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至高の料理

作者: 水無飛沫



ここに一人、料理人が居た。

頭巾と白衣を纏い、料理場に佇む。

彼は苦悩していた。

世界各国数多の美食を喰らってきたが、どれも理想には程遠い。

最上の料理とは、誰しもを満足させるものとは……自分にしか作れない料理とはなんであろうか。

悩み続けた彼は一つの結論に達する。




赤身、脂肪、塩分、糖分、ミネラル。ハーブやなんかもたくさん食べさせて、体質管理を完璧に行い育て上げた肉を。

骨を煮出し、肉を刻み、臓を焼く。

スープは素材の味を生かすように薄味がいい。

肉を焼きすぎてはいけない。最高に仕上げた肉の旨味を閉じ込めるように。


これは自分の舌を満足させるためだけに作り上げた至高の一品。

もしかしたら、その美味を理解するものは現れないかもしれない。

けれどそれでもいい。


ひとくち、それを口に含む。


それでもいいのだ。

自分は、自分にしか創り出せない最高の料理を、最高の味を造り出した。


命が潰えるその瞬間、

骨を削り、肉をはぎ取り、臓を失った男の目から涙が零れ落ちた。



――さぁ、温かいうちにお召し上がりください。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 自分の肉体をもってして最高の料理を作ったシェフ。 傍から見ればそれが不合理な選択だったかもしれない。 でも、本人にとって「届いた」という感覚さえあれば、死んでもかまわない。 届いて死…
[良い点] 本人としては至高…なのかもしれませんが、禁忌の領域にたどり着きましたね。 最後が食材になっている男の言葉だとすると、それもそういう風に育て上げたということでしょうか。 恐ろしい物語でした。…
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