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#5 敵の種類とか無駄に用意するじゃん

 相も変わらず灰色の風景の中、紫乃とナイト、そして黒猫は移動していた。


「ここら辺ってどこ歩いても灰色なんだ」

「そうだね。あれが見えるってことは侵食されてる領域の中でもまあまあ奥の方だよ。人とはまだ会えないかな」


 ナイトは、ラスボスらしきスタフティを指差して言った。


 とりあえず、ナイトの現状はスペシャルマジック、コネクトの影響で一気にマジカルメモリーがくっついたせいであろうという紫乃の仮説が正しいんじゃないか?ということになっている。


「本来は、マジカルメモリーが完全に集まる前に魔法少女に吸収されるが、吸収されるよりも前にマジカルメモリーがすべて集まってしまうと、こうやって魔法少女の記憶が再現されてしまうのかもしれない」


 と、黒猫もそれらしいことを言っていた。正直よくわからない。


「でも君ってさ、マジカルメモリーを集めるのにはとても適した魔法少女なんだから、期待してもいいのかもね」


 なんて言ってナイトは微笑む。恐らくだが、マジカルメモリーとして紫乃に吸収する方法は現状なくても、そのうちなんとかなるのだろうと考えているんだろう。


「なんか、ナイトさん側からこう頑張って私に力与えるとかできないの?」

「できるのかな。たぶん無理な気がするよ。せめて触れたらできるかもしれないけど」

「ふーん、じゃあパワーアップはまだお預けか。そういや、ナイトさん含めて魔法少女ってあの城のでかいのじゃないのに負けたんですよね?どういうやつに負けたの?」

「君はめちゃくちゃストレートに聞くなあ」


 ナイトは紫乃の質問に苦笑した。悪い気はしてないらしい。


「僕が負けたのは、テリオンってやつだけど」

「て、てりおん?おい、黒猫知ってる?」

「まだ来たばっかりなのだから知らなくてもいいだろう。魔法少女を倒すほどの強さの個体をテリオンと呼ぶ」

「うわ、情報出し渋って来るタイプの味方ポジやめろ」

「あれ、もしかしてスタフティの種類とかはあんまり知らない?」

「はい!」

「なんで今無駄に元気よく答えたの???スタフティには何種類かいるんだよ」

「ふーん、そういうものか」


 紫乃は気の抜けたように返事した。敵のパターンがラスボスか雑魚だけということは確かになさそうだしそんなもんか、となんとなく納得する。


「スタフティには、たまに魔法少女を倒しうるものもいるってこと」

「そういうのに負けたんだ」

「君は負けないようにね」


 紫乃の挑発的な言葉にも慣れたのか、クスッとナイトは笑った。


 テリオン、それがナイトを倒したスタフティの名称。


 自分もいずれ、その個体に会うのだろうか。紫乃はぼんやり考えた。


「で、私たちってこれからどうするんですか?」

「どうする予定だったの?」

「マジカルメモリーで強化するぞ!って話のノリでしたけど???」

「うん、強化できなかったからって逆ギレやめてね?」

「強化できてないからどうするんだって言ってるんですけど???」

「まだ逆ギレするんだね……。とりあえず、人がいるところでも目指してみたら?ここはさ、あまりにも中心に近いから」

「うーん、確かに」


 このまま目的もなくぶらつくのもよくないか、と紫乃は思い、ナイトの提案に承諾した。


「スタフティに侵食されてる領域ってさ、スタフティが沸くんだよね」

「え、沸く?」

「そうだな。その領域では定期的にスタフティが自動で生成される」

「急に重要なこと言い出してきたなこの黒猫。ゲームみたいに言うな」

「まあ確かに、もうちょっと情報だしてもいいのに雑だよね」


 ナイトも紫乃の言葉に賛同する。でも、黒猫はそれには答えない。沈黙したままの黒猫に再びナイトは話しかけた。


「僕はさ、今回で終わらせるつもりだと思ってたんだよ。マジカルメモリーだって集められるタイプなんだし。君たちだってそのつもりだよね?」

「……」


 意味深長に含みのある笑みを浮かべて、言葉を投げ掛けるナイトに黒猫は再び沈黙で返した。


「え、何???そういう、私以外わかってる系のやつやめてくれません???」

「まあ、それはそのうちね」

「うわ、伏線にしやがった!」


 悪態をつきつつも、そのうちわかるならいいか、と雑に紫乃は考えることにした。その紫乃にふと思い出したように、ナイトは話しかけた。


「そういえば、君はなんで魔法少女になったの?」

「え、こういうのって成り行きでしょ」

「うわ、君は雑だね」

「じゃあナイトさんはなんなんですか?成り行きじゃなくて紀之のりゆきですか?」

「何を言ってるの???まあ、僕も勢いで言ったところはあったけど……でもそうだね、きっと自分で守れるものがあるなら守りたかったんだと思うよ」


 照れ臭そうにナイトは言う。その言葉にきっと嘘偽りはないだろう。ちゃんと、心根が綺麗な人なんだな、と紫乃は感心した。紫乃に雑に扱われても文句は言わないところとかも含めて。突っ込みはするけれども。


「私ももうちょっとちゃんと言うと、そっちの方が面白いと思ったからです」

「やっぱり君ってさ、雑じゃない?」

「なにおう!」


 間髪いれずにマジカルフラッシュによる強力な光がナイト目掛けて放たれた。転げ回るナイトの悲鳴が辺りに響いた。

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