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砲雨

 ラーゼの剣とグランツの槍は激しく衝突する。甲高い金属音は周囲に響き、その衝撃はコックピットにまで届く。


「くあっ――!」


 あまりの圧力に、声が漏れる。弾かれた双方だが、一足先に動き出したのはグランツだった。


『ハアアアア!!』


 グランツは連続で槍を突く。ラーゼを後退させながらバスターソードで捌くが、辛うじて対処出来る状況だった。それほどグランツの突きの速度は早い。少しでも反応が遅れれば槍はラーゼの機体を捉えるだろう。見た目の重量感では考えられないほど、グランツの動きは俊敏だった。


「クソッ――!」


 僅かな隙を見て、足元にハンドガンを放射する。爆炎が立ち上ぼり、一時的に視界を遮る。その間にバスターソードを双剣に変える。それと同時に、グランツが爆炎を突き抜け突進をかける。


『この程度で止められると思うな!!』


 グランツは間合いに入るなり槍を突き出す。


「思ってねえよ!!」


 2本の刃を交差させ、向かって来る槍を下から持ち上げ軌道を逸らす。槍はラーゼの右肩を掠める。


(ここだ――!!)


 すかさず左の剣を横に振りグランツの胴体を狙う。しかし刃はグランツの巨大な楯に阻まれる。


「うおおおおお!!」


 それでも剣を交互に繰り出し、グランツの機体を狙う。しかし巨大な楯が幾重にも重なる斬撃を受け止め、黄金に傷を入れることは出来ない。


『無駄だ! グランツの楯の前に、君の剣は届かない!!』


 剣を受けたグランツは鋭い突きを繰り出す。しかしそれは読んでいた。ラーゼを前転しながらグランツの頭上に跳躍させる。その最中剣を一つに戻し、体の回転力を乗せ振り降ろす。だがグランツは楯を上に構え直し、大剣の一撃を防ぐ。弾かれた大剣が楯から僅かに離れた間に、グランツの槍の先端がラーゼに向けられた。


「チッ―――!!」


 グランツの楯を踏み台にして、ラーゼは後方に跳ぶ。それと同時にグランツの槍は上空に突き上げられる。狙いが外れたグランツだったが、すぐに視線をラーゼに移し楯を向けた。


『逃がすか!!』


 グランツが楯を構えると、楯の表面が両開きドアのように開かれる。そこには幾つもの穴があり、それに見覚えもある。


(あれは――!?)


 その穴は、ハンドガンの発射口によく似ている。つまりは―――


「マジかよ――!!」


 すぐにラーゼを左に走らせる。その直後、グランツの楯から大量のエネルギー弾が放射される。大量の弾丸はラーゼに迫る。走るラーゼの後方では次々と爆発が起こり続けていた。一発一発はハンドガンよりも威力が低いようだ。だがその砲撃の数は比べ物にならないほど多い。まるで雨のような弾丸は、ひたすらにラーゼ目がけ放たれる。

 走り抜けたラーゼは、大き目の建物の陰に身を屈める。グランツからの砲撃は建物を捉え撃ち続けられる。分厚い壁に覆われていたはずの建物は瞬く間にヒビが広がっていく。崩壊するのも間近だろう。


「琉斗どうすんの!? 建物壊れちゃうよ!?」


 耳元でシャルが焦りながら叫ぶ。


「分かってるから叫ぶんじゃねえ!!」


 しかしシャルの言う通り、このままじっとしていればいずれ建物は崩壊する。たちまち蜂の巣だろう。

 ――とその時、突然砲撃が止んだ。


「……止まった?」


 砲撃が止まれば、辺りに響いていた爆発音は消え去り静寂に包まれる。――いや、正確には静寂ではない。何か途轍もなく質量のあるモノが走り込むような、断続的な地響きが聞こえてくる。それは徐々に大きくなり―――


「―――ッ!! マズッ――!!」


 その音の正体に気付いた瞬間、ラーゼを上に飛ばせる。その刹那、倒壊寸前だった建物は槍を構え突進してきたグランツにより粉砕された。

 建物を形作っていた破片は吹き飛ばされ宙を舞う。上空を飛びながら、地上を通過するグランツに視線を送る。破片の隙間から見えたグランツはまるでスローモーションのように楯をラーゼに向け始めていた。


「またかよ!!」


 ラーゼが地に降り立つや、すぐに再び跳躍させる。グランツもまた地に降り立ったラーゼに向かいシールドガンを放射する。ラーゼはグランツを中心に放物線を描くように宙を舞う。ラーゼの後方には追うように空に放たれる大量のエネルギー弾。ラーゼは着地するなり再び駆け出す。立ち止まれば狙い撃ちされる。グランツも当然ラーゼに楯を向ける。グランツの周辺にあった建物は形を無くしていた。ラーゼはグランツの周囲を円を描くように回る。そして徐々に距離を狭めていく。


(この距離なら――!!)


 ある程度近付いたところで、一気にグランツに向け地を蹴る。弾丸のような速度でグランツに接近したラーゼは、大剣を横に振り抜いた。しかしグランツは槍を構え剣の斬撃を受け止める。


「―――ッ!?」


 グランツは槍を無造作に振り、再び構えを取った。ラーゼに向けた楯のカバーは閉じる。とりあえずは砲撃はしないようだ。ラーゼもまた剣を構え、グランツに正対する。


「くそ……やっぱ強いな……」


 これまでの攻防を振り返り、言葉が漏れてしまった。


「感心してる場合じゃないでしょ! どうするの!?」


「………」


 確かにそんな場合じゃないな。機体の性能やアーサーの操縦技術はさることながら、厄介なのはあの楯だ。圧倒的な放出量を誇るあの砲撃をまともに受けたら、例えラーゼでも無事じゃ済まないだろう。

 でも気になることもある。砲撃をしていた途中で攻撃をした瞬間、奴は楯ではなく突撃槍で受けた。つまりは、“受けれなかった”ということだろうな。


(砲撃中は脆いのかもしれないな。内部構造が剥き出しだし)


「ねえ琉斗! 聞いてるの!?」


「だああもう! ちゃんと考えてるから黙ってろ!!」


 俺の言葉に、シャルはようやく大人しくなる。


「……考えてるって……どうするの?」


「んなもん、決まってるだろ……!!」


 息を吸い込み、腹に力を入れる。目を見開き、目の前のグランツを睨み付けた。そんな俺を見たシャルは、気付いたようだ。


「……ねえ琉斗? 考えって、もしかして……」


「――突っ込むに決まってんだろ!!」


 一気にラーゼは駆け出す。踏み出す足に地面は抉れ、足元の瓦礫は宙に舞う。


「つまり何も考えてないってことでしょおおおお!!??」


 コックピットではシャルの絶叫が響き渡る。その声も聞き慣れた俺は、そのままラーゼをグランツに猛進させる。

 グランツは楯を構え、砲撃を一気に解放した―――


  

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