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走る王子と悪役令嬢  作者: 南蛇井


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1/7

走る王子

王子アルバートは走ることが好きだった。


理由はない。

あったとしても、言葉になる前に置き去りにされた。


朝、城の鐘が鳴るより先に彼は走り出す。


石畳を踏み、城門を抜け、霧の残る草原へ。


国王が呼ぶ声も、大臣が差し出す書簡も、宰相の重たい忠告も、風の中でほどけて消えた。


ヒロインと呼ばれる少女、リディアは、何度も彼の背を追った。


恋という名の感情を胸に抱き、言葉を準備し、微笑みを整えた。


だが彼女の視界に映るのは、ただ遠ざかる背中だけだった。


振り向かない。立ち止まらない。


王子は彼女の存在を知らないのではなく、必要としていなかった。


悪役令嬢ディアナは、苛立ちを隠そうともせず、あらゆる妨害を試みた。


噂、策略、偶然を装った事故。 しかしそれらはすべて、走る王子の横をすり抜けていった。


彼は嫌がらせに気づかないのではない。


気づく前に、通り過ぎてしまうのだ。


王子が走る理由を、誰も知らない。


使命でも、逃避でも、鍛錬でもない。


ただ、走っている間だけ、世界が静かになる。


役割も、期待も、物語の筋書きも、呼吸のリズムに溶けて消える。


やがて城では囁かれる。


「王子は王になる気がないのではないか」 「そもそも、我々を見ていないのではないか」


それでも王子アルバートは走り続ける。


王冠の重さを知らぬまま、物語の中心から外れたまま。


ただひたすらに。


誰の声も聞かず、 誰の役にも応えず、 世界を追い越すように走り続ける。


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