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#8 初ピンチなんですけど?

 紫乃たちが助けた少女が目を覚ました。栗色の髪を肩ぐらいまで伸ばしている。服装は所々破けてはいて、ここに来る道中のどこかで引っかけでもしたのだろう。


「えっと……フリフリ様と騎士様?」

「いや本当になんなの?その呼び方」


 こてん、と首を傾けながら呼ぶ少女に呆れながら紫乃は返す。


「えっと、こちらは騎士様ですよね?女の方は珍しいけど」

「まあ格好はそうだね」

「ではこちらの方は?」

「いや、魔法少女でしょどう見ても……っておもったけどわかんないか」


 うーん、と唸る紫乃の言葉に、少女はぱちくりと瞬きした。


「魔法少女、様ですか……?」

「え、まあそうだけど。なにその様付け」

「お二人とも?」

「そうだね。僕も魔法少女だよ」


 紫乃とナイトを交互に見て、ぱぁっと目を輝かせる。


「で、ではあのスタフティたちを幾度も退けてきたというあの魔法少女様なのですね!?」

「う、うん。なんかめっちゃ食い気味じゃない???」

「何を言うのです、別世界からわざわざ私たちの世界を救いに来た人たちでしょう!?」


 この世界の人たちにとっては魔法少女は意外と人気なのだろうか、とは言ってもここら辺がスタフティに侵食されている以上あまり戦果を出せていないような気もするのに。紫乃は手を握られ、ぐいぐいと迫る少女を見ながら思案する。


「私を助けてくれたように、みんなも助けてくださるのですよね?」

「ああ、意識あったんだ」

「いえ。でも、私はだんだんとスタフティからの侵食を受けていたのだけは覚えています。今無事なのは助けてもらったからですよね?」

「なんか結構賢いなこの子」


 まだ手をぎゅっと握られながら、紫乃はそう言った。スタフティに侵食されると意識はなくなるのか、こちらを認識して襲っては来るのに。あった方が残酷か。


「で、君はどうしてここに来たの?」

「その、私はここからもう少し離れた場所にある洞窟のようなところで暮らしていたのですが、外の様子を見ようと外を出たときに近くに来ていたスタフティに追われまして、精一杯逃げているうちにここへ……」


 居住地が侵食されてる影響で、そういった洞窟などで人々は暮らしているのかもしれない。紫乃はぼんやりと考えた。

 魔法少女のことを信じているらしいし、そんな子を不幸な目に会わせるのも忍びないので、どうせだから助けてやるかと決心する。


「じゃあさ、一旦その元の洞窟に返してやりますか」

「え、また助けてくださるのですか!?」

「いやだって、私たちいないとここから帰れないでしょ。どう?ナイトさん」

「僕もそのつもりだよ。というよりも君もそういう気持ちがあるとおもわなかったけど」

「え、なに?心のない化け物だと思われてる???いやまあ他人のことはまあまあどうでもいいけどさ」

「冗談なのに本当にあってるみたいなのやめて???」


 ナイトと紫乃のやりとりに、少女はくすりと笑った。その笑顔も不思議と眩しく見える。


「お二人とも仲がよろしいのですね」

「いや、全然?」

「なんかそう言う気がしたよ。たしかに僕たち会って間もないけど」

「そう言えば、どうやって連れていくの?」

「相変わらず切り替え早いなあ君は。侵食を打ち消すみたいに、この子に力を流し続ければたぶん侵食されることはないと思うよ。だから、片方がその役割でもう片方が戦闘するとかね」

「さすが先輩だ、賢い」

「持ち上げ方が雑すぎる」


 魔法少女の力は侵食されている領域を元に戻すことができるが、流し続けることで侵食から守ることもできるらしい。一々、通っていく道全部力流していくのかな、と紫乃はパワープレイを考えていたので、さすがにそんなことしなくていいかと思い直した。


「じゃあ出発!」

「え、もうですか!?」

「うん、だってこのままここで休んでてもこの家いつまで侵食されないかわからないし」

「そうだね。どうせなら早い方がいいよ」


 ナイトと紫乃はスッと立ち上がる。慌てて少女も立ち上がった。少女を侵食から守るのはとりあえずナイトということになり、紫乃はマジカルサーチによる索敵をメインとして時に戦闘に備える形になった。


 外にでると、一気に彩りが消える。先ほど紫乃が侵食を打ち消した地面はそのままになっているが、それ以外は灰色なので少し目に悪い。


「そういえばその洞窟ってどこら辺かわかる?」

「ええと、道ならおおよそ」

「へえ、わかるんだ。すご」

「ええ。少し侵食されている領域について調べる機会があったので」

「ふーん、現地の人たちも調査してるんだ。ナイトさんってそこら辺の人と会ったことないの?」

「あるよ。でも、戦いに協力する以外はあまり交流がなかったかな」


 魔法少女としての目的にあまり現地の人間との交流は関係ないから、意外とそんなものなのかもしれない。


「そういえば、自己紹介とかしてないや。私は魔法少女ドリーム、らしいよ」

「いや、らしいって」

「他称だし。自称するのもなんかなって」

「まあいいか。僕は魔法少女ナイト、よろしくね」

「はい!ええと、私も名前を申してませんでした。私はソフィと申します。ただのソフィです」

「ふーん、よろしくソフィ」


 気の抜けたような返事を紫乃はする。まるで興味がなさそうだったので、ソフィは困惑したように目をぱちくりと瞬きした。


「ドリームの受け答えはだいたいこんなのだから気にしないでいいよ」

「え、何?なんかバカにされてる?私がいるから、敵の場所とかわかるんですからね!」

「便利だよね」

「対応が雑だ」


 はあ、とため息をする様は普通なのに、先ほどの返事のように全てが興味なさそうな表情を見せる紫乃に、ソフィは少し疑問に思ったが考えないようにした。


 そうして歩いていくうちに、たまにスタフティの影が見えるようになった。紫乃のお陰でそれらをうまいこと避けることはできているが、それでも遠くには見えてるのでそのうちエンカウントするかもしれない。


 ふと、ソフィの様子を確認すると少し青ざめていた。近くにスタフティが見えるのが恐ろしいのだろう。


「そういえば、ソフィは魔法少女にお熱だけど他の人ってどういう感じなの?」

「ええと、人によりけりでしょうか。私は、魔法少女様たちが何度も私たちを助けるために身を投じていることがわかっているので、尊敬を念が絶えませんが、役に立たないと唾棄すべき発現をしている方々も見受けられます」

「ふーん、そんなもんだよね」

「当事者の割にドライな感想がでるよね君は。実際は僕も、応援されたり雑に扱われたりとか色々だったよ。はやく世界を救ってくれって急かしてる人はたまにいたけど」

「許せません!勇者様や賢者様も憤慨なさるはずです!」


 ムッ、としてソフィは怒りを露にした。そこまで魔法少女に傾倒することも紫乃にはいまいちわからないので、曖昧に頷いておく。さっきまであっただろうスタフティへの恐怖はだいぶ薄れたらしい。


「っていうか、勇者様とか賢者様って誰?」

「この世界の実力者だ。三賢者と勇者、世界を守るために力をつけて様々な問題を解決したらしい。あの城にいるオレトロスの動きを封じてるのもその勇者と賢者だ」

「うわあっ!喋る猫!?」

「ああ、なんかたまに重要そうなこと言ってるだけだから気にしないで。なるほどそういう英雄みたいなのがいたお陰でこの世界がいきなりスタフティにやられるってのが防げたわけか」

「そうだな」

「いや、重要そうなことことを言うなら気にした方がよろしいのではないでしょうか!?」


 突然ひょっこりと出てきた黒猫にソフィは飛び上がった。そういえばこいつ、たまにどこにいってるかわからないけどそこら辺に隠れてるのか?と思いながら紫乃は話の内容を頭の中で整理した。


 勇者と三賢者、その四人によってあの城に封印されてるような状況らしい。そういえばオレトロスをはじめて見た時は光の鎖のようなものが見えた気がする。あれは彼らがやったのだろうか。


 どうせなら、その人たちも復活させて戦えれば楽そうなのにな、なんてのんきなことを考えていた。


 すると、発動していたマジカルサーチで一際大きな存在を捉えた。小型のスタフティと比べるとそこそこ大きい。小型のスタフティよりも人に近しいかたちをしている。


「ねえ、ナイトさん。なんかでかいのいるんだけど」

「でかいの?……わからないけど、それは気を付けた方がいいかもしれないね」

「なんで?もしかしてテリオンってやつかもしれないから?」

「君は緊張感がないなあ。たぶんそうじゃないけど、ちょっと厄介だろうから」

「あっやば……」


 その反応はこちらを見つけたようで、すぐさまこちらに迫ってきた。まだ距離はあると思ってと油断していたせいで、今までのスタフティに比べて尋常じゃないスピードでこちらに来るそれに、まだ紫乃は対応しきれない。


「ドリーム様!」

「……っ!」


 迂回か避けた方がいいか、なんて考える暇もなくそれは紫乃の目の前に躍り出た。2、3メートルはありそうな巨体のスタフティだった。全体的に装甲のような肌に覆われている。身体的特徴は他に変化がない。小型のスタフティが成長して大きくなった姿なのかもしれない。


 その巨体のスタフティの拳が紫乃を見つけた瞬間に振るわれる。近づいて間もなく迫る拳を避けようとするが、足の動きが鈍る。マジカルストライクを使用した疲労感がまだ残っているせいで避けられない。


 思わず紫乃は杖でそれを受け止める――が、拳が杖に触れた時にはもう紫乃の体は宙に浮いていた。力が強すぎて受け止めきれない。


 全身に衝撃が伝わる。ズキズキとした痛みが広がる。気がつけば地面に叩きつけられていたらしく、体が横たわっていた。


「いったぁ……」

「ドリーム、大丈夫!?」

「……はい、平気です。これ、強くないですか?」

「そうだね。これはギガントだ」

「はー、また新しい種類来た」

「ぎ、ギガント……」


 へたり、とソフィは地面に座り込んだ。顔が青白くなり、瞳も大きく開く。どくんどくん、と脈が早く波打つ。恐怖で身動きがとれなくなってしまったらしい。ソフィを守るために、ナイトも動けない。


 ズシズシ、と紫乃のそばに寄ってくる。またあれを食らうのは不味い。マジカルストライクはまだ撃てない。確かに、小型のスタフティを一掃するだけに撃つのはもったいなかったな、なんて考えながら杖を巨体のスタフティ――ギガントに向ける。


 杖から放たれた魔法の球はギガントに直撃するも、まるでダメージはない。あの装甲のような肌は相当固いらしい。


 再び、紫乃に向けて拳が振り下ろされた。ゴンッと大きく音が響く。

 それは、直撃したかのように見えた――が、地面をえぐるばかりでそこに紫乃はいなかった。


「"マジカルミラージュ"、セーフ!」


 紫乃の生み出した幻だった。その隙をついて、するりとなんとか紫乃はナイトの元まで復帰した。


「ナイトさん、あれどうするんですか?」

「戻ってきてくれてよかったよ。ソフィを連れたまま戦えないから」

「す、すみません……。足が動かなくて」


 声を震わせながら、申し訳なさそうにソフィは謝る。その頭にポンと手を置いて、ナイトは軽く撫でた。


「大丈夫、僕がなんとかするから。ドリーム、ソフィを一旦君に預けるよ」

「え、そういう感じ?」

「あれは何回か倒したことがあるから」

「頼りになるなあ」


 紫乃の軽口にくすくすと笑いながら、ナイトは剣を構えた。相当余裕はあるらしい。


「いくよ――」


 ギガントもそれに気付き、ナイトの方へとズシズシと歩き始める。紫乃は今気付いたが、最初に迫ってきた時と比べて速度はない。あれだけ早く動けるのは一瞬だけかもしれない。


 ナイトの剣がバチバチ、と火花を散らした。新しい魔法だろうか。いや、ナイトのノーマルマジックはもう四種類聞いたはずだ。なら、これはきっと――


「――"マジカルストライク"」

「うわいきなりか」


 剣に稲妻が走った。雷撃を纏いながら、ナイトはギガントへと向かっていく。振るわれる拳を雷撃を纏った剣で切り裂いた。手首から先が塵のように崩れて消える。


 ナイトは踏み込み、ジャンプと共にギガントの腹部へと深々と剣が刺さる。激しい稲妻が走る。


 剣から放たれる雷撃に内側から放たれて、ギガントごと包み込んだ。目映い光と共にギガントは消滅し、そこには何も残らなかった。


 マジカルストライクの余波でその一帯の侵食が打ち消されて、ナイトの立っている場所から彩りが広がっていく。


「ナイトさんの活躍シーンとかあるんだ」

「現役の時よりも威力が落ちたかな」


 意外とあっさりと終わってしまったので、ポツリと紫乃は言葉を漏らすがナイトは慣れたように返した。

・ギガント

 巨体のスタフティ。おおよそ2~3メートルの大きさで、初速だけは早いパワータイプ。魔法少女であるためドリームはあの程度のダメージで済んでいるが、本来ならその攻撃を受け止めきれるはずがない。

 純粋に戦闘タイプのスタフティであり、これがいるだけで人間の生存率ががくんと下がる。

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