怠惰:目覚め無き熊
どんな恐ろしい獣でも、目覚めぬならば飾りと同じ。
願われ、造られ、座らされ。
結い上げられた上等な椅子。
全ては無に帰し、意図せぬ糸と。
どんなに才能があっても、どんなに秀でたものを持っていたとしても、どんなに恐ろしい性質を秘めていたとしても、それを産まれた時から全て、全て、縛り付けていたとしたら。
大きな身体も、鋭い牙も、爪も、縛り付けて。
それが、彼女の"家"のためとありました。
彼女の家は、まあ、少々古風というか。保守的というか。
女は家を守るべきものだという思考が存在しておりました。
長男を遵守し、長女は家へ。
学も無くて良い。家の女として有れと。
しかし、その遵守されたであろう兄は気付けば家から居なくなっており、彼女の友はおりませんでした。
そういえば、下に誰かいたような気が。
物心ついた時からですし、もうあまり記憶もないのです。
あまり興味も持てなかったので。
ただ、いつも言われておりましたから、大切に、大切に扱うようにと。
弱く、奇い出て、崩れた妹を。
しゃんと見た時、可哀想だと。
喚く彼女を、哀れみました。
奇跡と謳って繋ぎ止めた娘を、今は互いに押し付けあって。
硝子の割れる音が何処かからするのです。
でもあまり、よく、わかりません。
ただ、叫ぶ妹、妹を見ました。
可哀想にと思うことすら、今更なんだと言うのでしょうか。
今迄何も思わなかったのに。
感じることすら投げ捨てて、朽ちることすら投げ捨てて、虚ろな瞳で世をなぞる。
ごめんね。
そう思うことすら、疲れてしまった。
代わりに全て受け入れようと。
ベルフェゴールに意を結べ。
全て我が身が揺蕩うままに。
こうして、怠惰の聖少女は生まれたのでありました。




