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黄金

 グランツの楯から砲撃が放たれる直前に、ラーゼを右に急旋回させる。ラーゼがいた方向には大量のエネルギー弾が無数の爆発を起こす。

 しかしグランツは、再び楯をラーゼに向け始める。


「琉斗!!」


「分かってるよ!!」


 ラーゼは地を蹴りグランツに向け飛び出す。しかし完全に間合いに入る前に、楯はラーゼに向けられた。


『甘いぞ琉斗!!』


 楯からは光が溢れる。間もなく無数の光が放たれるところで、俺は“トリガー”を引いた。


「――ブースト!!」


 その瞬間、ラーゼの体が光に包まれる。それと同時に機体を更に急旋回させ軌道をずらす。見ればやはりラーゼの残像が残っていた。グランツの楯から放たれた光は残されたラーゼの姿を捉えるが、光は蜃気楼をすり抜け奥の建物を爆炎に包む。


『―――ッ!? これは――!?』


 グランツが動揺してる間にラーゼを後方へ移動させる。そして黄金の背後を取るや、トリガーを戻す。光が収まったラーゼは、大きく剣を構えた。


『―――ッ!』


 グランツは背後からの気配に気付いたのか、手に持つ槍をすぐに後ろに構える。前方から突然消えたのなら、背後に回る可能性が高い――といった判断だろう。

 ――でも、その動きは読んでいる。


「――ブースト!!」


 ラーゼの体は光に包まれる。そしてラーゼは更に超高速で大地を駆け、再びグランツの背後を取る。トリガーを戻すや、ラーゼは地を横滑りしながら構えた剣を振り降ろす。


「おおおおおおお――!!」


『―――ッ!!』


 グランツは咄嗟に楯を向ける。ラーゼの大剣をそのまま振り降ろすと、斬撃はグランツの開かれた楯を切り裂いた。内部を断斬された楯からはバチバチとショートする音が響く。


『チィッ――!!』


 グランツは楯をラーゼに投げつけ後退する。ラーゼもまた後方に跳び楯と距離を取る。両機の中央を舞う楯は、やがて空中で爆発した。爆風がラーゼの体を包み、視界を遮る。ここでバスターソードを双剣に変え、爆炎が収まらない空間に向け駆け出した。

 しかし爆炎を抜けると、そこには槍を構えたグランツがいた。


『ハアアアアア!!』


「――ッ!」


 ラーゼに向かい槍を突くグランツ。ラーゼは片手の刃で槍を往なす。槍はラーゼのすぐ左を通り抜ける。それが通過する直前、ラーゼのもう一つの刃を思い切り切り上げた。


『クソッ――!!』


 グランツは槍を持たない手をすぐに構える。ラーゼの刃はグランツの腕を捉えるが、威力の弱い双剣では切断するには至らなかった。それでも装甲深くまで斬り込まれた腕からは破壊音が響く。グランツは体を捻り、槍を大きく一振りする。

 ラーゼは後退しながら槍を躱す。一度距離を置いた後剣を一つに戻し、構え直す。ラーゼが見つめる先には、槍を構えるグランツがいた。しかし仕掛けては来ない。ラーゼの動きを注視しながら、グランツは斬り入れられた腕を数回上下に動かした。


「ああもう! もう少しだったのに……」


 シャルは残念そうに呟く。


「確かにそうだけど、無理な追撃は禁物だ。相手の固有兵装も分からないからな」


(それに、ブレイクブーストを立て続けに使ってるからな。一度時間を取ってくれるのはありがたい)


 瞬発的とはいえ、ラーゼの固有兵装を二度も起動した反動は思いのほか大きい。気が付けば呼吸が乱れている。やはり体の負担はかなりのものだ。もっとも、意識を失うよりはマシとは言えるが。


『……なるほど、今のが、君の固有兵装ってわけか』


 槍を構えたグランツから、アーサーの声が響いた。


『報告には聞いていたよ。残像さえ残す程の超高速移動と機体性能の著しい上昇……だけど、どこか聞いていたのとは違うようだね。確か、一度使うと猛烈な疲労が君を襲うはずだったけど?』


「まあな。“小出し”してるしな」


『小出し? つまりは固有兵装を瞬間的に発動しているってことかい? ……なるほどね、それが、エリーゼを破った理由ということか……』


 アーサーは感心するように声を漏らした。ただの時間稼ぎなのか本当に漏れた言葉なのかは分からない。でも、アーサーの言葉には未だ余裕が見えた。


「余裕だなアーサー。でも、お前の自慢の楯はもうないぞ? そのドデカイ槍一つで、ラーゼの双剣を捌ききれると思ってるのか?」


 ラーゼの斬撃をことごとく防いでいたのはあの大楯。それがなくなった今、ラーゼはかなり優位に立てたということ。だがアーサーは、一切の焦りを感じさせない。


『確かに。この槍で君の攻撃を全て捌くのは無理だろうね。――だけど、もうそれは“必要ない”よ』


 アーサーは勝ち誇るかのように話す。


「必要ない?」


『そうさ、もう防御は必要ないんだよ。――このグランツ・ランツェの固有兵装、君に見せてあげるよ』


 アーサーの言葉の後、グランツの体は光に包まれる。それは機体の色を写したかのような、鮮やかな黄金だった。


『こうなった僕らは、もう止められないよ。……行くよ!!』


 黄金の光は、そのままグランツの槍に纏われ始めた。グランツの体以上に光り輝く突撃槍。


(……なんだ?)


 光輝く槍を深く構えたグランツは、更に足を後ろに下げ体勢を低くする。やや機体を上下に動かし、突撃の準備を見せた。


『――グランツ・ランツェの“アサルトラッシュ”……止めれるものなら、止めて見せろ!!』


(来る―――!!)


 アーサーの声と共に、グランツは突撃を駆ける。だがそれは先ほどまでとは違っていた。走り出すグランツの槍は更に光り輝き、光は後方に流れグランツの機体全体を包み込む。まるで一つの巨大な槍と化したグランツは、凄まじい速度で走り抜ける。


「―――ッ!!」


 ラーゼは横に跳びグランツの突撃を躱す。グランツは勢いそのままに駆け抜ける。グランツの進む先には建物が建ち並ぶが、グランツの突撃は触れる全ての建物を粉砕する。一直線に走り抜けた後に残るのは、残骸だけだった。


『まだだ!!』


 走り抜けたグランツは地を滑り体を反転させる。そして再び光を纏い、ラーゼに向け猛進する。何一つ余計な動作などない。ただひたすらに、光に包まれた槍をラーゼに向け駆け抜けてくる。


「そんな単調な攻撃で――!!」


 ラーゼは軽く上空に跳ぶ。その直下を通過するグランツ。グランツの視線は前しか向いていない。まるでラーゼを無視するようだった。ラーゼは構えた剣を思い切りグランツに振り降ろす。

 ――だが、ラーゼの剣がグランツの体に纏われた光に触れるなり、まるで途方もなく固い金属とぶつかったかのように弾かれる。


「なっ―――!?」


 大地に降り立つと、遠くではグランツが再び進路をラーゼに向け猛進してきていた。次はグランツの突進を横に移動し躱すと、そのまま横に振り抜く。だがやはり、ラーゼの剣は通ることはなかった。


「どうなってんだよ!!」


『無駄だ!! アサルトチャージを発動したグランツに、いかなる攻撃も通じない!! これは王の進撃!! 王の進撃は、何者にも阻まれないぞ!!』


 グランツの機体は依然として黄金の光を放つ。光は槍を形成し、再びラーゼに向けられた―――


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