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#9 ソフィ

 戦う担当をナイトに変更し、紫乃はソフィの手を握りながらマジカルサーチでの索敵を続ける。


 ギガントから受けたダメージがまだ残っていて、所々ズキズキと痛む。握った先にある手がぎゅっと握られている。心配されてるのもなんか癪だな、と思い紫乃は余裕そうに振る舞うことにした。


「なんかギガントってやつ強くないですか?めっちゃ痛いんですけど~」

「そうだね。一応、マジカルストライクなしでも勝てたと思うけど、あんまりゆっくりはしてられなさそうだったから」

「うわ、余裕アピじゃん。雑に勝てるのありかよ」

「ギカントは、魔法少女様たちでもなければ倒せないと思うのですが……」

「そういうもんなの?」

「はい、その……あれが出るだけで全滅した村もあるとか」


 手から確かに震えが伝わる。ギカント関連で、ソフィは嫌なことがあったのかもしれない。というか、スタフティ関連は嫌なことしかないだろう。

 思い返してみても、ギカントは強かった。紫乃の通常攻撃もろくに通用していなかった。マジカルロッドでの攻撃の際、力を込めて大きめの魔法の球を使えば通用するかもしれないが。


「ってかナイトさんいなかったら、マジスト使い終わってたらあれに詰まされてたんじゃない???」

「だから今度から慎重に使おうね」

「そういうのはさ、あらかじめ言っておいてもらわないと困りますよ」

「次から気をつけてね」

「ガチの圧じゃん」


 なんて、言いながら移動してるうちに暗くなってきた。辺りを見渡すと一応山小屋のようなものが見つかる。居住地を抜けてまた、山に戻ってきてしまったので、仕方なくここで休憩することにした。家の侵食を剥がして、家に入る。


「ただいまー!」

「自分の家だと主張してるの???」

「緊急時ですから……」


 少し、元気のないソフィが気になるが気にせずに紫乃は明かりを灯した。



 日が暮れる前に帰れるとは思ってなかったが、ちょうどいいところに家があってよかった。私――ソフィは、灯された明かりを見つめる。


 隣にいるナイト様は、疲れたようにぐったりとしている。一日中気を張り続けたせいでしょう。

 対するドリーム様は、余裕綽々とでも言わんばかりにいつも通りです。先ほどまで私を守ってくださったのに、疲れないのでしょうか。


 私も疲れました。座り込んで力を抜きます。それにしても、魔法少女様たちと会えるなんてとても幸運です。今まで、十数人ほどいらっしゃったらしいですが、会ったことある人も希です。何せ、スタフティとずっと戦闘を繰り広げているのですから。


 見たところ、ドリーム様はこちらに来たばかりのようでした。三賢者様や勇者様を知らないのは別世界からいらっしゃったので当然かもしれませんが、スタフティなどに対してもあまり知らないようでしたから。

 ナイト様はある程度知っているようで、こちらでもある程度活躍されているのでしょう。確か、騎士様のような魔法少女様がいらっしゃるという話を聞いたことがあります。数ヵ月前に行方不明になったとか。それがおそらくナイト様でしょう。


 魔法少女様がお二人同時に存在する、というのも聞いたことがないのでこれは本当に異例の事態なのかもしれません。


 じっと考えていると、生きているという実感が込み上げてきます。こんなところを普通彷徨っていれば死にます。みんな知っていることです。おそらく、家族からも死んでいると考えられているかもしれません。


 私には、親はもういません。スタフティとのごたごたが始まってからすぐ、外に食料などの調達に出掛けて行方不明になりました。そのときはあまりに実感がなく、涙も出ませんでした。残されたのは私と弟二人、私は弟たちを守らねばなりません。


 それも、スタフティに侵食されたときはもうダメだと思いました。一度侵食されれば助かる見込みもありません。だから、こちらの方へずっと走っていつの間にか魔法少女様たちの元へ進んでしまったようでした。逆にそれがよかったのはなんともな話ではありますが。


「ソフィ、そろそろ寝る?」


 ナイト様が声をかけてくれます。私が疲れていることを察しているのでしょう。とはいってもまだ食事などはとっていません。魔法少女様たちはなにか食べるのでしょうか。

 でも、お腹もあまり空いていません。疲れすぎてわからないのかもしれないですが。


「そうさせていただきます」


 なので、休むことにしました。家の中にある布団を借りて、横になります。ナイト様も壁に持たれて休もうとしているようでした。気づけば、剣も盾も持っていません。仕舞えるのですね。


 ナイト様は、優しい方です。私を気づかってくれることやドリーム様のこともずっと気にしているようでした。ただ、時々その瞳に寂しさのようなものを感じるのは不思議です。しっかりとしているのも強がりのようなところがあるのかもしれません。


 対して、ドリーム様は不思議な方です。ふざけているような振る舞いをされているのに、芯はちゃんとしているような印象を受けます。

 ナイト様に軽口を叩いている時や、状況に文句を言っている時もその本心を悟らせていないような壁を感じます。自分自身のことを真剣に考えていなさそうなのに、私のことは本気で心配しているようにも見えます。自分のことはどうでもいいような方でしょうか。たまに、私のことも適当に扱ってそうなのでわからなくなります。


 ドリーム様を一言で表すなら"適当"でしょうか。ナイト様なら"誠実"でしょうが。

 ナイト様はいい人ですが、ドリーム様は悪い人ではない、という感じです。


 そういえば、魔法少女様の姿でもドリーム様はフリフリの格好をしていますが、これはドリーム様たちの世界ではかなりスタンダードな魔法少女の姿なのだそうです。

 他の魔法少女様方は、一目でわかるぐらい奇抜な方が多いのと話を聞いたことがありますが、こういった格好の方はいないので、逆に別世界で言えばおかしな格好の魔法少女、となるのでしょうか。


「ソフィ、まだ起きてる?」


 ドリーム様の声がします。目蓋が重くなって、返事をしようとするもののうまくいきません。


「寝たの?私も寝ようかな」


 気の抜けた声がします。ドリーム様の声は、たまにこういう風な適当そうな言い方をします。このときは本当に適当なのかもしれません。


 私はこの残酷な世界で希望を持つのがとてもじゃないができませんでした。三賢者様も勇者様ももういません。

 なので、きっと魔法少女様に縋ってしまうのでしょう。


 でも、本物を見た後ならそれもいいと思いました。不思議な方々ですがきっと、世界を救ってくれるような気がしたのです。


 私はそう思いながら意識を手放しました。

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