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某所
そこは、暗闇に包まれていた。
付近に光はなく、当然人の姿はない。この世の果てか、この世ならざる場所か……。そう思えるほど、そこに生の息吹は感じられない。
「――白き神は目覚めたか……」
その時、闇の中に声が響いた。
「はい。そのようです」
そしてその声に答える声が、もう一つ。
「ゾルは、うまくいったようだな」
「はい。……ですが、敗れたようです」
「それが奴の運命だったのだろう。奴は器ではなかった……ただそれだけのことだ」
「……これから、どうされるおつもりですか?」
「白き神は目覚めた。だが、まだ全ての巨像が目覚めたわけではない」
「では……」
「そうだ。急ぎ新たな目覚めを進める」
「承知しました。……残る数は、さほど多くはありません。もう間もなくかと……」
影は、不敵に微笑む。
「――ああ。もう間もなくだ。天の空座は、間もなく終わる――」
そして声は、闇の中に消えていく。
ゆらりと揺れ動く影と、座して動かぬ影……。二つの背後には、周囲の色に紛れるように佇む巨像が一つ。
どこまでも深く、どこまでも濃い、漆黒の巨像の姿があった――――。
第一部 完