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02 魔神起つ

 君達は、僕達と同じなんだね。居るようで居ない、居るのに居ない。願望と妄想が産み出した、夢の中に生きる存在。

「能書きは良いから、本題に入れ」

 僕達は、ここが気に入った。ここに居ても良いかな。

「悪い、な。俺達も、ここが気に入っている。お前達がここへ来たら、ここは荒れる。住んでいる人間達にも影響が出る。他所を当たってくれ」

「右に同じ、あんたらは災いの元だ。ここに居られたら困る。他にも星は幾らでもあるだろう。宇宙に数多に散らばる星々の中で、ここより条件の良い場所なんて幾らでもあるだろう」

 そうかい。やっぱり、駄目かい。どうしても、駄目かい。

「……ああ、もう。そんな顔でそんな声で言われたら、断り辛いじゃないか。良いか? ここの住民はな、俺やこいつよりもよっぽど偏屈で不寛容だ。宇宙からの難民なんて、120%お断りを喰らうぞ。悪い事は言わないから、他所に行け」

「因みに、お前達が元々居た星はどうなったんだ? その様子をみるからに、あまり良い話ではなさそうだがな」

 でも、聞くんだね。

「一応、な」

「あんまり言いたくないのなら」

 その必要は無い。僕達は星から追い出された。追放されたんだ。その存在が明るみに出た時に、追放された。

「なる程、それで、逃げ込んだ先でここに来たと」

「参ったなぁ、名実共に難民か、お前達は」

 そうだね、その言葉は嫌いだけど。

「では、難民としてこの星にて受け入れて欲しいと、そう言うのだな」

「それでは、益々居て欲しくは無いな。ただでさえこの星でもセンシティブな話題なのに。難民・移民の神様なんて、言葉にするだけで冷汗三斗だ」

 難民・移民の神様、か。良いじゃないかな、僕達、それ気に入ったよ。良いじゃないか、難民や移民の為の神様が居ても。

「……そう言う話ならば、受け入れてやっても良い。難民や移民を守る神様、か。これまでに無い神様だな」

「ちょっと待て、お前、本気で言っているのか。難民や移民の神様だぞ? 人間達にとっても気難しい問題なのに、その問題に我々が首を突っ込んで見ろ。それこそ、我々もこいつらと同じ様に追放される羽目にもなりかねないぞ」

「気難しい問題だからこそ、だ。そろそろ決着を付けさせるべきだ」

「やめろ、人間の問題だ、人間が自分自身の力で解決させるべきだ」

 僕達を踏み台にして、人間達を成長させるつもりかい?

「文句あるか?」

 ……いや、無い。所詮は追放された身の上、何でもやろう。


「お前、何のつもりで」

「最近、人間達は成長していない。このままでは、近い将来には滅びるだろうよ」

「それを避ける為か? 冗談じゃ無い。移民・難民の問題と人類の未来と、何の関係がある」

「大有りだ。あいつらは学ぶべきだ。いつまでも今の幸福が続くと思っているのならば、1度痛い目を見て学ぶべきだ」

「荒療治だぞ、それは」

「だから良いんじゃないか。このまま緩く滅びるくらいならば、どんな苦い薬だろうと、飲んだ方が良い」

「それで死んだら、どうする?」

「その時は、あいつらが新しい神様になるのさ。良いじゃないか。元を辿れば移民・難民だろうと、強い奴が生き残るべきだ」

「それは詭弁だ。強い移民・難民なんていない、弱い立場だからこそ逃げるんだろう」

「だからこそ、だ。そう言う弱い立場に、いつ自分が陥れられるか、今一度学習するべきだ。弱肉強食か、自分が食われる立場で無ければ、幾らでも強がりが言えるものだ」

「……分かった、但し、条件がある。人間にも平等に選択肢と権利を与えるべきだ」


「それで、これがその平等な選択肢と権利、と言う事か」

 美津直田は、犬から人間へと変身して蘇った「フジ」からの説明に対して、首を傾げながらも答える。

「本当に、信じろと?」

「その必要は無い。そろそろ報道されるだろうからな」

 と言いながら、「フジ」はテレビのリモコンを手に取り、電源をつける。


「……それで、なんで猫なんだ。それも、君なんだ」

 烈直翔は、変身して蘇った「ムサシ」に言う。「ムサシ」は、譲渡会にて出会った頃から変わらない瞳を向けながら、直翔に言う。

「私達、友達でしょう? 友達ならば、困っている時こそ共に戦うべきでしょう」

「さっき、君の言った移民・難民の神様を相手に、か?」

「神様では無い、魔神よ」

「で、その魔神が我々をどうすると言うのだ」

 「ムサシ」は、直翔の着ているシャツの胸ポケットに入っていたスマートフォンを手に取ると、慣れた手つきで四桁のパスワードを入力、ニュース系動画サイトのアプリを起動して、動画を見せる。


「こちら、地中海上空です。海上を移動しているのは、船ではありません。あれは、一体、何と呼べば良いのでしょうか? 巨大です、兎に角巨大です、それ以外に何と呼べば良いのでしょうか!」

「大西洋上空をゆく「あれ」は、鳥でも、飛行機でも、そして超人でもありません。「あれ」は、巨大な、巨大な「あれ」ですっ!」

「大地を踏みしめる、あの巨大な生き物、いえ、動物なのでしょうか、メカなのでしょうか。巨大です、兎に角、巨大なのです!」


 それは、日常の終わりであった。幸福な時間の終わりでもある。しかし、魔神とその信徒達にとって、これは自分達の信仰が試される戦いであった。皆、幸せになりたがる。でも、皆で幸せにはなれない。


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