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畏怖×if 無に帰す魔法と八つの魔眼  作者: 金剛陽薙
第5章 枯れた大地を屍が這う
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第73話 修行再開

「さて、それじゃあ今日も張り切っていこうか」


 俺たちは再び修行に身を投じるため、いつもの広場に来ていた。メンバーはいつもの如く俺、カルディア、コラブル、フレアの四人だ。ガイウスたちも以前のように金を稼ぎに行ったらしく、今朝目覚めた時にはもういなかった。ちなみにエルリアの寝顔も確認したんだけど、とても気持ちよさそうに眠っていた。それはもう可愛くて、スマホがあったら激写していたところだ。


「さて、アラタ。昨日言われたことは覚えているかな?」

「昨日……誰から言われたこと?」

「ガイウスだよ。ほら、言われたろ? 『目標はもう少し明確に持て』って」

「ああ、それか。言われたな」


 ガイウスに色々教わった時に言われた言葉だ。よく覚えている。


「そこで、僕が目標を提示しようと思う」

「カルディアが? てっきり自分でつけるもんだと思ってた」

「他人に決められた方が強制力がある。仮に自分で決めるとして、どんな目標にするつもりかな?」

「うーん……」


 障壁を完璧にするとか、強化魔法をマスターするとかかな。


「それじゃダメだ!」

「え? ……俺今声に出したっけ」

「魔眼で見たよ!」

「潔いな」


 よく分からないところで最上位の魔法を使わないで欲しい。


「もう一度言うけど、それじゃダメ。明確な目標っていうのはそういうのじゃない」

「じゃあ、例えばどんなのだよ」

「『〇〇に勝ちたい』とか!」

「……なるほど」


 正論。確かにその通りだ。


「でもなぁ、競える相手はアッカドとフレアぐらいだし」

「あれ? オイラは?」

「お前戦いに関しては弱いだろ」

「口で負かすっす」

「なんの意味があるんだよ」


 コラブルが会話に入ってくると話が脱線しがちだ。目標はちゃんと決めたいし、今は無視しよう。


「私も今は本調子じゃない。目標としては適していないと思う」

「そっか。じゃあアッカドってことになるけど……」

「無理っす」

「ですよねー」


 一時はアッカドを目標にしていたが、あれは何十年もかけてやっと追いつけるレベルだ。今定める目標としてはいささか強すぎる。


「アラタ、あいつらは覚えてる?」

「あいつら?」

「君を襲ってきたやつ」

「……あー、あの奇抜な格好した女の子と鎧着た男の子か」


 なるほど、カルディアの言いたいことが分かってきた。


「うんうん、分かってくれたみたいで僕は嬉しいよ。でもあえて口に出そう。彼ら、丁度良いんじゃないかな」


 丁度良い。カルディアの言う通り、彼らは俺が目指す目標としてとても丁度良い強さをしている。あの女の子は俺より少し強かったし、あれに勝てるぐらいになれば、十分成長したと言えるだろう。


「うん、決まりだな」

「……少し待ってくれ」

「ん?」


 俺は納得がいったんだけど、フレアは何故かしっくりきていないようだった。


「私には丁度良いと思えない」

「え」

「二人なら厄介だが、一人一人は大したことないように思える」


 マジか? まあ強いフレアからすればそう見えるのかもしれないが……。


「ちょいちょい、勝手に話進めないでよ。ていうか君、全然分かってないじゃん」

「ええ? 違うのかよ」

「全然違う! まあ負けたフレアに言う資格は無いと思うけど、僕がはっきり言おう。あいつらはまだまだ弱い」


 カルディアは容赦なく現実を突きつけてきた。女の子本人も強くないとは言っていたが、ここまではっきり言い切られると、一方的にやられてた俺の立つ瀬が無え…。


「したがって、あれに勝てなかった君はもっと弱い! てか雑魚!」

「うぐっ!? ちょ、おま、それぐらい自分で分かるから! あえて言う必要無いだろ!?」

「いいやあるね! 君は気持ち悪いぐらいタフな体に甘え過ぎだ!」

「ぐはっ!?」


 何かが俺の心に突き刺さる音がした。


「君は体が丈夫なだけで、本当はもう何回も負けてるんだよ!」

「ぐへっ!」


 また何かが俺の心に突き刺さる音がした。


「なのに結果的に、『結果的に』勝てたからって、調子に乗るな!!」

「ぐほぁっ!?」


 さらに数本突き刺さり、いくつかは俺の心を貫通した。結果。


「もう立ち直れねえ……」


 心の出血多量により精神が死んでしまった。全身から力が抜け、俺は雑草が生い茂った地面に倒れ込んでしまった。


「そこまで言うことないじゃんか……昨日のこと引きずり過ぎだよ……」

「死んじまったっす……」

「呆気なく逝ったな」

「フレア……?」

「なんでそんな追い討ちかけるんすか。ほら見るっす。生と死の瀬戸際で親友に裏切られた時の目でこっちを見てるっす」

「そ、そんなにキツい言い方をしていただろうか? すまない、以後気をつける」

「素っすか? 怖っ」


 怖え……。


「はいはい、茶番はそこまで。アラタもやかましいこと考えてないで元気出して。だから修行するんだろ?」

「……その通りだな」


 俺は傷ついた自分の心を優しく労りながら体を起こし、カルディアを見た。


「結局、カルディアが俺に求めるのはどれくらいの強さなんだ」

「あいつら二人を相手にして、楽に勝てるぐらいの強さ」


 それは俺が想像している少し上をいくものだった。


「二人を相手にして、か」

「『楽に』っていうのが重要だね。それぐらいにならないと、修行の意味がないかな」

「彼らは二人で戦う方が得意なのかもしれない。連携は良くできていた。だがそうなると、アラタに求められる実力はかなりのものだろう」

「…そうだろうけど」


 俺は勢いよく立ち上がり、軽く腕のストレッチを行いながら、


「不可能じゃない。やるだけやってみるよ」


 そう意気込んだ。素面の俺ではないが、既に一度達成している目標だ。できない道理はない。


「なら、早速始めようか!」


 そうして、今日の修行が始まった。

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