厚着/時計
厚着
巡る四季で一貫して厚着で登校する、自分で言うのもなんだけど、とても仲の良い友達がいました。
彼とは、互いの誕生日を祝い合うくらいだったのですが、お願いに近い複数のルールがありました。
一つは口癖に等しい家に来て欲しくない。二番目は学校問わずに着替え中など体を見てはならない。
そして、最後は親友の新たなる歳を共に迎える日、どんな理由を以ってしても家に訪れてはならない。
流石の鈍感な自分でもハブられているのではと、何度もしつこく連絡を入れてしまいそうな内容に、全幅の信頼を含んだ言い付けと自らを誤魔化して。
大人しく守り、無事、次の日は登校してくれた。
訳を聞こうと一目散に少し変わった後ろ姿へ、今の季節にピッタリな相性の服装に加えて天真爛漫な立ち居振る舞いにみんなからの注目を掻っ攫った。
厚着を捨て、最高にカッコいい自分らしさを持って。
それをよく思わなかったのか某クラスの有名人が逆上し、「知ってるんだぞ、お前の親は」の一言が、好奇心と不思議に満ち溢れた空気を一気に変えた。
そして、授業前、様変わりのBeforeAfterを遂げた親友は、妙に雲行きの怪しい先生に呼び出された。
強引に連れて行かれる時、僕の方に振り返って、
「一緒に桜を見に行こう」
そう一方的な誓いを立てられ、条件反射で頷いた。
けれど、もう何回も散ってしまった。
この光景はまだ一人でしか、見れていない。
時計
今、ある友人がフリマアプリで無双している。
昔から小遣い稼ぎで様々な物に手を出しては直ぐに辞める――諦めの速さを周囲に知らしめていた。
それにもかかわらず、何を売るにも面倒な工程と、他者との揉め事が避けては通れない道に首を突っ込み、どの職よりも手に付き、様になっているとは。
正直、自分が一番、驚かされている。
金の貸し借りに疎い一面から方々に怪しい話の絶えぬ人脈を広げ、旧友との仲を蔑ろにするのかと、落胆続きに縁切りを余儀なくする者たちが増える中、目が眩んだのか友の成長に喜びを隠せない知り合いが度々、自宅へ招いたなどの報告を耳にしていた。
しかし、朗報は此処で幕を閉じることに。
何やら彼等は共通して私物を紛失していると云う。
それも、高価な物ばかり。
そして、本日未明、気さくな挨拶から始まった、我が家への突然の訪問に若干の戸惑いを隠せずにいながらも、ある程度のもてなしをして迎え入れた。
話題は我が家の物で持ちきり。
中でも特段、気に入られたのは、腕に付けている今はもう何処にも売られていない時計の話だった。
「もう壊れているんだろう」との指摘に、強く返す。
つもりだったのが、普段酒を飲まない下戸体質が仇なし、早くも酔い潰れ、眠りに落ちてしまった。
これだけは慣れない二日酔いに悩ませながらも、早朝の太陽の神々しさに感謝して時間に目をやる。
時計に。
腕に。
肌身離さず身に付けていた大切な祖母の形見に。
無い。
此処に在る筈の物が。
見当たらない。
部屋中、探し回っても。
結局、幾ら時間を割いても消えた腕時計は見つからず、例の友人の付き合いで高級焼肉屋に向かった。
偶然。か、似た時計を身に付けていた。
失礼ながら不信感を覚え、盗人のように覗けば針の不格好な回り方を篤と目に焼き付けてしまった。
今日は奢りだと云う。
死ぬほど食べてくれ。
もう時期、臨時収入が入るから。
お前にも、言わなければならないことがある。
俺は最後に来て欲しい場所があると言った。
なんだとの疑問に、ただ来てみてからのお楽しみだ。
祖母の教えで今日一番の盛り上がりだ。と、相手を焚き付けて。まんまと俺の道に乗っかってきた。
針はやがて止まるだろう。
そう遠くないうちに。




