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#7 鬱展開はノーセンキュー!

 スタフティに侵食されかけている少女が虚ろな目を紫乃たちに向ける。グッと踏み込んでから、俊敏に飛び込んできた。よく見れば、足の先の方も不自然に大きくなり灰色化してる。


「なるほど、見えた人影がすぐに消えたのはこの俊敏さでどっかに言ってたんだ」

「言ってる場合!?」


 呑気に発言する紫乃を庇うようにナイトが前に出る。少女の手から繰り出される突きをナイトは盾で受け止めた。

 紫乃は杖を握りしめる。ここで攻撃すれば、すぐに倒せるだろうが、まだ人間の部位を残している。助かるかはわからないが、それでも倒すのを躊躇してしまう。


「ナイトさん、これ倒したらダメですよね」

「君ってそんな残酷なやつだっけ!?ちょっと手伝って!助けられるから!」


 少女の攻撃を受け止めつつ、ナイトはそう言う。


 助けられる、その言葉を聞いてホッとした。さすがに、人の体が残ったものを倒す気にはならなかった。


「で、どうしたらいいですか?」

「ちょっと待ってね。"マジカルショック"」


 ナイトは盾で軽く少女を叩いた。少女の体が痙攣して、崩れ落ちる。


「こっちに来て、地面に力を流して!」

「地面に力を流す……?」

「魔法少女の力がスタフティ特攻って言うけど、正確にはスタフティの力を打ち消すんだ。だから、スタフティの侵食も打ち消せる」


 侵食された領域の修復ができると前に言っていたのはそういうことか、と紫乃は納得しながらナイトの元へ駆けつけた。地面に手を当てる。体の内側から力を流すようなイメージで。


「これで……どうですか!?」


 無彩色の世界に、一気に彩りが戻る。紫乃を中心として、灰色が消え失せていく。


「ありがとう。侵食された領域だと、この子もうまく治せるかわからないからさ」

「そういうもんなんですか?」

「治っても、普通の人にはこの場所は有毒だから」


 そう言いながら、ナイトは少女に手を当てる。肥大化した手を掴んだ。ヒビが入り、ポロポロと灰色が崩れていき、中から手が見えた。顔を半分覆っていた灰色の部分など、体のすべての灰色がすべて消滅して、普通の少女がそこにいた。


「治った、すご……」

「完全に侵食したら、助けられなかったから危なかったよ」


 ナイトは少女を一度背負う。そのまま置いておくわけにもいかない。


「ここら辺の家でも借りるっての、なしですか?」

「いいね、それ」


 ちょうど今、紫乃たちがいるのは人が昔住んでたであろう居住地だ。家が数個あり、井戸や薪を運ぶような小屋など、様々な建造物がそこにあった。


 その中のひとつに紫乃は手を当てる。みるみるうちに家は色彩を取り戻していく。中を見ると、灰色は見えない。内側もちゃんとスタフティの侵食を消滅させられたらしい。


「一旦ここで休むってことで」

「そうだね。とはいっても、またスタフティがきたら侵食されてしまうからそんなに安全圏でもないんだけど」

「うわーめんどいなあ本当に」 


 はあ、と大きく紫乃はため息をつく。ここら辺一帯の侵食をすべて消滅させられれば、まだ安全かもしれないが、それをやるまでにとんでもない力を使うし、スタフティに襲撃されるかもしれない。


 この世界を救うのもまあまあ大変だな、と紫乃は思い直した。敵を倒すだけなら簡単なのに、と。


「この子は大丈夫そうなの?」

「眠ってるだけだと思うよ。回復系の魔法でもあればよかったんだけど」

「そういやナイトさんって他の魔法どんなのなんですか?」

「さっきも見せた相手の動きを止めるマジカルショックと、甲高い音を鳴らすマジカルハウリングだね」

「へー、意外とナイトさんも妨害系のなんだ」


 紫乃も二種類は相手の妨害をする魔法を持っている。自分と意外と変わらないかもしれない、なんてぼんやりと考える。


「そういえばナイトさんって今どういう状態なんです?」

「え、君が言う???僕は勝手に君に実体化されたんだけど」

「ドリームを通して実体化しているのだろう」


 ひょっこりと黒猫が姿を表した。


「私を通す?なんか、マジカルメモリーも魔法少女として認識されてるっぽいから、コネクト使えるかなーって適当にやっただけなんだけど」

「それ思い付いたからって戦闘中にやる???」

「マジカルメモリーであるナイトがコネクトによってドリームと接続されて、ドリームの力として実体化しているのだろう」

「ごめん、どういうこと?」

「マジカルメモリーはゲームソフトのようなものだ。それをゲーム本体で動かす必要がある。そのゲーム本体がドリームだ」

「うわ、なんかそれっぽい説明来た」

「そういう仕組みだったんだ……」


 本来のマジカルメモリーが吸収される仕組みも、ソフトとしてダウンロードされるようなものなのか、と紫乃は思案する。どちらにせよ、いまいちわからないが、ナイトが実体化していることは確かなので深く考えないことにした。


「さっき言ってた回復系の魔法を持ってる魔法少女っているんですか?」

「聞いた話によると、僕の前の魔法少女はそういう魔法を使ってたらしい。サポート系だったって」

「え、一人でこっちに放り出されるのにサポート系の人私以外にもいたんだ」

「君はまだいいんじゃない?」

「じゃあその人はよくなくない!?」


 と、ナイトと話し合っていると、呻くような声がした。少女が身じろぎをする。そろそろ起きるらしい。

 ゆっくりと目を見開いていく。


「う、うぅ……え、フリフリ?」

「どういう呼び方???」


 紫乃を見た少女の第一声に、思わず困惑したような声が出た。ナイトは苦笑した。

・スタフティへの特攻能力

 魔法少女はスタフティを倒すための存在としてフォーマットされているため、スタフティの力を打ち消す力を持っている。そのため攻撃はスタフティに大きなダメージを与え、スタフティから与えられるダメージも少なくなる。

 魔法少女はその力を流し込むことで、スタフティからの侵食を打ち消すことも可能。

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