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アルフォードの後悔

お読み頂きありがとうございます。。誤字報告ありがたいです。感謝しています。

アルフォード、後悔しますが立ち直りが早いです。クララは理詰めでぐんぐんいきます。冷静に見極めるんでしょうね。

 自分の部屋にやっと帰り着いたアルフォードは、地面に穴を掘って沈んでしまいたい気持ちになった。


クララから事実を突きつけられて、ようやく自分のおろかさに気がついたのだ。あのまま婚約を解消されていても文句の言える立場ではなかったのだから。


僕は一体クララに何をしてきた?お茶さえまともに飲んではいなかった。

クララが領地の話をしているのに顔を見るのが恥ずかしいからという馬鹿げた言い訳で、きちんと聞いていなかった。


手紙の返事が書けない?何処の赤ん坊だ。


栞をもらったのにお礼の返事も花の一本も贈らなかった。


挙句の果ては会わなくてもいいと言ったのを利用して、研究時間が取れたと浮かれていた。


女子生徒が一緒に研究室にいることを誰かが密告していたらしい。決して疚しいことがなくても婚約者のいる身で親しくするなどありえないことだ。迂闊だ、迂闊過ぎる。ましてや僕は婿に行く身なのだ。いつ断られても不思議ではない。


クララは貴族社会では優良物件なのだ。可愛くて頭もよく伯爵の後を継ぐ、次期女伯爵。地位を抜きにしてもクララは可愛い、狙っている男は沢山いるのに、何をやっているんだ。


自分で自分を殴りたい。

後三ヶ月しかない。挽回しなくては。


最初に何をすればいい?そうだ、小さな頃花が好きだと言っていたじゃないか。毎日赤い薔薇の花を一本贈ろう。

花言葉わかってくれるかな。


それから愛の手紙だ、難易度が高いな。

デートに誘うのもありだな、何処がいいか兄上達に聞いてみよう。からかわれたっていい、やり遂げなくては。


まずは赤い薔薇を差し出しながら、初めて会った日のことを話してみよう。君は覚えていないと言ったけれど。僕にとっては大切な思い出だから。




次の日、先触れを出したアルフォードは学院が終わるとクララの屋敷を訪ねていた。手に赤い薔薇を持って。

「クララ嬢にお会いしに来ました」

顔見知りの家令が応接室に案内してくれた。


「クララ嬢お邪魔しているよ」

クララが入ってくると立ち上がって薔薇の花を渡した。

「今まで通り、クララでいいわ。まだ婚約者なのですもの」


「クララ、今までの僕は最低の人間だった。どうか許して欲しい。償いがすぐ出来るとは思っていない、時間をかけて償っていくつもりだ」


「アルフォード様、別に傷ついたりしていませんので、償って頂く必要はないかと思います。確かに手紙の返事がなかったりしたことは、関心が無いのだわ、くらいは思いましたけれど」


「申しわけがないと恥じ入っている」


「そうですか、ではこれで」


「もう少し話を聞いてくれないか」


「では、どうぞ」


「ありがとう、君は以前こういう気持ちだったのだな、ごめん。君と初めて会ったときのことを話したいと思うんだ」


「初めて会った時、ですか?」


「君は覚えていないと言ったけど、僕たちは昔屋敷であった兄上の友達選びの茶会で出会ったんだ。君は薔薇の咲いている庭で迷子になっていた。僕が迷子になったの?って聞いたら、お父様が迷子になったのって言ったんだ。可笑しいやら、可愛いやらで僕は君に落ちてしまった。君が五歳くらいだよ。

それで君が婚約者を探し始めたと聞いて父上にお願いして候補にして貰った。

せっかく婚約者になれたのに僕は安心してしまって役目も果たさず、君から目を離してしまった。馬鹿だとしか言えない」


「アルフォード様ってお話ができる人だったのですね」


「えっ、普通に話せるけど」


「そういえば、顔合わせのときは普通に会話ができていましたね、いつから話さなくなったのでしょう」


「きっと僕が意識しすぎて顔が見れなくなってからだ」


「私のことに関心がなくなったのだとばかり思っていました。学院で楽しいことが見つかったのなら、それでもいいと思っていたのです。私は領地経営が楽しくて父と一緒にプランを実現させて充実していましたし」


「話が元に戻るけど君は僕の初恋の人なんだ」


「そうですか、としか言えません、実感がありませんので」


「これからできるだけ会いに来るよ、今までの分を取り返したい」


「領地に行くこともありますし、いつもいるわけではありません」


「僕も一緒に行ってもいいかな?」


「父も一緒ですがいいのですか?」


「もちろんだ、一緒じゃないとおかしいだろ。まだ子供なんだから」


「研究はどうされるのですか?学院のお友達とされているのでしょう?」


「暫く休むよ、君がいなくなるかと思ったらそれどころじゃなくなった。君をちゃんと捕まえてから自分でやれる範囲でやることにした。学院の研究室は閉めることにする。屋敷の中にも使ってない小屋はあるからね」


「お友達は納得されるのですか?アルフォード様が好きで研究室に来られていた人もおられたのではないですか?」


「ちゃんと話をして分かってもらうよ。君が一番なんだ。それ以外はいらない」


「アルフォード様って今でも格好良くてモテそうですよね。嫌がらせとかされたり、浮気されたり穏やかな生活と無縁になりそうだったから、お断りをしようと思っていたんです」


「浮気なんてしない、君だけだと誓うよ」


「例えばですけど今一緒に研究されている方がアルフォード様狙いだとします。でもアルフォード様には爵位が継げない。でも結婚すれば伯爵籍に入る。愛人でもいいから一緒にいたい、と言われたら振り切れますか?」


「もちろんだよ、そんなことはしない、するわけがない、付き合いもやめるから」


「卒業間近に言われたら考えが変わっているかも知れませんよ。そこまで婚約が続いていたらの話ですが」


「クララは大人のような考え方をするんだね、僕の甘さが浮き彫りになるよ」


「生まれたときから領主になる教育をされてきました。領民を守ることが当たり前のこととして生きてきたのです。可愛くないかもしれません。だから浮気をされたりするのではと心配なのです。失礼ながら、アルフォード様のような容姿端麗な方ならそういう可能性のほうが大きいのではないかと思っています。私の肩には多くの人の暮らしが乗っているので、できるだけ余計な重りは欲しくないのです」


「僕はちっともわかっていない子供だったよ、恥ずかしい。これからは君の重さを少しでも軽くしてあげたいと思っている。

僕の兄は侯爵家嫡男で容姿端麗なんだ。嫌になるほど女性が寄ってきて女嫌いになっている。冷たくしても寄ってくるそうなんだ。兄も重りを背負いながら歩いているのだなと気が付かせてもらった。ありがとう」


「両親はこの事態を引き起こした貴方に怒っていますので、婚約の継続はかなり難しくなっています。頑張られるのですか?」


「頑張るよ、君が好きだから。自分の蒔いた種だからね。今日はたくさん話が出来て良かった、また明日ね」

そう言ってアルフォード様は帰って行った。

父は複雑そうな顔をして応接室に入って来た。

「クララ、様子を見るのだな?」


「お父様、三ヶ月です。もうすぐ十二歳の誕生日が来ます」

クララはにっこり笑った。






アルフォードの初恋の告白、ピンときていないクララでした。容姿端麗もマイナスポイントでした。

クララはクールなんでしょうね。婚約してからずっと放ったらかしにされていたので無理もないです。

冷めてしまったクララと焦るアルフォード、どうなっていくのかお楽しみに。

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