表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/22

「おかえりなさい」


 どうにも聞きなれた男の声がした。


「誰っ!」


 目の前には誰もいない


「後ろですよ」


 振り向けば、そこには俺がいた。男だった俺だ。見間違えるはずがない、数十年毎日見た顔だ。


「あんた誰。なんで私がいるの」

「それを答えてもいいですが。ここでは人目に付きますから、家で話しませんか」


 自分の声で自分の姿をしているのに。中身は別人だ。俺がここに居るからな。信用してもいいのか、疑問が残るが。

 槍を持ち、鎧を付けたままここで話すのも問題だ。ここは、おとなしくしたがった方がいいか。


「さっさといきましょ」

「そんなに急がないでください。家の鍵を持ってるのは私ですよ」

「なら鍵をよこしなさい」

「いやです。ほら行きますよ」


 俺の姿をした誰かの足取りは確かで、すぐ家に付いた。

 

 先に家に入った俺が、玄関で待っていた。


「おかえりなさい」

「ただいま」


 十年、十年だ。十年間、誰も帰りを待ってくれる相手がいなかったのに。俺が「おかえりなさい」て言っている。おかしな話だ。

 俺の姿をした誰かは、リビングの椅子に座り。俺は壁に寄り掛かってる。邪魔な兜を脇に抱えて。鎧を着たままじゃ椅子になんて座れないからな。


「それじゃあ、お話ししましょうか」

「なんで私の姿をしてるのよ」

「そうですね、そこから話しましょうか。この体も、あなたのその体も。どちらも防人(さきもり)枝垂(しだれ)という人間の体です」

 防人枝垂、それが目の前にいる俺の名前だ。だからこそ、この女の体も、防人枝垂の体ということがわからない。

「あなたは、あの空間でフリアージの攻撃を受けました。腹部に直撃したその攻撃は、徐々にあなたの体を蝕んでいきました」


 体が黒くなっていったあれか。


「そしてヒーローが来る頃には完全に侵食され、フリアージになっていました」

「待ちなさい。どういうことよ」

「あなたの体は、フリアージになっていたのです。それも、ヒーローが来る前から。しかしあなたは、意志の力だけで、フリアージになった体を抑えていました。普通の人間であれば不可能なことです」


 あの時すでに、フリアージになっていた?

 じゃあこの体は、それに目の前にいる俺は何なんだ。


「話を続けますね。そしてヒーローが居なくなると。あなたの目の前に聖遺物が現れて、あなたはそれをつかんだ」


 そう、そして体が内側から燃えているような激痛に襲われた。


「聖遺物の力で、フリアージになっていた体は浄化されていきます。しかし、フリアージの力が強すぎて、逆に聖遺物は浸食されていきます」


 この体になるときの話か。


「そしてあなたの身体は、浄化された身体と、フリアージの体に別れてしまいました」

「待って、別れたってどういう事よ」

「そのままです。あなたはフリアージの体でフリアージを倒しに行きました。後ろを見なかったので気づかなかったかもしれませんが、後ろには浄化されたあなたの体があったのですよ」

「じゃあ、あなた誰よ」

「私は、元は聖遺物に宿っていた意志。聖遺物が侵食され追い出されてしまった存在です。聖遺物という入れ物を失った私は消えてしまう。だから、あなたの置いていった体の中に入りました」

「元はこの聖遺物の中に居たっていうの」

黒く染まった槍を見つめる。

「はい。ちゃんと名前もあるんですよ。聞きたいですか?」

「聞いてあげるわ」

「オルレアンの乙女。ヒーロー(英雄)としての名前はジャンヌ・ダルクと言います」

「じゃあ、この槍は」

「私が使っていたものですね」

「この姿は」

「生前の私によく似てますね。肌と髪の色は違いますが」

「じゃあ何、ジャンヌダルクの意志が防人枝垂になって。防人枝垂の意志はジャンヌダルクになったていうの」

「そういうことですね」


 馬鹿げてる。けど、目の前に自分の顔で、声で、言われたことが嘘だと思えない。


「私の体返しなさいよ!」

「返しますよ。もともとそのつもりでしたから」

「そ、そう。早くしなさいよ」

「手を出してください」

「これでいいの」


 差し出した手に俺が手を重ねると、意識が、視界が吸い込まれ。目の前に女が立っていた。ただ髪色も肌の色も変わっていた。


「これで戻れましたね」

「お前、姿が」


 白かった、髪と肌の色が変わっていた。薄いブラウンと健康そうな肌に。それに来ていた鎧も、布の占める割合が多くなり、ドレスの一部に胸当てや小さな防具がついているような。そんな姿になっていた。


「ジャンヌで良いですよ。これは元々の髪色と肌の色です。鎧もあんなに硬そうなものではなかったんですよ。おそらくフリアージの力は枝垂さんの魂に付随してるみたいですね」

「まて、俺はどうなってるんだ。肌の色は変わってるようには見えないが。髪はどうなってる」

「ちょっと白っぽくなってますね。大丈夫ですよ、白髪に見えるだけですから」

「まあ、それくらいならいいか」

 どうせ見る相手は男連中ばかりだ。営業をする訳でもない。見た目に気を使う必要も無い

「早速これからのことを話したいのですが。その前に着替えはありますか、鎧を着たままだと色々動きづらくて」


 確かに、椅子にも座れないし。動きずらいだろう。


「妻の部屋に、服があるはずだ。付いて来てくれ」

読んでくださりありがとうございました。

[たいあっぷ]というサイトで縦書き、しかも絵がついて状態で読めます。気になる方は探してみてください。タイトルも作者名も同じですので。

続きを買いたいという票が集まると二巻目が出せるのでよろしくお願いします。

誤字脱字は下に専用のがあるので、ありましたらよろしくお願いします。感想などもお待ちしています。そして読んでくれてありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ