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父の逆鱗

読んでいただきありがとうございます。クララちゃんのお父様、娘をこけにされてお怒りモード満載です。

クララちゃんも鋭く切り込みアルフォード君はヨロヨロになります。ぼんやりしているアルフォード君は覚醒するのでしょうか?

 伯爵はまず自分の目で娘の言うことが事実なのか確かめてみることにした。クララにアルフォードと会う約束を取付けるように言った。


応接間にお茶の用意をさせ、中を覗ける隣の小部屋から様子を見ることにした。商談に入る時に使っている部屋で相手のことがどれくらい信用できるのか見るためのものだった。


侍女に案内されてアルフォードが入ってきた。一年ぶりだからだろうか背が高くなった気がした。ジャケットにスラックスという貴族らしいきちんとした格好をしている。薔薇の花束を持ってきていた。


クララが水色のワンピースで入ってきた。侍女も一緒だ。

「アルフォード様いらっしゃいませ、お久しぶりでございます。お変わりありませんでしたか?」

「久しぶりだね、おかげさまで変わりないよ。君はまた綺麗になったね。その後どうしていたの?」

と薔薇を差し出しながら言った。

「お花ありがとうございます。素敵ですね、いい香りです。ありがとうございます。領地経営が楽しくて忙しくしておりましたわ」

「素晴らしいところなんだろうね」

「ええ、小麦畑が広がってとても綺麗ですの。薬草の研究は進まれましたか?」

「少しずつだけど何とか」

「何の薬草かお話ししてくださる気になりましたか」

「土を良くするものなんだけどまだ結果はほど遠いかな」

「それは我が領地に使ってくださるものですか?」

「最初に使うのはもちろんだよ。でもいずれは国全体に行き渡れば良いかなと思っている。あくまでも夢なんだけど」

「では、いずれは研究者になりたいと思われているのですね?」

「研究は続けたいと思っているが、貴女と結婚をして領地を盛り立てていきたいとも思っている」

「それは相手は私でなくてもいいということですね。アルフォード様が望めばこれからでも選び放題でしょうし」

「どうしてそうなる」

「今日は比較的お話ができましたが、以前は私の話など興味がないとお見受けしました。ですので余計な時間を割いていただかなくていいように、交流は半年か一年に一度でいいと申し上げましたの。手紙をお送りしても返事もいただけない、栞を作ってお送りしたこともございます。レモンのクッキーを差し上げたこともありましたわ。反応がなくてどうでもいいのだなと思っておりましたの」

「レモンのクッキーはとても美味しかった。君が作ってくれたと思って大事に食べた。手紙と栞は...」

「興味がなかったから捨ててしまわれたのでしょうね。私は婿入りをしていただいて、一緒に領地を盛り立てくださる方が良いのです。そして私を一番大事にしてくださる方と人生を歩みたいのです。残念ですがアルフォード様は研究のほうが大切ですよね。侯爵様には父からお断りの申し出をさせていただきます」

「待ってくれ、そんなつもりは微塵もなかった。君の話を上の空で聞いていたこともない。ただ君の顔を見ると恥ずかしくなってしまって、何を言ったら良いのかわからなかった自覚はある。手紙や栞は大切に取ってある。返事を書こうとすると何を書けば君が喜ぶものになるのかわからず、書かないまま机の引き出しが一杯になってしまった。もう一度チャンスを貰えないだろうか。いや、チャンスを下さいお願いします」


クララはアルフォードがこんなに話す人だったと初めて知った。

「アルフォード様は自分のものだと思っていたのに手から離れていこうとしているから、惜しくなってしまっただけなのではありませんか?私は早く次の方を見つけないと、いい条件の方がいなくなってしまいますので、長引くと困るのです」


クララの言葉がアルフォードの心をぐさりぐさりと容赦なく抉っていった。そして自分の失敗をこれでもかというほど突きつけられ立ち上がれないほどだった。

それに被せるように次の矢が飛んできた。


「御一緒に研究されている女子生徒の方がいらっしゃるそうではありませんか、婚約者がいるのに女子生徒の方と仲良くされているなど、どういうことなのかお聞きしても?」

「決して二人でいたことはない、ただの研究仲間というだけだ」

「決して焼きもちというわけではないのでご理解いただければと思います。けれどご親切な方が学院にも行っていない私のところへお知らせを下さいますの」

「お願いだ、もう一度チャンスを下さい。一からやり直したい。僕が迂闊すぎました。馬鹿すぎました。いつまでも子どものままで成長できていませんでした。頼むからやり直させてください」

「それは貴方の未来の身分のためですか?」

「いいえ、君、クララ嬢が好きだからです。貴女との未来のためにもう一度やり直させていただけたらと思います」

「様子を見させていただきます。三ヶ月です。女性の価値はどんどん下がるので」

「ありがとう、感謝します」

そう言ってアルフォードはヨロヨロしながら帰って行った。

一緒に部屋にいた専属侍女のミミが

「お嬢様とても十一歳には思えませんわね」

と感心していた。


父も隠し部屋から出てきて

「クララが不利になるようなら出ていこうかと思ったが、見事なものだったな。小僧がフラフラになっていたのが面白かった。女遊びはしていないのだな」

「どうなのでしょうね、嫌がらせの手紙のようでしたけど、研究室の中に入って見たというわけではないようです」

「そこは大切なところだからお父様に任せなさい。十四歳なら女性から言い寄られているかもしれない。それで道を踏み外すようなら見切りをつけるのもいいだろう」

「よろしくお願いしますわ、お父様」

「もちろんだ、可愛いクララを泣かせたらただでは済まさない。しかしクララはしっかりしているな」

「もうすぐ十二歳です、頑張りますわ」

「たまには気を抜いて遊んでも良いのだよ。今度ピクニックでも行くか?」

「家族全員でですか?良いですわね。そういえば暫く行っていませんでしたね、楽しみです」

「そうやって笑っている顔が可愛いよ」

「まあ、お父様ったら嬉しいです」

「疲れただろう、部屋で休むと良い」


執務室に戻った伯爵は夫人に先ほどのことを報告した。

夫人は声を上げて笑った。クララを蔑ろにしていたアルフォードに思うところがあったのだから。

久しぶりにデザイナーを呼んで洋服を作ってもいいかしらと夫に尋ねた。

「もちろんだよ、君たちが綺麗にしているのは良いものだ」

「次を探す?」

「探しておいても無駄にはならないと思う」

「まあ、怖い。こけにされて黙っているなんて性分に合いませんものね」

「クララを支えてくれなくては話にならない。鈍いのは致命的だ」

「どれだけ挽回できるか見ものですわね、三ヶ月で」

「ああ、クララは良い領主になる。サラの教育は捗っているのか?」

「普通だと思いますわ、クララが優秀すぎるのです。でも何かあったときのために、備えておくのは大事ですものね」

「そうだね、娘たちが順調に育っているのは君のおかげだ。ありがとう、愛しているよ」

「私も愛しています、愛しい貴方」



伯爵はアルフォードの身辺調査を徹底的にやることにした。


薬草について、周りを取り囲む友人と称する者達について、女子生徒との距離の取り方について等々である。


大人を調べるのとは違い至って簡単に情報は手に入った。

薬草は土を栄養豊かにするものだったが、先はまだまだ見えてはいなかった。友人たちは取り入っておきたい考えの者と、真の友人が一人だけいた。

女子生徒は残念ながらアルフォード狙いだった。気がついていないのはアルフォードだけ、間抜けすぎると伯爵は呆れた。気があるなら媚びて来ているだろう、それすら気が付かないとは笑わせてくれる。


伯爵は呆れ、アルフォードの名前を心のメモから消した。

誤字報告ありがとうございます。感謝しかありません。  クララちゃんのお父様、アルフォード君に見切りをつけたようです。

  

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