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05 無限の土地

 それは正に名の通りの光景であった。「オーバーサイズ」の名の通り、信徒としては可能な限り大きな神殿を用意しようと思って、その州にて一番大きなスタジアムをそのまま流用していたが、この神様の身体はスタジアムに入りきらず、文字通り「オーバーサイズ」となっていた。

 信徒達は、新しい神を前にして詫びて一礼する。「オーバーサイズ」は、その礼に対して笑顔を向けて答える。

「大丈夫、良い神殿だ。君達には、まだ新しい神殿を造れはしないからね」

 そう言う「オーバーサイズ」に対して、伝令として走ってきた信徒からの報告を耳にする。

「世界各地から、「オーバー・キッズ」の敗走が伝わっているんだね。これ以上は、犠牲ばかりが大きくなる。攻め方を変えないと駄目だね」

 「オーバーサイズ」は、その巨軀を揺らしながら、信徒達を前にして言う。

「一旦、皆で集まろうか。世界中に居る信徒を、全部ここへ集めよう。「オーバー・キッズ」だけじゃなくて、今居る信徒を根こそぎ、ここへ集めるんだ」

 信徒達の顔色が、良い意味で変わる。まさか、まだ早すぎるのではないか、いや、早すぎる訳が無い。自分達の国をここに建国するのか。それが自分達の最終ゴールではあるのだが、まさかこんなに早く実現させようというのか。

 その顔色の変化を見た「オーバーサイズ」は、苦笑しつつ言う。

「戦法を変えるんだ。真正面から力尽くで攻め込んでも、犠牲ばかりが大きくなる」

 では、組織自体も地下化すると言うのか。それでは、自分達はテロリストになってしまうではないか。

「何言っているんだい。僕達、テロリストじゃないか。今更、こんな事を言わせないで欲しいな」

 ……その身体で、どうやって活動の地下化を行うのだ。

「そこはどうとでもなる。何なら、宇宙から指示を出しても良い。このスタジアムも居心地はとても良いけど、だからと言って無理にここに拘るつもりは無い」

 それでは、「宇宙」に国を造るのか。

「……それは、魅惑的なアイデアだね。確かに、「宇宙」に移民すれば、誰からも文句を言われる筋合いは無いね」

 そこまで会話が続いた頃に、世界各地から生き延びた「オーバー・キッズ」が、その巨大な身体を揺らしながら集まってきていた。その数、7人である。巨軀を揺らしながら、ノソリノソリとスタジアムを取り囲む様に歩いてくる。

「来たね。それじゃあ、僕達がたった今、取り纏めた今後の方針を話そう」


それを聞いた7人の「オーバー・キッズ」は、全員、その話のスケールの大きさに酔いしれていた。それは、是非ともやってみたい。どうせやるのならば、そこまでやりたい。そこまで出来たら、何だって出来るでは無いか。

「じゃあ、全会一致で賛成してくれるんだね。ありがとう。僕達の目標は、宇宙に独立国家を建国する事。先ず手始めに月へと向かい、そこに街を作り上げる。その名は、「オーバー・ムーン」とする。最後は、この惑星をもらう」

 7人の「オーバー・キッズ」は勿論、他の信徒達も、一斉に自分達の神を崇め讃える。このスケールの大きさに、その場に居た全ての人間達が酩酊状態に陥る。

「では、生き残った「オーバー・キッズ」は、「ビッグセブン」を名乗ると良い。地球各地にて布教活動の指示を執り行う権限を与える。「ビッグセブン」が「敵」の目を引きつけている間に、僕達は月に都市を建設する。当面の目標としては、そうしよう」

 「ビッグセブン」は、自分の身体を人間の姿へと変身させる。あんなに巨大だった身体が、20代から40代の年齢の男女へと変身すると、「オーバーサイズ」に跪く。

「我らの「オーバーサイズ」に。我らの「愛」と「正義」、そして「自由に」


 美津家は、自分達以外にも同じ「犬」が居るかどうか、気になって調べていたが、以外と探す必要は無かった。世界中にて同じ様に「オーバー・キッズ」を倒す戦士が居た。

 美津家の「フジ」は、SNSにて出回っている同様の動画を見て言う。

「「犬」から戦士になった奴もいれば、「猫」もいる。どちらも、同じ程度の力を持っている。味方かどうかは会ってみなければ分からない」

 「フジ」の言葉に、徹は答える。

「大丈夫、味方になってくれるよ」

「……期待しないでおいた方が良い。皆、誰かの家族であったり、友達であったりする。それぞれに抱えている事情も異なるんだ。一概に判断しない方が良い」

 徹は、「フジ」の言葉にも自説を曲げない。

「だって、「正義の味方」は同士討ちなんてしないよ」

「「正義の味方」、あんまり釈然としないな。俺はただの「フジ」だよ。「正義」なんて、辛気臭いもので測らないで欲しいな」

 それを聞いて、徹は思わず言う。

「じゃあ、「フジ」は悪なの?」

「そうだな、自分が悪なのか正義なのか、決めるのは俺じゃない。もっと後の、未来の人間が判断する事だ」

「よく分からないよ」

「……いつか、分かる日が来るだろうよ」


 烈家は、近場の避難所に辿り着いたが、そこで歓迎を受けたわけでは無かった。烈家の両親が感じた「怖れ」が、この避難所の避難民からも感じ取れていた。

「「ムサシ」、ここが嫌なら別の所に行きましょうよ」

 沙苗はそう言って、「ムサシ」の腕を引っ張ってくるが、「ムサシ」の見るところ、他所の避難所に行っても同じである。あの巨大な「オーバー・キッズ」を消し去ったのだから、遠くからでも目立っていたに違いない。そうでなくても、撮影されて動画となって、世界中に拡散しているに違いない。

「仕方が無いわ、理解してくれとは言わないから、食事と寝床さえあればいいでしょう」

 「ムサシ」は沙苗に言うと、避難所の一角に自分達のスペースを確保して、床に敷いたシートの上に寝転がる。その上に、沙苗も乗っかるように寝そべる。

 直翔と明美は、お互いに顔を見合わせながらも、娘とその友達の様に眠るわけには行かなかった。大人にはやらねばならない事も、やっておきたい事も、山の様にあるのだ。疲れたからと言って眠っても良いのは、子供と「猫」くらいだ。

 娘の前にて、「ムサシ」との間に交わした約束を、直翔と明美は忘れていない。本人の前にて約束した手前、今更破るわけには行かない。それこそ、娘に対する最大級の裏切りである。


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