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【第一章】其の五『ヘレナヴァレ王宮大襲撃戦 1 』

馬車の客車の中から、過ぎていく景色を夢中で眺めているエフィ。そんな彼女を他所目(よそめ)に、コウヤは向かいに座るグレンと話をしていた。


「ふむ。君は元々、この世界の人間では無い、と。」


「案外、驚かないんだな……?」


「……。」


「その……、なんだ、

あの化け物から俺らを助けてくれて、ありがとう……な。」


「礼には及ばないよ。私も、奴の討伐を命じられていたからね。」


「ねぇ、私達はこれからヘレナヴァレ王国に向かうんだよね。」


「ああ……、そうだが、どうかしたか?エフィ。」


(こわ)い魔法使いとか居たらどうしよう……。」


「安心したまえ、エフィローナ。基本的に、王国内で許可無く攻撃系魔法を使用する事は禁じられている。」


「だってよ、エフィ。」


「……そう……だよね。うん、(わか)ったわ。」


三人で話をしているうちに、時間はあっと言う間に過ぎた。


太陽が地平線に沈み始めた頃、馬車が停車した。思いの(ほか)、早く到着した様である。


◇◇◇◇◇◇◇◇

ヘレナヴァレ王国

◇◇◇◇◇◇◇◇


「っ……しょっと……、

ここがヘレナヴァレ王国か……!広くてでけぇ……!」


「私、来るのは初めて……!」


夕方だと言うのに、賑わいを見せる街の中心。

ずらりと並ぶ店には、様々な食材な武器などが置いてある。


「では、王宮へ参ろう。私に着いてきたまえ。」


グレンは御者(ぎょしゃ)に一礼すると、二人を連れ歩き出す。


「……あの先に見えるのが、グレンの言う王宮ってやつなのか?」


「ああ、そうだ。」


「という事は王様が居る訳か。やばい、すげぇ緊張して来た……。」


この時、コウヤの頭の中には、

王様と言うのは金色の王冠を被っており、白髭を生やし、そして目力が強く声が低い、

という想像図(イメージ)が浮かんでいた。


(機嫌を損ねるような発言でもしちまったら……、首チョンパじゃすまねぇなこりゃ……。)


苦笑いを見せるコウヤに、辺りの様子に興味津々なエフィ。

その時、恐らく護衛隊であろう一人の人物がグレンに声をかけてきた。何やら、酷く慌てている様子である。


「お待ちしておりました、グレン・セ・ロアール様……!非常事態です……!」


「どうした……?」


「たった今、王国内にて謎の吸血獣が複数目撃されたとの御報告が有りました。

加え、吸血獣らの行先が王宮で有る事も判明しております。」


「……、リィヴェルナの吸血姫(きゅうけつき)か。」


「恐らくは……。」


「お前達は護衛に回れ。国民の安全が最優先だ!

此処(ここ)は私が引き受けよう。


流すのは仲間の血では無く……、奴等(やつら)の血だ。」


「はっ……!」


街の人々が続々と避難する中、護衛隊の一人が下がっていく。一息入れると、グレンは今までに見せた事の無い様な表情で言った。


()()()()()()()()()()()()だ。

何年……、いや、何十年振りだろうか。私はこの時を待ち望んでいたのかもしれないな。」


情報が多過ぎて状況を飲み込めていないコウヤとエフィ。

二人のうち、先に口を開いたのはコウヤだった。


「なぁ……、何が起こってるんだ……?」





「……悪いな、コウヤ。

説明している時間は、どうやら無いようだ。君達も直ぐに避難したまえ。」




――バシュンッッ



グレンはコウヤの質問に答えず、前屈みになったかと思うと、

次の瞬間、物凄いスピードで王宮に向かっていった。



「あのやろう……。」



そう呟くと、コウヤはエフィの左腕を掴んだ。



「……行くぞ。」


「う……、うん!」



そして二人は、その場から走り出した。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

ヘレナヴァレ王宮(内) 謎の空間

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「……。」




青髪の男が、

暗闇の中、椅子にじっと座っている。


その時、ドアを一枚挟んだ廊下からは、

護衛隊や王宮に仕える者達の騒然たる声が絶え間無く響いていた。



…………


…………


…………



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

ヘレナヴァレ王宮(外)荒廃した街外れ

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


――グァァァ グルルル


グレンが既に荒廃した街の外れに到着すると、

狐の様な、巨大で真っ赤な姿をした吸血獣の大群がヘレナヴァレ王宮へと接近しているのが確認出来た。


目は黒く、口には吸血獣と言う名前らしく、二本の鋭い牙が生えている。


「もう此処(ここ)まで来ているのか……。」


(それもそうか……。普段なら護衛隊が戦闘に加わる。

だが、今回は国民の安全を最優先にさせた。)


「……つまり、今、

貴様らと戦えるのは私だけだという事だ。」


彼は、そう呟くと静かに剣を抜いた。



――ガァァァ



そして間も無く、吸血獣(狐)らが視界に彼を捉えた瞬間、狂いに狂いながら一斉に走り出した。唾液を撒き散らし、ただ、鋭い牙と殺意を剥き出しにして、こちらに向かって来ている。


「さあ、思う存分に斬らせてもらうぞ。

私の……、この手でな……!」


グレンは吸血獣(狐)の集団に向けて走り出した。



「 ニ ル ヴ ァ ル ー ラ ッ ッ !!!」



赤く発光した剣で、吸血獣(狐)を次々と斬り倒していく。グレンの疾風の如き斬撃に、奴等は紫色の濁った血を吹き出す事しか出来なかった。



――グァァァァアッッッ


「っっ……、キリが無いなっっ……!」


グレンが幾ら斬り倒しても、吸血獣(狐)は一向に数を減らしている様には見えなかった。


そして彼も、実力は高いが体力が有限の為、早いところ全頭討伐を果たさなくてはならなかった。


「っっ……!はぁぁぁッッ!!!」


ただ、ひたすら吸血獣(狐)を斬り続ける。


返り血など気にしている場合では無い。ここで立ち止まる訳にはいかない。


彼には国民を護るという使命があるのだ。




――ガァァァッッ



しかし、

前方の敵に夢中だったグレンが気付かぬ間に、不意に背後をとられていた。


二本の鋭い牙が彼の背中を捉え、今にも噛み付こうとしたその時だった。




「そこから離れろっ!グレン!」



「っ……?!!」



グレンは後ろに居た吸血獣(狐)を斬り倒し、

瞬時に吸血獣(狐)の群れから離れる。そして……、



――ドガァァァァン ドガァァァァン ドガァァァァン



群れから遥か遠くに離れ、彼が振り返ると同時に、何度も爆発が起きた。



「……、これは……。」



その光景に驚きを隠せないグレンに、駆け寄って来たのは、コウヤとエフィだった。

彼らは避難したのでは無く、王宮周辺でグレンを探し回っていたのである。



「エイムボム、こんな爆発力があるのか。

エフィ、すげぇ危ないモン持ってるなぁ……。」


「コウヤ君、いくつも投げたからでしょ……。」


「君達、危ないから避難しろと言ったはずだが……。」


「あんな大群に一人で立ち向かって、見て見ぬふりは出来なかったんだ。


……俺らに出来ることは、これくらいしか無いけどな……。」


「とても危険なのは(わか)ってます……!

それでも……、それでも私達は何か手助けがしたくて……!!!」




「……。」



「……、ありがとう。助かった。」



グレンは優しく微笑み、彼等に感謝を伝えた。

コウヤもエフィも、その言葉に安堵した表情を見せた。


「グレンさん、ちょっと動かないで下さいね……!」


「……ああ、承知した。」



「 サ ロ ア ・ メ ロ ー ア ! 」



彼女が手をグレンに向けながらそう言い放つと、桃色と黄緑色の光が現れ、足元から彼を包み込んでいく。


「すっげぇ……。」


思わず見惚れるコウヤと、光に包まれながら静かに立っているグレン。


(しばら)くして、コウヤが(まばた)きをしたとほぼ同時に、その光は姿を消した。


「これは驚いたな。私の身体(からだ)から疲労が取り除かれた様だ。」


「おお……、

意外に凄いんだな……、エフィの回復魔法……!」


()()()は余計な一言っ!

……でも、疲れが取れたみたいで良かったです。」


「これでまた、本気で戦えそうだ。ありがとう。」


「いえいえ……。」



しかし、この和やかな空気をぶち壊しに吸血獣(狐)が迫り来ていた事に、グレンは気付いてしまった。



「っっ……!危ないっっ……!」



吸血獣(狐)による噛み付き攻撃の軌道から二人を担いで避けると、即座に剣を抜き、再度斬り倒していく。その斬撃の速さは先程よりも上がっているようだった。


「一旦離れよう……!エフィ……!」


「うん……!」



しかし、疲れが癒えたとは言え、グレンがその吸血獣(狐)の数に圧倒されてしまうのは目に見えていた。


「今度こそやばいんじゃないのかアイツ……!」


「グレンさん、押され気味……。」






「おーい!!!一人で無理すんなぁぁぁ!!!」




「ん……?!」


「……?!」




その時、彼らの背後から声がした。

投稿が遅くなってしまい、申し訳ありません……。

そして、初の感想コメントを頂きました。有難う御座います!


皆様からアドバイス等も参考にしつつ、これからも投稿を頑張っていきますので、

応援よろしく御願い致します!(有馬オレオ)


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