芽/染める
芽
妻が趣味で始めた家庭菜園。
妊娠して早々に叩きつけた育休が却って退屈な時間を生んでしまったそうで、急に気晴らしに始めたものの、出産間近で間引く工程となってしまった。
範囲も小規模でかなりの重労働とは行かないが、杞憂が拭えない以上――無理をさせる訳にも行かず、休みに纏めてやってしまうなどの近況報告を含む、肝心なアドバイスを最も頼りになる親友に尋ねた。
不安が勝り、誤ってビデオを通話にするほどに。
幾つかの忠告の中で淡々とした口調で優しく告ぐ。
焦るな、冷静に。
と。
そして、無事に迎えた出産当日。
産婦人科に同席し、愛しき我が子とのご対面だ。
あぁ。
ほんとうに。
よく、面影が似ている。
ホントそっくりだ。
しかし、残念ながらもう、この子とはお別れだ。
やり残したことがあるから、ね。……バイバイ。
とても小さな手は、一瞬で指から離れていった。
今日、俺は芽を摘んだ。
染める
母さんも父さんも、祖父母も昔の人間だ。
実際、俺も英才教育の賜物で積極的にそういったことには避けてくるようにしてきたが、今日――いよいよ今までの鎖を断ち切り、英断を決め込んだ。
最初の最初だから美容院に行こうとも思ったが、明日、彼女とのデートで見せたいサプライズイベント直前に最悪な呼応する形で、不運にも風も激しい雷雨で今日の今日、外に出るのは厳しそうだ。仮に行けどもやっている可能性は限りなく低いだろう。
挑戦するなら今日しかない、風呂場で初体験へ。
母さんの長年の慎重具合が移ったのか、数十回と見終えていざ、必要道具とともに手筈通りに進んだ。
多分、上手くいった。
次の日、染まった。
そして、鏡を見るのを終えて慌てて外へ出た。




