あとがき
『ゼムナ戦記 剣の主』、これにて完結です。最後までお付き合いくださりありがとうございました。
本作はこれまでのシリーズ作品と異なり、惑星探査をモチーフとした章になります。なので、ロボットものというよりはガチめのSFテイストになりました。
非常に苦労させられました。今回ばかりは事前に散々調べて、どんな天体や生態系をメインにした話数にするか列挙して、簡単なプロット代わりとしました。それもサイエンスフィクションというジャンルの特性からくるものです。
現代劇であればドラマティックな展開を用意する、あるいは突飛な嘘設定を組み込むことでストーリーは成立します。ファンタジーであればそもそも嘘をつく必要がありません。そういう世界なのだですみます。
ところがSF、特に宇宙を取り扱うとなるとそうはいきません。本当に起こるべきであろう事象の中に少しだけの嘘を散りばめて成立させないといけないのです。
といのも、恒星、惑星、それらを全部含めた惑星系の形成理論は意外と固まっています。もちろん、今も日々新しい発見はありますが、ベースとなる部分は物理法則に支配されていてそう簡単に曲げられないのです。
どんなふうに嘘をついてやろうかと考えるにも、基本の部分を外さないよう隙間を探すのに難儀しました。「またか」とうんざりするほどの調べ物をしながら書き上げなくてはなりませんでした。
ここまでは事前に覚悟ができる類の苦労です。八波は今回、もう一つミスをしました。キャラクター設定です。
万が一、ここから読んでいる方を想定してネタバレは避けますが、主人公がアレな設定にしてしまったため内心の描写が一切できないという事実に直面したのです。
書きはじめるまで気づかないというアホなことをしてしまいました。段落あるいは回ごとに視点を設定する表現法を採用していますが、そこに主人公を加えられないという難易度高めの描写をしないといけません。痛恨のミスでした。正直つらかった。
ともあれどうにか書ききることはできたので安心しています。宇宙を舞台にするなら一度は描いてみたい作品でしたので。人間ドラマもエッセンスとして効果をあげられていれば幸いです。
では、恒例の次章宣伝をば。
次回作は『ゼムナ戦記 翼の使命』。ジュネとリリエルのその後の物語になります。正確には二人にとっての本編です。色々と風呂敷を畳む予定ですので、お楽しみくださると嬉しいですね。
八波草三郎




