表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
畏怖×if 無に帰す魔法と八つの魔眼  作者: 金剛陽薙
第5章 枯れた大地を屍が這う
96/137

第86話 寝る

「戻りましたー」

「疲れたっす」

「そういう割には平然としてるね」

「成長してるんす」

「本当かなぁ?」

「そこに疑う余地はないっす」


 俺たちはいつも通り修行を終え、家に帰ってきた。


 ガイウスたちが依頼を継続するということで、俺たちも修行を継続していた。多少成長はしているが、本格的に始めてから大体一週間しか経っていないので、まだまだ伸び代がある。どうせならもう少し強くなってから移動したい。


「戻りました。いい匂いですね」


 俺は台所から漂う香ばしい匂いに誘われ、まずアッカドに挨拶した。今日の料理はいつもと感じが違っている。やけに力が入っているな。


「ん? ああ……お帰り。もう少し待ってくれ」

「はい、楽しみにしてます」


 邪魔をしてはいけないと思い、一度離れて居間の椅子に腰掛けた。フレアはもう二階に向かったようだ。毎日何してるんだろう。


「クンクン…今日はいい匂いがするね。何か良いことでもあったのかな」

「かもな」

「楽しみっす」

「……戻ったか」

「あ、ガイウス。風呂上がりですか?」

「ああ」


 風呂の方からガイウスが出てきた。髪は濡れたまま、軽装をまとい全身から湯気が出ている。カッコいい。


「リヴァイアの風呂って気持ち良いですよね」

「そうだな。ゴッデスに比べれば、雲泥の差だろう」


 外が寒い分ここの風呂はとても気持ち良かった。入る必要はないが、精神を癒すために俺も三日に一度ぐらいで入っています。


「今日はどうでした? アッカド、やけに力が入ってますけど」

「……悪いが、良い知らせはない」

「え?」


 驚いた。良いことがあったわけじゃないのか。


「じゃあなんで…?」

「それについて話がある。夕飯の後、お前たちはここに残ってくれ」

「僕も?」

「ああ」

「オイラもっすか?」

「ああ」


 修行組全員かな。なんの用だろう。


 その後は普通に夕飯を取った。やはりいつもより美味しかった。なのに悪いことがあったというのは本当だろうか? ユーリィが何故かいなかった。それに関係しているのかもしれない。


「揃っているな」

「はい」


 夕食後、食卓には修行組とガイウスが残っていた。フレアもご飯を食べに降りてきていたので、そのままこの場にいる。


「最近の調子はどうだ」

「えっと……上々です」

「そうか、ならいい」


 なんだ急に。質問がフワフワしている。

 ガイウスは椅子に腰掛けることなく、両手を石の机について軽く息を吐いた。


「端的に言おう。新たな問題が生まれた。その解決をお前たちに一任したい」

「新たな問題ってなんすか」

「死体を操る魔法使いだ」

「な!?」


 予想外も予想外。死体を操るって、カカトカバネのやつだよな? やっぱり誰かが操ってたのか。


「今日、犠牲者を出した」

「犠牲者ぁ? 君たちがいたのに?」

「俺たちがいたのにだ。多少油断していたのも事実だが、強敵だったらしい」

「ふーん……」

「その魔法使い……仮称『ネクロマンサー』としよう。ネクロマンサーに襲われ、ユーリィも負傷した」


 だからユーリィいなかったのか。上で休んでいるのかもしれない。


「お前たちにはネクロマンサーを見つけ出し、捕縛してほしい」

「ちなみにですけど、そのネクロマンサーってのは、具体的にどれくらい強いんですか?」

「普通のアッカドでは厳しいぐらいだ」

「へー…」


 『普通の』が引っかかるが……いや強くないか? それを俺たちに任せるのか。随分と信用されたものだ。

 答えないわけにはいかない。


「いいよな、カルディア?」

「僕に確認しないでよ。別に立場的に上ってわけじゃないよ」

「あ、そっか。じゃ、やろう」

「……いいよ。実戦で鍛えるのもありだし」

「頑張るっす」

「私も手を貸そう」


 みんなやる気のようだった。


「助かる。迅速な解決が望ましい。明日から取り組んでくれ」

「はい」

「頼んでおいてなんだが、気をつけろ。敵は平気で人を殺す」

「ならなおさら俺が適任ですよ。なかなか死なないので」

「……そうだな。頼りにしている。俺はもう休む。お前たちも体には気を使え」


 そう言い残し、ガイウスは二階に向かった。エルリアの元へ向かったのだろう。


「……『ネクロマンサー』か。どんな奴なんだろう」

「きっとろくな奴じゃないっす」

「こればかりはコラブルと同感だね。魔物の死体なんか操ってどうするんだか」

「何故私たちを襲ってきたのだろうか。…何か情報が漏れているのかもしれない」


 カカトカバネの死体に向かって思いっきり魔眼使っちゃってたし、そういう意味でも色々バレている可能性はある。


「何にせよ、調べてみなきゃ何も分からない。今日はもう寝て、明日から早速調査しようか」

「調査ってどうやるんだ?」

「カルディアの魔眼でなんとかなるんじゃないっすか」

「それはあんまり期待できないな」

「悪かったね未熟で。……この際僕も魔眼の練習しようかな…」

「お前たち」

「はい?」


 ガイウスが二階から降りてきた。右手には黒い何かで汚れた手記が握られている。


「……なんですかそれ?」

「手がかりだ。ネクロマンサーの目的は、あくまで推測だが、人の死体を操ることらしい。そのために自ら死体を調達している」

「調達っすか?」

「ああ。今日一人殺された。遺体は持っていかれた」

「うわぁ思ったよりエグいねー」

「怖くなってきたっす…」


 厳しい戦いになりそうだ。


「これはお前たちに預けておく」


 そう言いながらガイウスは手記を手渡してきた。


「俺たちは寒冷化に関することで手一杯だ、助力はできない。手がかりもこれしかないが、尽力してくれ」

「はい、頑張ります」

「……可能なら、すぐに寝てくれ」

「あ、はい」


 リヴァイアの夜は寒すぎるので、ガイウスたちもシルフィーのところではなく屋内で寝ていた。エルリアは女性陣の寝室、ガイウスは居間で寝ている。男性陣の寝室はもう一杯なので、こうなってしまうのは仕方がない。居間で寝るためにわざわざ布団も買ったようだった。故に俺たちが寝ないと寝れない。


「もう寝るか」

「最近は究極的に早寝っすから、究極的に早起きできるっす」

「だな。そっちの方が何かと都合良いだろ」

「せめて体は洗いなよ。ただでさえ清潔感ないんだから」

「オイラなんで今ディスられたんすか?」

「知るか」

「じゃ、風呂入ってくるねー」

「私も入る」

「一緒に入るのぉ?」

「時間が勿体ない」

「仕方ないなー」


 カルディアとフレアは洗面所に向かった。

 ここの風呂変に広いから、二、三人同時に入れるんだよな。ガイウスは一人で入ってたけど。


「すいませんガイウス。もう少し待ってください」

「構わない。……そうだな、少し話に付き合ってくれるか」

「話、ですか?」

「ああ。犠牲者についてだ」

「犠牲者……」


 ガイウスはゆっくりと椅子に座り、肘をついて手を組んだ。


「リヴァイアの人間だ。今日初めて会ったし、深い関わりもない。だからはっきり言うと、悲しみはあまりない」

「正直ですね」

「上辺で憐れむよりはいいだろう。だが、アッカドはそうもいかない」

「……前から気になってたんですけど、アッカドって仲間認定早いですよね」

「そうだな」

「なんでですか?」

「詳しい理由は知らん。聞いたことがあるような気もするが、覚えていない」

「珍しいっすね。そういうの忘れるタイプには見えないっすけど」

「下らん理由だったのだろう。あるいは嘘かもしれんが」


 嘘。嘘か。そういえば、アッカドの過去の話だけ聞いていない。向こうから話そうとしてくれた事もない。話したくないのか?


「とにかく、今日の夕飯が豪華だったのはそれが理由だ」

「えっと……?」

「イマイチピンとこないっす」

「他人に近い『仲間』を失ったんだ。食わせてやりたかったとか、そういうことを考えていたのだろう」

「どのみちピンとこないですけど……そういう事もあるのかな」

「こればっかりは本人にしか分からないっす」

「ぅわあああ!?」


 突然風呂場からカルディアがタオル一枚で飛び出してきた。それに続いてフレアも同じ格好で出てきて、早歩きで俺の後ろに隠れた。身体中ずぶ濡れで、髪も当然おろされている。寒そう。


「なんつう格好してんだよ…!」

「すまないがこっちを見るな。恥ずかしい」

「じゃなんで出てきたんすか」

「中に……こっちを見るなと言っているだろう!」

「グフゥ!?」


 フレアがコラブルの背中を蹴飛ばした。俺はすぐ目を逸らした。危ねえ…。


「中に、なに?」

「虫がいる」

「はぁ?」

「デッカい虫がいるんだよ! 水の中でも生きていけるタイプの!」


 カルディアは風呂の方を指差して必死に叫んでいた。虫嫌いなのか。


「どんくらいデカいんだよ」

「アラタの両手ぐらい…!」

「デカっ!?」


 俺は自分の両手を見た。グーかパーかは分からないが、どちらにせよ前代未聞なレベルでデカい。


「なんとかしてよ! 狼でしょ君!?」

「俺!? 無理無理ムリムリ…」

「コラブル!」

「オイラも嫌っす」

「情けない奴らだ」

「無能どもめ!」


 好き嫌いは誰にでもある。そこまで言われる筋合いはない。


「……俺がなんとかしよう」

「お、流石ガイウス! やっちゃって!」

「はぁ……」


 ガイウスはゆーっくりと立ち上がった。ちょっと不機嫌そう。

 ガイウスはこちらを見る事なく、しかし俺らに聞こえるボリュームで、


「いつになったら寝れるんだ…」


 ポロッと本音を漏らした。ゆっくりと風呂場へ入って行き、しばらくして虫を雑に掴んで出てきた。そしてそれを持ったまま外へ出て、少しして手ぶらで帰ってきた。

 なんだか異様に申し訳なくなって、俺は風呂には入らずに急いで寝た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ