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卒業-M 罠か罠か

コチラの場面ではR15程度の性的表現(やや無理矢理)があります。ご注意ください。


 グシャリ、と栗石美晴〔くりいし みはる〕は手の中の受験票を握りつぶした。


「あった……」


 呆然と番号の羅列が続くそれを眺め、立ち尽くす。

 じわじわとせりあがる達成感と満足感に胸が高鳴る。

 唇からはくつくつとした笑いが洩れて、周囲にいる女の子たちが すこしずつ 離れた。

「ざまぁみろ、要。あたしは勝った! この勝負……高校受験、恐るるに足らずっ」

 桂林女子商業高校、ここいらの地域では省略して「桂女」と呼ばれる高校の校舎の前で美晴は立ち、フハハと見事なまでに目立った高笑いをしてみせた。




 そうして、喜び勇んで家に帰り、兄である栗石要〔くりいし かなめ〕に突きつけたのがつい先刻〔さっき〕のことだった……ハズだ。

「良かったね」

 と、彼は言った。

 美晴より一足早く湊西〔みなとにし〕高校に進路が決まった彼は余裕の表情で、少し悔しい。けれど、それを上回る興奮で彼女はまるで注意をしていなかった。

 いつもなら、彼の部屋には 絶対に (べつに意識してるワケじゃあねぇよ!)入らないのにたまたま彼が自室〔そこ〕にいて、しかもベッドに寝転んでいた(ん? なんでだ? ああ、本読んでたから?)から上がりこんで合格通知を目の前に差し出した。

「見ろ! あたしだってやれば合格すんだよ。ざまぁみろ!!」

 合格したからと言って頭が悪いのが劇的に変わるわけではないが、合格圏外だった高校に受かったという自信から美晴は要の前で胸を張った。

 どうだ! と言わんばかりの美晴に要は微笑んで「そうだね」と肯定してくれる。

「美晴はやれば出来る子だからね」

「かなめ……」

 柄にもなく、グッときた。

 要は美晴の受験勉強の際、冷徹な家庭教師だった。冷たく突き放して、一切の甘えを許さない。超スパルタのサディストだと何度罵ったかしれない。

 けれど、今は。

「俺は、知ってたよ。美晴は出来る子だって」

「要!」

 うるっときて、慌てて抱きつく。

 こうすれば泣き顔を見られる 屈辱 からは逃れられるからだった。

「美晴、泣いてる?」

「なっ、泣いてねぇ!」

 ギュウゥゥと腕に力をこめて、否定するとグルリと視界が回転してドサリと背中にやわらかな布団の感触がした。要にベッドへ押し倒されたのだ、と理解するのに美晴はかなりの時間を要して――そうして、その間にも事態はあらぬ方向に動いていた。

「 ひっ 」

 と、美晴は体が硬直した。

 首筋に生温かい息がかかるのは自分が抱きついたせいだと分かっているが、じゃあ、足の間にある感触はなんだ?

 合格発表を見に行ったあと、ということもあり彼女の服装は中学の制服の冬服だった。

 だから、下はスカートで家にいる時はジーパンスタイルが多い美晴には不可解な感覚が直に触れる。

 それが、人の指……要の指だと知るのに時間がかかる。

 いや。

 本当はすぐにわかった。けれど、そうだと頭が認めるまでに彼女の脳は恐慌状態に陥ったため的確に処理されなかった、と言うべきか。


(な、なんだこれ、なんだこれなんだこれっ!)


「ぎっ」

 その手がスカートの中の彼女の下着に達して、指先がツンと奥を押し上げる。

 ゾクン、と身が震えた。

(な、な、な)

「か、なめ。なに、やってんだ?」

 その間も指は足の付け根をなぞっている。

 変な感じだと、モゾモゾと動いて美晴の声は徐々に小さくなった。

「解からないの? 本当に? 男女がすることだよ、美晴の ココ に俺のを入れたい」

 トントンとノックするみたいに叩く。

「 ! 」

 ほ、保健体育のハナシ?!

(げぇぇぇ! ウソだ、うそだ、嘘だぁっ。冗談に決まってるっ)

 もがく美晴を要は難なく押さえ、耳元に囁いた。

「俺の家庭教師代は高いよ? 美晴」

「ば、バカ! やめろっ、その気になったらどうすんだっ!!」

「ぷっ、面白いこと言うね? 美晴、その気になっちゃうの?」

 望むトコだよ、と彼女の赤く染まった耳たぶを要の唇が甘噛みする。

「ち、ちがっう! そういう意味じゃねぇっ……ぅあん」

 ぐい、と下着を押し上げる指先が割れ目にねじ込まれて、美晴は自分の出した声に絶句した。

(ぎぃやぁぁぁぁ! なんだいまのっ、なんだいまのっ気色わりぃ)

「 可愛い 」

(ひぃぃぃ!)

 要の腕に抱かれ、美晴は正常な判断ができないまま震えるその身を小さく丸めて、女の子みたいに怯えてしまった。


次回、栗石兄妹、兄視点でも引き続きR15(やや強引に磨きがかかります)表現が含まれます。大丈夫な方だけ、引き続きお付き合いください。

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