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春間近-M→K 接近

コチラの場面には一部R15程度の表現が含まれます。ご注意ください。


 栗石美晴〔くりいし みはる〕は一人、町内にある川べりの公園の土管の中で悶絶していた。

 思い出せば、思い出す分だけ妙な熱が上がる。だから、思い出したくはないのに……勝手に脳内が再生を繰り返すから恥ずかしさでいっぱいになる。

 そう、恥ずかしい。

 ただ、恥ずかしい。

 それだけ、なのが 大問題 だ。


 きっと、あの時、体は欲情してた。

 なんて。


(うっわあ! あたしって、あたしって……気持ちよかった、とか考えてねぇ? 実際、イヤじゃなかったんだよな? 相手、要だし。って、うぎゃぁぁぁあ!!)



 要を好きだと思ったのは……たぶん、あの時から。

『――オレ、こういう弱い者いじめ? みたいなの、すっげぇキライ!』

 いつもみたいに後先を考えずに突っ走って、勝てそうにない相手に喧嘩を売るのは自分でも無謀だと思う。それで怪我をしても仕方ないって諦めてた。

 学習能力がないんだから、だって……しょうがないだろ? 見て見ぬフリなんて、出来ないんだから!


『 僕の妹に何かしたら、タダじゃおかないよ? 』


 女の子みたいに扱われるのは 全然 慣れなかったし、好きじゃなかった。でも、本当は ちょっと 嬉しかった。

 自分の身は自分で守らないとダメだって知っていたから、強がって生きないと負けると歯を食いしばって踏ん張ってきた。

 男の子みたいに。

 初めてだったんだ。

 コイツになら負けてもいい、って思ったのは。

 女の子として守ってもらえるそんな 場所 があるって思えることが……嬉しかった。


 たとえ、それが要の「妹」という枠組みの中のものだとしても――。



「ああ、ダメだ。絶対、嘘だ……からかわれてる、そうにちがいねぇ!」

「何が?」

「あたしなんて好きになるはずねぇんだ……口悪いし、色気はねぇし、体だってスゴクねぇし……ぎゃっ!」

 一人、ブツブツと土管の中で口に出して列挙すれば、ハタと人の気配に気づいた。

 覗きこむ顔に見覚えがあって、さらにそれが今一番顔を合わせにくい相手だと知って美晴は慌てた。

「か、かなめ?」

(なんで、ココに……)

 逃走を考えた彼女の腰は土管の中で彼がいる側とは反対方向にずらされる。

 にっこりと笑って、彼は逃げ腰の美晴の腕を取った。

「捕まえた。なんか難しいこと考えすぎだよ? 美晴なんだから本能で感じればいいのに」

「なんだ、それ! あたしだって考える時は考えるんだよっ。悪かったなっ!!」

 キッと睨んで、美晴はええい、離せ! と彼に取られた腕を振った。

「悪くはないよ……でも」

 しょうがないな、と要は言って強く美晴の腕を引き寄せる。

「わっ!」

 その胸にぶつかって、美晴は固まった。

 ゾワリとする感触、生温かい吐息がなぶる耳たぶに神経が集中したのが分かった。

「俺、美晴が好きだ」

「………」

 そんなワケない、と言い聞かせる。

 本気にしたら、間違いなく深みにハマる……自信がある。

(あたしは 絶対 信じないぞ!)

「美晴、聞いてる?」

「………」

 応じれば負けると知っているから黙りこむと、相手もそれに気づいたようだった。

「ふーん、そう? なんだっけ? 口が悪くて色気がなくて体もスゴクない……から、そういう頑なな態度なの?」

 口に出そうになる叫びを何とか我慢して美晴は息を詰めた。

「わかった。じゃあ、証明してあげる」

(は? なにを?)

 彼女の腰を抱き寄せて、要が目を逸らせないほどの至近距離で真摯に告げた。


「口が悪くて、色気がなくて、体がスゴクなくても 全然 イケるってコトを、ね」


 唇が重なって、美晴は少し身じろいだものの動けなかった。

 土管の中で押し倒されて、割られた膝の間に彼の腰が滑りこむ。

 低い姿勢でそばにくるのは、ため息みたいな要の吐息だ。

「せっかく怖がらせるかと思って 昨夜は 気を遣ったのにね」

「ぎゃぁぁぁあ! 膝を持つな、膝をっ」

 大きく開かされたズボンの股越しに互いの下半身がグッと密着する。

 擦りつけるように、彼の腰がゆっくりと動いた。

「ひっ!」

 エロいっ!

 昨日のより、さらに具体的にエロいって!! この体勢っ。

「ホラ、判る? 俺が本気な証だよ」


 硬くて熱い何か(って、要の……なんだろうけど!)が 確かに 美晴の付け根の敏感なところを服越しに何度か押した。グイグイと。

 が。

(そ、そんな証明は いま いらねぇっ!)

 耳まで真っ赤になった彼女は、恥ずかしい声が喉から出そうになるのを必死に押しとどめて、彼を睨みつけた。




 土管から這いずるように出てくると、不機嫌な彼女は彼を怒ったように(いや、実際かなりのご立腹だ)睨んだ。


「要は……あ、あたしを好きって言うよりヤリたいだけ、なんじゃねぇの!」


 栗石美晴〔くりいし みはる〕は言い、栗石要〔くりいし かなめ〕は否定した。

「そんなことないよ。大体 したい だけなら それこそ 美晴は選ばないし、面倒でしょ?」

 グッと彼女は言葉に詰まり、頬を染める。

 確かに要の言う通りだと、思ったのだろう。

「そんな女と したい のか?」

「そうだよ。まだ、疑う気?」

 要がチロリと問うと、美晴は慌てて首を振り「証明」を また されてはたまらないと彼から飛び離れた。

「わ、わかった」

 コクコクと頷くけれど、本当に納得をしているのかは かなり 疑わしいと要は思う。

「じゃあ、美晴。早いうちに 最後 までしようか? いつがいい?」

 サラリとまだ午前中の日の高いうちにする話ではないな、と自覚しながら口にする。

 冗談ではなく、結構本気なのだけど……案の定、美晴は真っ赤になって「知らねぇ!」と本気には受け取らなかった。

「美晴」

「あぁ?」

 鬱陶しそうに要を見上げて、彼女は目を剥いた。


「――好きだよ」


 ゆっくりと待つほどの 時間 は二人には必要ない。美晴に考える余裕を与えるよりは、本能に訴えかけるほうが手っ取り早いし……たぶん、一番正確な答えを出すだろう。

 そして。

 要の答えは、決まってる。

(美晴、気持ちよさそうにしてたし……)

 と、先ほどの反応の良さに兄は確信して、頬を染める意地っ張りな妹に優しく微笑んでみせた。


次回、最終話になります。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

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