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出会い

新連載始めました。お立ち寄り頂きありがとうございます。書くなら絶対ハッピーエンドと思っています。楽しんで頂けたら幸いです。宜しくお願いします。

2024年5月5日異世界恋愛ランキングで3位!!を頂きました。皆様のおかげです。

ありがとうございます。感謝しています。

 伯爵令嬢長女クララ・スタンレイには婚約者がいる。五歳の時にお茶会と称して侯爵家に子ども達が集められた事があった。

侯爵家嫡男の婚約者選びのための催しだった。

当時ブリゼール侯爵家には三人の男児がいた。十二歳のロイ、十歳のギルバート、八歳で三男のアルフォードである。


ロイが金髪碧眼の文官タイプ、ギルバートは黒髪で赤い瞳の武人タイプ、アルフォードはロイと同じ金髪碧眼で女の子に間違えられそうなくらいの華奢な見た目の男の子だった。


侯爵家から招待状が届いたのだ、親は大慌てで我が子を着飾らせ参加させることになった。

スタンレイ伯爵家も同様だった。流石に五歳の娘には声がかからないだろうと、腹をくくって出かけた。

クララは跡継ぎなのだ。ゆっくり相応しい男を見極め婿に入って貰わなければならない。


娘を蔑ろにするようなクズはお断りだとクララが生まれた時から思っていたのだから。 




体の良い婚約者探しと言っても差し支えないだろう。




参加した貴族は多かった。子息なら友達や側近に、娘なら婚約者候補にと目論む輩も多くいたのだから。


スタンレイ伯爵家はその中では珍しくクララとの縁は欲しくないと考えている貴族の一人だった。



クララは生まれた時から跡継ぎと決まっていた。女性が当主になってもいいという考えの国だったからである。


そのためにクララには生まれた時から三ヶ国語の話せる乳母や侍女が付けられ耳から覚える教育がされていた。


もちろん、クララを蔑ろにするようなクズが婿に来ては困るので、相手選びには慎重に行うつもりだ。


幸いにもクララは金色の髪と緑色の大きな瞳で、顔は小さく色白な可愛い幼女だった。これなら婿選びに苦労はしないだろうと両親は信じていた。


そこへこのお茶会の招待状だ。出席しかないと腹をくくって仕方なく参加したのだった。


 会場は沢山の大人達と子ども達で溢れていた。初めてこのような場所に来たクララは圧倒されていたため、父親から離れないようにしようとずっと手を繋いでもらっていた。


伯爵は娘が少しでも落ち着くようにお菓子のコーナーに連れて行った。そこにはマカロン、マフィンやクッキー、プチケーキが大きなお皿に綺麗に並べられていた。色々な果実水も小さなグラスに入れられ並べてあった。


危ないことが起きないように周りには騎士や侍女が控えていた。

クララは取り皿にマカロンとクッキーを取り分けてもらい、林檎のジュースを貰って、父から目を離さないように食べていた。

伯爵もクララから見えるところで、知り合いと話すようにしていた。



それなのにほんの一瞬マカロンに目を奪われた間に父が見えなくなってしまった。


クララはドキッとしたが直ぐに帰って来てくれると我慢をすることにした。お菓子がなくなっても、お父様が帰ってこない。ついに我慢の限界が来たクララは、自分で探してみようと椅子から立ち上がった。


お父様、お父様とつぶやきながらいつのまにか気がつけば薔薇の咲いている庭に出てしまっていた。

怖くなってしまったクララは思わずしゃがみこんでしまった。


「君は迷子?」

優しい男の子の声が上から聞こえた。

「違うわ、お父様が迷子になったの」

そう答えたクララに同じようにしゃがんでくれた男の子は、笑いを含んだ声で

「それは困ったお父様だね」

と言った。

クララは溢れかけていた涙が止まったのが分かった。


「君、名前は何ていうの?僕はアルだよ」

「クララです」

「お菓子は食べたの?」

「はい、とても美味しかったですけど、お父様がいなくなったので探しに来たのです」

「それは大変だったね、僕と話していたら向こうから探しに来てくださるかもしれないよ。ねえ、君はお花は好き?」

「はい、好きです。お散歩しながら名前を覚えたり図鑑で見たりしています、屋敷の中はお花が沢山飾ってあるんです」

「何のお花が好きなの?」

「ここにある薔薇も好きですし、ガーベラやスイートピーも大好きです」

「他に好きなものはあるの?」

「本を読んだりダンスをしたりお散歩やピアノを弾くのも好きです。お兄ちゃまは何がお好きですか?」

「僕も本を読むのは好きだよ、剣の練習も、ダンスもまあまあ好きかな」

「騎士様になりたいのですか?」

「まだ考えてみたことはないかな。そろそろ決めないといけないかもしれないけど。あっ、君のお迎えが来たみたいだよ」

「また会えますか?お話ししていただいて楽しかったです。ありがとうございました」

「僕も楽しかった、また会えるよ、きっと」

クララの侍女の「お嬢様どちらですか」という声が聞こえてきた。


遠くに父親の顔を見つけたクララは振り返ったが、もうそこにアルという少年の姿はなかった。


父親に抱きしめられたクララは

「お父様、勝手に迷子にならないで下さい」

と言って父親を苦笑させた。

「クララが無事に見つかって良かった、生きた心地がしなかったよ。まだこういうところに来るのは早いね」

という伯爵の一言で数年間クララは何処のお茶会にも出なくて良いようになった。


 十歳の頃にブリーゼル侯爵家から婚約の申し込みがあった。相手は三男のアルフォードだった。


スタンレイ伯爵は秘密裏に侯爵家を調べた。侯爵と夫人の人柄、交友関係、借金の有無、三兄弟の仲の良し悪し。どれにも問題はなかった。クララが婿を取ることは知られているので沢山の釣書が届き始めていた。その中の一つだった。


まだアルフォードは十三歳だから女性関係は流石になかったが、これからどうなるのかわからない、伯爵は決断を迫られていた。





誤字報告ありがとうございます。幼い二人の間に何が起きてしまうのかお楽しみに。

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