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めいどあっぷ! 魔王さま!  作者: ぱんと少年
【一章 : 魔王攻略作戦】
10/15

[9]三日目:復活した魔王です。


「うぅん……」

 アリシアが目を覚ます。

 頭には包帯が巻かれ、ベッドの上から寝ぼけ眼で周囲の様子を探っている。

 ここは魔王城・医務室。魔物の治療を行う場所である。

「デュラちゃん……」

 アリシアが視線を横に動かすと、隣のベッドでデュラが眠っている。

 互いにお揃いの包帯姿。アリシアはデュラの寝息を立てている様子に安堵の表情を見せる。


「目覚めたようだな、アリシア」


「ま、魔王様っ……!」

「よい、そのまま寝ていろ」

 入口からアーデルトが入ってきた。

 咄嗟に起き上がろうとするアリシアを制止し、ベッド横の椅子に腰かけた。

「まずは貴女に、感謝をしなければならない。よくやったな、アリシア」

「これ以上ないお褒めの言葉……ありがたき幸せにございます……」

「うむ。して、様子はどうだ。まだ痛むか」

「いえ……この程度の傷、魔王様の御心の苦しみに比べたら……」

「よせ、(オレ)は君を失いたくない」

「えっ……?」

 アーデルトはアリシアの手を取り、両手で包む。

「君は命を懸けて(オレ)を、この城を守ったんだ。その勇気を称えたい」

「しかし、わたしは何もっ……! デュラちゃ……デュラがいなければわたしは……」

「……そうだな。これは貴女達のおかげだ」

 アリシアは複雑そうな表情を見せる。

 アーデルトは全身を漆黒の鎧で包んでいるせいで表情を読み取れない。


「あの、魔王様……ひとつお聞きしたいことがあるのですが……」

「うむ、申してみよ」

「魔王様は勇者との戦いで、その……崩御なされたはずでは……」

「あぁ、あれか。確かに我はヤツと相打ちになった。しかし、死んではおらぬぞ」

「えっ……そうだったのですか?」

「なんだ、気づいておらぬのか? ならば仕方ない……」

 アーデルトはおもむろに、自らの頭を覆うヘルムを持ち上げた。

「えっ……えぇっ!?」

 アリシアが二度見した先、そこには首のない甲冑。

 そもそも、アーデルトの鎧の中には何もなかった。

「どどど、どういうことですかっ!? もしかして魔王様も首なし……?!」

「いや、そうではない」

 瞬間、鎧の首元からひょっこりと影が飛び出した。


「ぎゃ……ぎゃおちゃんっ……!」


「その名で呼ぶな。(オレ)は魔王、アーデルト・ドラコニアスだ」

 アリシアの目の前には小さな黒いドラゴン、もとい魔王アーデルトの正体が現れた。

 そう、アリシアが”ぎゃおちゃん”と呼んでいたドラゴンこそがアーデルトだったのである。

「魔王様がぎゃおちゃんで……ぎゃおちゃんが魔王様で……」

「落ち着け、(オレ)だってこの姿は不本意なんだ」

 アーデルトは鎧から這い出して、鎧の膝の上に移動する。

(オレ)は見ての通り竜だ、この鎧は魔術で動かしているにすぎん。そして、あの時対峙した勇者は竜狩りの剣士(ドラゴン・スレイヤー)(オレ)とは相性がめっぽう悪かった」

「で、ですがっ……!」

「詳しく話すと長くなるからなぁ……とにかく、(オレ)はこの姿になることで死を免れた。しかし、代償として魔力のほとんどを失い、まともな自我すら無くしてしまっていたんだ」

(ど、どうしよう……! 知らなかったとはいえ、魔王様になんてことを……!)

 アリシアの脳裏に浮かぶぎゃおちゃんとの思い出。いっぱいなでなでしたり、一緒の布団で寝たり、一緒にお風呂に入ったり……。

「あの魔女のおかげでとりあえずはここまで取り戻せた。それでもまだ完全には復活出来ていない」

 アーデルトは翼をぱたぱたとさせながら不服そうな顔を見せる。

(ぎゃおちゃん、やっぱり可愛いなぁ……でも、どうして魔王様はわたしを魔王にさせたんだろう?)

「なんだ、そんなに(オレ)が変か?」

「い、いえ! 滅相もございません! その、魔王様はどうしてわたしに()()()()()なんて仰ったのか不思議で……」

「え、そんなこと言った?」

 アリシアはポカーンとする。

 対するアーデルトも首を傾げている。

「……言いましたっ! 絶対にそう言いましたっ!」

「あー、何か言ったような気もする……。しかし、あの時は上手く言葉が出なくてな、そう解釈させてしまったようだ」

「えー!?」

「はっはっは、このままアリシアが玉座に着いても構わんのだぞ」


「そ、そんな! お戯れがすぎますっ! 恐れ多いです───っ!」


 ◆


 帝国城・地下、ジークの独房。

 バルバはジークの囚われている独房の扉を前に立ち、腕を組んで渋い顔をする。

「どうしたものか……、やはり簡単にはいかないか……」

「何してるの?」

「ど、Dr.ヘックス!? 何故ここに!?」

 頭を捻り唸るバルバのもとにDr.ヘックスが姿を現した。彼女はアーデルトとの戦いでボロボロになっており、穿いている黒タイツは所々が破けている。

「確か、魔王城に自ら赴いていたはずでは? それにその傷、一体何が……」

「ちょっと邪魔、どいてよ」

 Dr.ヘックスは独房の前で佇むバルバを足蹴りし、無理やり退かせる。

「ま、待て! そいつに近づくのは危険だ!」

「うるさい。あたしはこいつに用があるの」

 Dr.ヘックスはバルバからの忠告を無視して独房の小窓に手を掛ける。

「あなた、最凶の竜狩りの剣士(ドラゴン・スレイヤー)なんでしょ? だったら、魔王を討伐しなさいよ」

「そ、そうは言うが私でも中々了承してくれんのだ……!」

バルバ(あなた)は黙ってて、別に聞いてないから」

 焦りを見せるバルバはDr.ヘックスの前に割って入り、小窓に置く彼女の手に重ねて手を置く。

 対するDr.ヘックスはバルバを他所に小窓を開いた。


 ガシィッ!


「ぬおっ……! また私かっ……!」

 バルバは独房から伸びる手に腕を掴まれ、苦悶の表情を見せる。

「血を……寄越せ……」

「ふーん、随分と元気そうだね。そんなに血が欲しいならこれ、あなたにあげる」

 Dr.ヘックスは懐から小瓶を取り出す。中身は赤い液体が詰まっている。

「そ、それは……?」

「魔王の血、()()よ」

 ガタッ!

 瞬間、バルバの腕を掴む手が離れ、求めるようにして手を伸ばした。手は忙しなく動き、中から飛び出さんとする勢いだ。

「これがそんなに欲しいんだ? じゃあ、わかるよね? あたしたちに協力して」

「待て! どうしてそんな物を持っているんだ!?」

「わざわざ手に入れてきたんだよ。散々コケにされてムカついたけど、これぐらいの成果は得られた」

「寄越せ……! 血を、寄越せ……!」

「いっぱい欲しいなら自分で取りに行けば? あたしが案内してあげるから」

 ピタッとジークの手が止まる。

「ふーん、案外素直なんだね。かわいいところもあるじゃん」

 Dr.ヘックスが独房の鍵に手をかける。

「お、おいっ……! まずいぞっ……! ヤツを出したらっ……!」

「いいから見てなさいよ。こいつはあたしが従えるの」

 Dr.ヘックスは魔力を込めて独房の鍵を破壊する。重々しい扉に手をかざし、魔力で開き始める。

 長年開かれることの無かった扉が、地下全体を震わせながら金属の擦れる音を立てて開かれていく。

「ようやくご対面だね、最凶の竜狩りの剣士(ドラゴン・スレイヤー)……」

 扉の先。

 そこにはボロボロの囚人服を着た、全身が痩せ細り鎖で繋がれた一人の男。

 彼こそがジーク・ムントである。

 腰まで伸びた白色の長髪で顔が隠れ、隙間からはギョロッと赤い目を覗かせている。


「まずはその汚らしい格好を何とかしよっか。あなたの力を取り戻すの」


 ◆


 魔王城・謁見の間、だった場所。

 度重なる戦闘で、もはや部屋の形を留めていない。

 瓦礫が積み上がる廃墟と化した中心に佇む玉座、漆黒の鎧を纏うアーデルトが鎮座している。

(オレ)の力はまだ完全ではない、再びの侵攻を抑えるにも限界はあるな……)


「ところで、我に用があるのだろう?」


 アーデルトが扉の方へ呼びかけると、扉の陰から一人の影が姿を現した。

「魔王様……お話が、ございます」

 その影は、デュラだった。

閲覧ありがとうございます。

ぼちぼち更新する予定ですのでお待ち下さいませ。

※無断転載を禁じます。

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