている。黒い炭になるまで、焼かれている死体がある。
警察官の死体もあった。警察官の死体は、手の甲の二つに穴が空いており、肩から骨盤までなくなっていた。
「誰が、こんな猟奇殺人を」
こんな事件を起こすなんて、精神異常者で、複数犯の能力者しか考えられない。
「ここにある死体は、サイコメトリーできないわ」
雫は、困惑した表情で話した。理由がわからない。
「なぜだ」
「ここまで壊されると、情報が飛んでいる可能性が高い。ただ……」
雫は、焼かれている死体と切り刻まれた死体を見ながら答えた。雫の目線が、警官の死体に向いた。
「この死体なら」
警官の死体を雫は、触れた。雫は、触れた瞬間に目を閉じた。
「だいたい状況は、わかった」
雫は、目を開けながら、冷たい声で答えた。
「女の子を暴行しようとしたのよ。犯人は、五人。悲鳴を聞きつけた警察官が、犯人たちに捕まり、拷問を受けて死亡した。情報はそこまで」
雫は、泣きながら答えた。
警察官の最後の無線には、「女子高生が一人いる」というものだった。これは、雫の言っている分析と同じだろう。
能力者によって、無線内容が改竄された可能性や、警察官が意識が操られた可能性はある。しかし、女子高生と聞いた瞬間に、七海の顔が思い浮かんだ。
リベルタ本部にあった私物用の携帯電話に、電源を入れる。電話の着信があり、留守電が入っていた。七海からだ。留守電も入っている。
留守電を聞くのもめんどくさい。七海に電話する。
七海は、電話に出ない……。留守電を聴こうと操作する。僕の携帯が鳴る。雫からだった。
「鑑定結果が出たの、あの場所にあった血を全部、鑑定した。遺体とは違う血があったわ」
雫の言葉に僕は、「ああ」と相槌を打った。
「その血は、女子高生で、西尾七海。十四歳。ただ……」
雫の淡々といつも通り喋る言葉に、僕は、心臓が止まりそうになった。
「その西尾七海は、死んでいたわ」
馬鹿な……。どうして、死んでいた。
「自殺なのか。それとも、他殺か」
そこが一番重要だ。
「可哀想だけど、乱暴されていたから、間違いなく……」
間違いなく……他殺か。まさか現場を見落としていた。
「どこで、殺されていたんだ」
「別の民家。一人暮らしの男の子が、帰ってきたときに、西尾七海の死体があったそうなの」
雫の言葉に、手が震えた。ほんとうに七海なのか、確認したい。
「僕も、すぐに現場に行く」
「わかった。表参道の駅まで来て」
「今、忙しいから、また連絡する」
雫との電話を切った。なぜ、こんな状況になったんだ……。ふと、昼食の時、七海の腕の傷を思い出した。
「僕の所為か」
僕は、壁を思いっきり叩いた。
だけど、こんな無駄な時間は使えない。ほんとうに七海か、確認したい。僕は、部屋を出る時に、七海の留守電を聴いてみた。
「七海ちゃん。留守電になっちゃった」
笑いながら男が答えた。
「涼……助けて」
七海の悲壮な声が聞こえる。男たちの笑い声が入っていた。
「留守電だっての」
僕は、留守電を聞いた瞬間に泣き崩れた。




