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 もはや、肉眼じゃ追うことができなくなった。剣と手がぶつかり合って、止まるその瞬間だけが見える。早すぎてどうなってるのかもわからない。

 地面が抉れて、建物に穴が開いて。次の瞬間には空中に姿が見えたりと周りの被害が大きくなるが、この檻はびくともしない。飛んでくる破片も、檻の手前で弾かれる。

 こうなってくると暇だな。戦闘を目で追うこともできないし、暇だ。檻につかまってる俺が言うことじゃないが。


『枝垂さん』

『ああ、ジャンヌかなんだ』

『すごい音してますけど』

『本気で戦っているからな。もうどうなってるかもわからん』

『そうですか、この辺にいるフリアージはすべて倒しました』

『倒したって、大きいのもか』

『はい、ちょっと大変でしたけど。槍を刺して内側からこう槍を生やしてブスブスッと』


 俺がジャンヌになってる時よりやってることが過激だな。放送できませんみたいな感じになってるんだろうな。まあ、そう時間がたたないうちに消えるんだろうが。


『フリアージがいる場所はわかるもんなのか』

『はい、なんか感覚的なもので。外れたことはないですよ』

『じゃあ、この辺りにはもういないんだな』

『はい、あまり数は多くなかったみたいですね』


 確かに、最初に大量に出てきてからは出てなかったか。あの大きいのが最後だったのかもな。

 音の前の二人は変わらず戦ってるらしい。どっちが勝ちそうなのかもわからないが。建物への被害はすごいことになってるな。まだビルが崩れていないのが不思議なくらいだ。


『私どうしましょうか』

『今どこにいるんだ』

『さっきと同じビルですよ』

『ああ、居るな。とりあえず見てたらどうだ。介入すると面倒なことになりかねんしな』

『わかりました。ちなみに今アーサーさんが押されてますよ』

『そこから見えるのか』

『はい、どんな動きをしてるかくらいは』


 ヒーローっていうのはどこまでも規格外な存在だな。

 ザッと地面を踏みしめる音がして、視線を目の前に戻すと。アーサーとヴィオの二人の動きが止まった。


「力使わないの?」

「お前だって使ってないだろ」


 アーサーの力は光だよな。攻撃だったり、守りだったりに使っている。ヴィオの力は、この檻を作ったのくらいしか見てないからな。よく分からない。


「だって使っちゃったら、すぐ終わっちゃうんだもん。それじゃ集まらないでしょ?」

「戦いは楽しむものじゃない!」

「違うよ。戦いは、争いは、楽しむものだよ」


 ヴィオの声が低くなり、空気が一気に重くなった。アーサーの顔が引き攣り、冷や汗が流れ出した。俺も息が苦しい、呼吸が上手くできないっ。


「あっ。おにーさんごめんね」


 息苦しさがなくなり、重苦しさも無くなった気がした。だが、アーサーの顔は未だ引き攣ったままで。冷や汗も止まっていない。器用だな、俺だけあの重苦しい雰囲気から外したのか。


「それで、あなたの答えは。ヒーローさん」

「変わらないっ。戦いは楽しむものじゃない!」

「そっか。じゃあいいや、やーめた。楽しくないのに戦っても、しょうがないもんね」

「なっ」


 やめたと言って檻のところまで戻ってきたヴィオに、アーサーの動きが止まり、驚きを隠せずにいた。


「だって楽しくない人と戦ってもつまらないんだもん。そもそもなんで戦ってたんだっけ?」

「ヴィオが始めたんだろう」


「そうだっけ。まあ、いいや。おにーさん、一緒に行こ」

 ヴィオが檻に触れると、砂のようにサラサラと崩れて行く。俺が立ち上がると椅子も同じように崩れていく。

 檻と椅子のすべてが消えて、ヴィオが俺の手をつかもうとこちらに手を伸ばした時。復活したアーサーが割り込んだ。


「何をするきだ」

「何って、一緒に行くんだよ。この世界は私たちに侵略されるから安全なとこに」

「そんなことさせない。この世界の侵略も、この人を連れていくことも」

「だって私に勝てなきゃ、この世界を守ることなんてできないよ?」

「勝つ。俺一人で無理なら仲間と」

「ふーん、おにーさんは?」

「まだいけないな。この世界に未練がなくなったら、一緒に行くさ」

「ちょ、先輩っ⁉」

「お前はすこしだまってろ」


 アーサーがなんか言ってるが無視だ。こいつは関係ないからな。


「そっか、じゃあヴィオたちが侵略しちゃえばいいんだね。だって未練がある世界がなくなるもんね」

「まあそういうことだな。未練自体をなくそうとは思わないのか」

「ヴィオ的にやだ。ヴィオだって未練はたくさんあるもん。だからおにーさんの未練をどうこうすることはしないの」

「そうか」

「うん」


 突然、ヴィオの背後に小さな亀裂ができて、穴が開く。空にある亀裂よりは小さいが同じようなものだろう。


「今日は侵略宣言しに来ただけだから。まあ会おうね、おにーさん。ばいばーい」

「あ、まだ聞きたいことが」


 穴の中にヴィオが消え、その穴も空の穴も消えて辺りに静寂が戻り。穴のあった方に手を伸ばすアーサーと俺だけがその場に取り残された。


「あのー先輩」

「なんだ」


 アーサーが遠慮気味に話しかけてくる。と言うか少し前からいつもの口調に戻ってるから。浅野って言った方が正しいか。

 姿がアーサーなのに口調が浅野の時のだと違和感がすごいな。コスプレしてるようにしか見えないぞ。


「先輩って、面倒ごと嫌いだったすよね」

「そうだな」

「言いにくいんすっけど、一緒に来てくれないっすかね」

「来いの間違いじゃなくてか」

「まあ、そうともいうんっすけど」

「わかったよ」

「たすかるっす。じゃあ少し待っててほしいっす、あっちの子にも声かけてくるんで」

「わかった」

『ジャンヌそっちに行くぞ』

『わかりました』


 こうなるだろうとは思っていた。フリアージが消えてるんだ、ジャンヌがいることはわかってたんだろう。俺がここに居るから逃げようにも逃げれないしな。

読んでくださりありがとうございました。

[たいあっぷ]というサイトで縦書き、しかも絵がついて状態で読めます。気になる方は探してみてください。タイトルも作者名も同じですので。

続きを買いたいという票が集まると二巻目が出せるのでよろしくお願いします。

誤字脱字は下に専用のがあるので、ありましたらよろしくお願いします。感想などもお待ちしています。そして読んでくれてありがとうございます。


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