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意味が分かると、分からないと怖い話【体験談+】  作者: 緑川
分かると怖い話

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9/9

宝くじ/イヤホン

 宝くじ


 身を削って夢を買うのが宝くじなら、作り手側は将来を見据える悪魔の化身とも呼べる逸材だろう。


 ともあれ、大当たりの前段階に善行を積んで周りともwin-winな関係を築けるのには非常に大賛成だ。


 最終的には自分の選択な訳で、買う者全てを愚者と揶揄し、下に見るのはそれこそ阿呆として明白。


 まぁ火の車の家計に油を注ぐような真似をする家の謎に運に自信のある母の爆買いには甚だ疑問だ。


 何方も極端、関わりたくないのは皆共通だろう。


 身内関係では高額当選など決して目の当たりにも出来ないと知ってのことなら尚の事、狂気的だよ。


 ましてや、一万円分も注ぎ込むなど言語道断ッ!


 どんな教育を受ければ――こう育つのだろうか。


 昔から保険やら要らないものばっかりに金を使って。


 両親への愛と我が身に消え掛かる良心の限界が上回る前に怒りのボルテージは程々に冷ました上で、誰よりも早く当選発表日の番号の照合に突っ走る。


 節分だのどうだののやつで還元が三桁に収まるなんて惨事を迎えれば豆では到底、太刀打ち出来ぬ鬼が内側から暴れ回ることは言うまでもないだろう。


 驚くべきことに開封の儀は中々に甘美なもので、一等へとバラの十枚が繰り上がっていく姿にはついついハマってしまう人々の気持ちに共感を覚えた。


 そんな期待を最悪な方向で裏切られ、昨今、ネットが流行問わずに白熱する世の中でも一等を自慢する承認欲求と感情の爆発の行く先にはならない大変不思議な光景に様々な疑問が浮かび上がりつつも、全ての番号札をある程度、頭に叩き込み、目を通す。


 一等、組み違い、前後。などなども安定のハズレ続き。予想通りでため息も止まらぬまま走り続け、一気に額の下がった百万の数字の羅列をぼーっと、それも流し見で終えれば、ん? 終え、終えれば。


 一枚、当選が確定した。


 まごうことなき番号に再度、再三目を泳がせて。


 思わずガッツポーズを禁じ得ず、一人熱く興奮冷めやらぬ感情の拠り所を奇しくも購入者にぶつけると慌てて何処かへ報告しに向かって行ったのだった。


 いやー当たるのか。


 三等以降なら庶民にも。


 変な感動まで湧き上がり、下手に周囲に振り撒きそうになる心をふと諫め、通常業務(学校の課題)に取り掛かった。


 それから数日、やけに親と並行して電話通知の増えたスマホの電源を切って登校すれば、親繋がりの絶妙に関係の浅い、友人紛いの同級生と出会した。


 まさか、言っていないよな。


 そんな杞憂を肩に添えて、例の一件には触れぬように将来有望な貧乏人同士の社交辞令を済ませて、全てに糸を縫って引き換え日を待ち焦がれていた。


 そして、訪れた。


 当日、母の護衛含めて軽い朝食で腹を満たして、朝早くに家を出んと玄関のドアノブを掛ける間際。


 一通の非通知が。


 当たり前だが、今時、そんなもの出る訳もなく、久々に貯めに溜めておいた連絡の山々を見渡した。


 その中には彼奴の姿も。


 随分、絡まずにいたから、正しく返すのも酷く面倒で既読だけ済ませて、後回しにすることにした。


 今度、遊びに行くだのなんだの……ウザいのを。


 ずっと無視して。


 遂に、光の先へ足を踏み出した。


 時、真っ黒な人影が俺を迎えた。


 もしかしたら俺が一番、浮かれていたのかもしれない。なにか、特別な存在にでもなった気持ちで。


 自惚れだ。


 意識が遠のくとともにサイレン音が近づいて――次に目を覚ましたのは見知らぬ天井、病室だった。


 起床早々、扉が開かれ、顔に汗を滲ませる親が。

 

 無事な俺の姿を前に。


「……」


 は、こ、の人はとても残念そうな顔をしていた。




 イヤホン


 不眠症が世間で話題に上がる中、こっちは安眠を貪り、悩みの種となることは今後一切ないだろう。


 それもこれも全部、真夜中に漂う雑音さえ拒んでくれるイヤホンのお陰だ。感謝してもしきれない。


 本日もご恒例ながらに高々数日の飯代を補える賃金の為に、残業に心身共に破壊寸前までコキ使い、空っぽな骸の状態で命からがら風呂で身を清め――幾千万年もの時を掛けて、辿り着いたゴールライン。


 ふかふかなベットに飛び込んだ。


 当然、枕元の例の品も忘れずに耳に強く嵌めて。


 ゆったりと何人たりとも邪魔立てさせない、至福の時間を満喫していれば……自然と眠りに落ちた。


 明日もきっと、良い朝を迎えるのだと安心して。


 目が覚めた。


 覚醒した脳が真っ先に感じたのは耳への違和感。


 だった。

突然、音が聞こえなくなったのだから無理もない。どうせ、たまーに見る変な夢の続きだろう。


 にしても、詰まりまであるとは、嫌に現実味の溢れた狂気的な瞬間だ。最近、嫌な事があった覚えなどないのだが、なんだか生命線が途切れた感じだ。


 手っ取り早く、耳たぶでも引っ張って体を起こそうと手を伸ばした先にあったのは無機物の何かで、いきなりザーザーと耳の中から鼓膜に響き渡った。


 それ以来、もう付けられない。

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