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【第一章】其の六『ヘレナヴァレ王宮大襲撃戦 2』

「っ……!」




吸血獣(狐)の集団に押されながらも、グレンは声のする方へと視線を向ける。




「彼は……。」




視線の先には、

こちらに向かってくる、片手に巨大なハンマーを装備した大男が居た。





「……ここは、彼の手も借りるとしようか!!!」





グレンは斬撃を繰り出すと、一旦後方に跳び、大男の方へと走り出した。それに続いて吸血獣(狐)が走り出す。




(……来たなぁ!!!グレン!!!)





「一旦下がれぇ!!!ここはオラが受け止めるっ!!!」



「ああ……、頼んだぞ!ラルゴバーグ殿……!!!」





――グァァァァアッッッ



「オラの()()()()()()()()()を喰らいなぁ……!!!」





ラルゴバーグがライジングハンマーを構えつつ前方に駆け出す。その時、吸血獣(狐)が一頭、彼に飛び掛かった。





「うおらぁぁぁぁッッ!!!」





――ドガッ





真っ先にラルゴバーグに飛び掛かって来た吸血獣(狐)は、身体に命中したライジングハンマーに吹き飛ばされ、遥か彼方(かなた)へと飛んで行く。




その一部始終を見ていた吸血獣(狐)達は、恐れをなしたのか次々と後退りを始めた。そして、次々と来た道を走って逃げて行く。




「なんだぁ?このオラに怖気付いたのかぁ?情けねぇなぁ……。」





「すっげぇ……、なんだ、あのハンマー……。」





コウヤがラルゴバーグの装備するライジングハンマーに見惚れていると、まもなくグレンがやって来た。






「参戦に感謝する。ラルゴバーグ殿。」




「アイツらの後、追うのかぁ?」




「いいや、一旦此処(ここ)はひいておこう。

……私達が待っていれば、リィヴェルナの吸血姫が直々に攻め込んでくるはずだ。」




「あの古城の吸血姫かぁ…??


参ったなぁ……、


アイツは俺らが太刀打ち出来るような奴じゃねぇ……。


だが、どうしてこんな事になったんだぁ……。」




「きっと、


私と、あの吸血獣共の大群を戦わせ、私の体力を奪う作戦だったのだろう。


しかし、エフィローナのお陰で体力は完全に回復した。


私はいつでも戦える。」




「エフィローナぁ……?」




「後ろの彼女さ。」




そう言って、視線をラルゴバーグの後ろに向けるグレン。


彼女は少し、目の前に立っている大男に怯えていているようだった。




「嬢ちゃんがエフィローナっちゅうんかぁ……?」




「ひゃ……ひゃいっ……!」




ラルゴバーグは彼女の顔をじっと見つめる。




「……、

この嬢ちゃんは、相当な力がある気がするぜぇ……。」




そう言うと、彼はライジングハンマーを担ぎ上げ、少し微笑みながらヘレナヴァレ王宮の方へと帰って行った。



「……???」





戸惑うエフィ。その様子を見て微笑むグレンとコウヤ。吸血獣が去った後の街外れには静かに風が吹き、空には既に一番星が煌めいていた。




「さあ、帰ろうか、エフィ。」




「……うん!」






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

ヘレナヴァレ王国 街の宿

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






「すまないね……、二人共。

今晩は、此処(ここ)でゆっくり休んでほしい。」




「ああ、大丈夫だ。グレン。」




「こちらこそすみません。

この様な、泊まる場所まで用意して頂いて……。」




「遠慮はしないでくれ。それと、一階で二人の食事が出ているみたいだ。……二人共、お腹が空いているだろう?」





――ギュルルッ





()()という単語を耳にしたその時、エフィとコウヤのお腹がほぼ同時に鳴った。そう、彼等は今日、何も口にしていないのである。




「飯ぃ……!」




「ご飯……!」




「ははは。

それでは、私はこれで失礼するとしよう。……良い夢を。」




グレンはヨダレを垂らしている二人に一礼をすると、階段を下りていき、宿を出て行った。




「さっそく飯食いに行こうぜ……!エフィ……!」




「うん……!!!」




二人も続いて階段を下りていき、一階の食堂へと向かった。




食堂に近付くにつれ、食欲をそそる香りが強くなって来ている。




「入るぞ……!」




――キィイィ




ドアを開けると、料理の香りが全身を包み込んだ。

食卓の上には、既にいくつかの作り立て料理が並べられているのが(わか)った。




「美味そぉおおお………!!!

っていうか、あれカツ丼じゃないか……?!」




「コウヤ君、カツ丼を知ってるの?!」




「ああ……!俺の世界にもあった食べ物だ……!

しかも、カレーライスにギョウザに……、ピザまで有るじゃないかっ……!!!」




「料理が輝いて見えるよぉ……!」





「お待ちしておりましたよ。コウヤさん、エフィさん。」




二人が食卓に並べられている料理を夢中で眺めて居た時、彼等の横から声をかけてきた人物が居た。




「私、料理長のエーホッ・オと申します。

グレン・セ・ロアール様の命令により、貴方達にこうして料理を振る舞わせて頂きました。是非、お召し上がり下さい。」




「エーホッ・オさん……!有難う御座いますっ……!」




二人は向かい合わせに席に着くと、両手を合わせた。






「「 い た だ き ま す 」」





コウヤは真っ先にカツ丼に手を伸ばし、夢中でかき込む。そして、そのあまりの美味しさに身体が震える。




エフィはカレーライスに手を伸ばした。スプーンで一口、また一口と頬張っていく。表情は、二人共とても幸せそうである。




「エーホッ・オさん……、これ美味過ぎますよ……!」




「最高ですっ……!もう止まりません……!」




「ほほほ、有難う御座います。

喉に詰まらせないように気を付けてくださいね。」





こうして、コウヤは異世界転移をしてから初めての食事をした。食べ終わり、入浴を済ませ、部屋に戻る。




途中、着替えを忘れて着替え中のエフィにバッタリ遭遇してしまうというハプニングがあったが、幸いにもビンタ一発で済んだようだった。




「いってぇ……、まだヒリヒリするなあ。」




ぶたれた頬を触りながらベッドに座るコウヤ。空には星がいくつも煌めいており、開いた窓からは微かに風が吹いている。




王国の中の宿ではあるが、景色は素晴らしいものだった。コウヤが元居た世界の夜景とはまた違っていて、それで良い景色。




そんな景色をしばらく眺めていると、疲れていたのか、コウヤに眠気が襲ってくる。






――ガチャッ






「コウヤ君、さっきはごめ……。」





「すう……、すう……。」





「……、ありゃ……、寝ちゃってた。……ちゃんとお布団かけないと風邪引いちゃうよ……。」





エフィは何もかけずに寝ていたコウヤに、そっと布団をかけてあげる。




「……また明日ね。コウヤ君。……おやすみなさい。」





星の明かりに照らされ、二人は眠る。



初日から様々な事を体験したコウヤだったが、大きな怪我も無く、



こうして無事に眠ることが出来たのは奇跡だったのかもしれない。



そして彼は、『幼馴染の救出』という目標を、本当にこの世界で成し遂げられるのか。




彼にとっての本当のスタートは、ここからなのかもしれない。

投稿が遅れてしまい、誠に申し訳有りませんでした。(有馬オレオ)

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