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畏怖×if 無に帰す魔法と八つの魔眼  作者: 金剛陽薙
第5章 枯れた大地を屍が這う
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第88話 聞き込み

「ちょっとお話いいっすか」

「なんだ?」

「この辺りに暇な人っているっすか?」

「ああ? いるわけねえだろ。そんなこと聞いてどうすんだ」

「人探しをしてるっす」

「そうかい、意味分かんねえな。煽りに来たんなら帰んな」


 コラブルは聞き込みを続けていた。しかし、成果は挙げられていなかった。


 暇な人間などまずいなかった。それに加えて彼は、リヴァイアにいては絶対になれないような体型をしているので、相手の癪に触るらしい。結果、町中の人間を煽り散らしに来た荒らしのようになっていた。


「痩せた方がいいんすかね…」


 切実な呟きだった。この時に限っては、彼は本気で痩せようと思っていたかも知れない。


「……次はあの人にするっす」


 リヴァイアでは体型などの問題でうまくいっていないが、コラブル自身の性格は聞き込みに向いていた。人見知りをしない、めげない、相手を選ばない。老若男女問わず話しかけていた。


「すいませんっす」

「……なんでしょう」


 相手は三十ほどの女性だった。長い茶髪を一本に結い、リヴァイアの冬服を身につけていた。化粧はなく、全く着飾っていない。左手に提げられた手提げからは野菜が飛び出していた。


「聞きたいことがあるんすけど」

「何あれー」

「ダメよ見ちゃ」


 突然遠くを通りかかった親子に恥辱を受けた。コラブルは決して心が鋼鉄な訳ではない。傷つく時は普通に傷つく。


「今のは効いたっす……」

「どうされました……?」

「いや、なんでもないっす」


 立ち直りは早い方かもしれない。


「この国で暇な人っているっすか?」

「暇な人、ですか? いないと思いますが…どうしてそんなことを聞くんです?」

「人探しをしてるっす」

「人探し、ですか。具体的にはどんな人ですか?」

「それは秘密っす」

「……そうですか」


 コラブルは女性の振る舞いに違和感を覚えた。妙にソワソワしている。


「どうかしたっすか?」

「え、あ、いえ……家に息子を置いてきているものですから、心配になってしまって」

「じゃあ手短にいくっす。暇じゃなくても、自由な時間を持ってる人っているっすか?」

「自由な時間……」


 女性はしばらく悩んでいた。


「……そうですね。平民にはまずいませんが、上の立場の人間なら、もしかしたら自由な時間があるかもしれません」

「上の立場っすか、なるほどっす。協力感謝するっす」

「いえ、気にしないでください。それでは」


 話が終わると女性は、右手に持っていた何かを手提げにしまいながら、足早に去っていった。コラブルはその後ろ姿を少し見つめた後、家に向かって歩き出した。

















「ただいまっす」

「あ、おかえり」


 遅めの昼飯を取ろうとしていた時、コラブルが帰ってきた。案外早かったな。


「お前昼飯食った?」

「まだっす。その為に帰ってきたようなもんっす」

「え、聞き込みは?」

「そっちも抜かりないっす」

「そっか、良かった」


 ちなみに昼飯は俺が作っています。自信はない。味見してみよう。


「……イマイチだな」

「食えりゃいいっす」

「そうだな。フレアー、ご飯にしよー」


 昼飯は俺とコラブル、フレアの三人で取った。カルディアも呼ぼうかと思ったが、部屋に入るなと言われているので、声をかけるだけかけて後は何もしなかった。


 さて。


「何か収穫はあったか?」

「なくはないっす。まず平民には暇な人間がいないってことと、偉い人間なら自由な時間があるかもってことっす」

「偉い人間……? 忙しくないのかな」

「リヴァイアとゴッデスでは訳が違うだろう。ゴッデスの領主は激務だろうが、リヴァイアの領主はそうはならないはず」

「じゃあ怪しいのはリヴァイアの領主ってこと?」

「あくまで例えの話だったのだが……候補ではある。言い方は悪いが、実質お飾りのようなものだろう。自由な時間を持っているはず」


 候補はちゃんと絞れたみたいだ。リヴァイアはゴッデスほど発展していないみたいだから、偉い人間っていうのも少数だろうし。


「となると次は、どうやって接点を持つかだな。お願いすれば会わせてくれるかな」

「可能性はある」

「じゃあオイラこれから行ってくるっす」

「迅速だな。気をつけろよ?」

「分かってるっす」


 コラブルはまた軽く支度してすぐに出発してしまった。


「午後は何しようかな……魔法の練習でもするか」


 俺は炎壁の練習で時間を潰すことにした。























「すいませんっす」

「ああ? なんだ、さっきのデ……にいちゃんじゃねえか。今度はなんだ」

「領主様って何処に行ったら会えるっすか?」

「探してる人は領主様だったのか?」

「多分っす」

「意味分かんねえな……アグリクトに居んじゃねえか」

「アグリクト? 何処にあるっすか」

「この道をまっすぐ行きゃデッカい建物が見えてくる。それだ」

「ありがとうっす」

「二度と来んなよ」

「場合によるっす」


 コラブルは言われた通りに道を真っ直ぐ歩き始めた。


「……意外と強えな」


 おじさんがポツリと呟いた。

















「おお、栄えてるっす」


 コラブルが施設に入ると、中は大勢の人で賑わっていた。

 見たことがないほど大量の野菜に、それを大きく取り囲んだ数十名の男性。それとは別に、野菜を売っている売店。さらに、飲食店も備わっているようだった。


 コラブルはまず事務室へ向かった。


「すいませんっす」

「はい、何の御用件でしょう?」

「領主様ってここにいらっしゃるっすか?」

「少々お待ちください」


 笑顔で受けた女性は事務室の奥へ向かった。少しの間、コラブルはソワソワしながら待っていた。


「お待たせしました。いらっしゃいますが、別の用件で多忙なため、今は面会することができません」

「いつなら会えるっすか?」

「いつ頃をご希望ですか?」

「出来るだけ早くがいいっす」

「そうですね……本日の夕方ごろになるかと思います」

「分かったっす。待つっす」


 そう言い残し、コラブルは事務室を離れた。当然やることがないのだが、幸いにも目の前に珍しい景色が広がっていたので、それを見学することにした。

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