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「その人を、離せー!」


 遥か頭上、雲の中からヒーロー落ちてくる。昨日もアーサーは空からやって来たな。ジャンプ力が高いのか、もしかしたら空の上に何かあるのかもしれないな。

 このまま落ちてくれば、ヴィオか俺に当たるような軌道のまま落ちてくるアーサーを、ヴィオはそのまま横にずれて避けた。

 軌道をずらせないのか、アーサーはそのまま地面に激突し粉塵が舞った。


「おにーさん、ヒーロー死んじゃったみたいだけど」

「あそこまで馬鹿だとは俺も思わなかったんだ」


 粉塵の中から、いまだにアーサーが姿を現さない様子を見るに。あいつ、本当に死んだんじゃ……


「勝手に殺すな!」

「「あっ、生きてた」」

「ちょっと先輩まで、殺さないでください!」


 未だに粉塵は晴れないが、声は元気そうだから生きているらしい。昨日までは格好いいヒーロだと思っていたアーサーだが。

 中身が浅野だと思うと格好よく思えないのはなんでだろうな。どちらかと言えば頼りない気がしてくるんだが。


「あのヒーロー本当に強いのお兄さん」

「訂正させてくれ、多分強いはずだ」

「じゃあ、戦ってみればわかるよね」


 ゆっくりと地面に降りていく間、アーサーは粉塵から出てくることはなかった。


「さてと、おにーさんはそこに居てね」


 地面に降りたヴィオは俺から手を離すと、檻のような何かを作り出して俺を閉じ込めた。

 材質もわからない、この檻には触れる気にはなれないな。あとご丁寧に、椅子まである。


「檻にも椅子にも触っても大丈夫だからね。それに硬いから、攻撃が飛んできても大丈夫だよ」

「ありがとよ」

「どーいたしまして。おにーさんはヴィオのお気に入りだもん」


 そろそろ、粉塵が晴れるころだが。アーサーはなにをしているんだ。

 徐々にアーサーの姿が見えてくる。立っていれば見えそうな位置には姿が見えず。それよりも低い腰のあたりから影が見え始めた。しゃがんでるようにも見えるが。


「あっ」

「はぁ……」


 粉塵が完全に晴れて、はっきりとアーサーの姿が見えた。片足が地面に嵌った、馬鹿らしい姿が」


「ねぇおにーさん。私今からあれと戦わないといけないの?」

「一様あんな姿でもヒーローだ。情けないことにな」


 ヴィオは足が抜けるのを律儀に待つらしい。四苦八苦して地面から、足を抜いたアーサーが剣を構えた。


「ヒーローに会ったら名乗れって言われてるから名乗ってあげる。律者機関、第一律者ヴィオヴェルーエチェ・ヴァゼフォートよ」

「俺はアーサー・ペンドラゴン。勝負だヴィオベツッ」

「ヴィオヴェルーエチェ・ヴァゼフォート」

「ヴィオヴェルチッ……」

「ヴィオヴェルーエチェ・ヴァゼフォート」

「第一律者!」

「もうそれでいいよ」


 なんとも締まらな状況のまま戦いは始まった。

 アーサーが持つのはもちろん剣だ。聖剣エクスカリバーとかそんな名前だったはずだ。

 相対するヴィオは武器らしいものを持たないまま、素手で戦っている。アーサーが剣を振るえば、素手でそれを弾く。そして、弾いた勢いのままアーサーを殴りつけていた。

 片方が武器を持っていて、片方が素手だったとき。余ほどのことがない限り、武器を持っている方が有利だ。

 だがヴィオはその余ほどのことに当てはまるらしい。素手のままアーサーと戦い、そして互角以上に戦っている。

 武器を使わないで、ここまで強いとなると。素手自体が武器なのかもしれないな。格闘家なんかは素手自体が武器だといわれるくらいだ。ヴィオもそんな感じかもしれないな。


『枝垂さん怪我はありませんでしたか』


 突然ジャンヌの声がした。すっかり忘れていたが、こうやって話せたんだったな。


『ジャンヌ。大丈夫だ今のところは』

『良かったです。今ビルの上にいるんですけど見えますか?』

『どこのビルだ』


 大きいビルから小さいビルまで。周りには沢山ある沢山ある。


『枝垂さんから見て右にある一番高いビルです』

『見つけた。豆粒くらいにしか見えないが』

『良かったです』

「ねぇヒーローさん。こんなところで私と遊んでていいの。フリアー沢山出てきてたのに」


 ヴィオが戦いの最中、話しかけていた。内容を聞くに確かに、アーサーはここで戦って大丈夫なのか。

 亀裂が開いたとき大量のフリアージが出てきた。今もそこらかしこにフリアージの姿が見える。大きいフリアージも健在だ。未だに人々が逃げているはずだが。


『枝垂さん、なんだか街が変なんですよ』

『ああ確かに変だな』


「大丈夫じゃなきゃ戦ってない」

『絶対わかってないです、その言い方は。いいですか枝垂さん、今この街には』

「今この街には」

「『人が誰も居ないんです』だ」


 ジャンヌとアーサーの言葉がそろった。


「昨日の空間震、異空間の中に捕らえるはずだったのに現れなかった。そして今回も。だから急遽変えたんだ、捕らえる対象を人に。そしてこの街には、今人が居ない。襲う対象のいないフリアージはただ街を彷徨っているだけ。第一律者、お前を倒してからでも、フリアージは問題ないんだ」

『そうらしいな。とりあえずジャンヌ、フリアージを倒していてくれ。こっちはアーサーが何とかするらしい』

『わかりました』


 ビルの上から、豆粒みたいな大きさのジャンヌが降りるのが見えた。とりあえず、何もしないよりはいいだろう。

 アーサーとヴィオは変わらず戦っているが。戦い方が変わって来た。ヴィオがあまり動かなくなった。

 アーサーは動き回って攻撃をするのに対して、カウンターをしている。それに、なんだがヴィオの顔がつまらなそうな表情になっている。


「それってヴィオを倒せるって思ってるの」

「ああ」

「無理だよ、だってだいぶ手加減してあげてるもん。えいっ」


 ヴィオのかわいらしい声とともにアーサーが殴られて吹き飛んだ。まるで、瞬間移動でもしたみたいにアーサーの前に現れてただ殴っただけなのに。

 ヴィオが立っていた地面は抉れていて、それだけで実力が分かってしまう、手加減されていたんだと。アーサーは建物の壁を突き破って中から出てこない。


「今のに反応できなきゃ、ヴィオは倒せないよ。百年くらいしたら勝てるかもね?」

『すごい音しましたけど、大丈夫ですか?』

『俺はな、アーサーの方はわからんが』

『とりあえず倒せそうなのは倒してますけど。助けは必要だったりしますか』

『アーサー次第だろうな。ダメなときは俺が誘拐されるし、駄目になったら呼ぶさ』

『すでにその状況が駄目な気がしますけどわかりました』


 建物から、アーサーが出てきた。目立った傷はなさそうだな。さすがはヒーロー。

「あれ、けっこう頑丈だね」


「ヒーローを甘く見るなっと。一つ聞きたいんだけど、あの檻はどれくらい頑丈なんだ」


 アーサーが俺のいる檻を指さしててヴィオに聞いた。


「さっきのパンチでも余裕だよ」

「そっか。じゃあ許可も出たことだし。はっ!」


 今度はアーサーがヴィオの目の前に急に表れてその剣を振るった。ヴィオはその剣を弾いて、後ろに下がった。

 アーサーが出てきた建物の壁は、さらに穴が広がっている。


「そっちも手加減してたんだ」

「いろいろあるんだよ、そっちと違って」


 そう言えば最初、異空間の中で会ったときは周りの建物はボロボロだったな。そして昨日は、最後の方にちらっと来ただけだが。建物に被害はなかった。

 異空間では全力を出せて、現実世界では抑えなくてはいけない事情。まあ、周りへの被害だろうな。現実世界じゃ、そこで生活する人がいる。

 建物が崩れれば苑で働いていた人が職を失ったりと色々ある。さっき言った許可っていうのは多分そのことだろうな。

 全力を出せる許可、つまりは建物を破壊してもいい許可か。何もかもが十年前に戻ったみたいだな。


「楽しく遊べそう、壊れないでね?」

「勝つさ」

読んでくださりありがとうございました。

[たいあっぷ]というサイトで縦書き、しかも絵がついて状態で読めます。気になる方は探してみてください。タイトルも作者名も同じですので。

続きを買いたいという票が集まると二巻目が出せるのでよろしくお願いします。

誤字脱字は下に専用のがあるので、ありましたらよろしくお願いします。感想などもお待ちしています。そして読んでくれてありがとうございます。


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