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畏怖×if 無に帰す魔法と八つの魔眼  作者: 金剛陽薙
第5章 枯れた大地を屍が這う
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第72話 ボードゲーム

「エルリア、何してるの?」


 カルディアとアッカドのケンカが収まった後、俺はエルリアに会うため二階の女性陣の寝室に来ていた。そこには案の定ガイウスもいて、二人でボードゲームのようなもので遊んでいた。


「ガイウスと遊んでるの」

「見ていくか」

「お邪魔します」


 うーん、良い空気。そういえばこの二人だけで遊んでいるのを見るのは初めてだ。どんな感じなんだろう。


「それはなんて遊びですか?」

「『魔眼戦争』と言うものだ」

「ま、魔眼戦争?」

「ああ。魔眼は全部で七つあるだろう。それを用いて作られたボードゲームだ」

「どういうルール何ですか?」

「基本一対一でやるものだ。それぞれの陣営に七つそれぞれの魔眼と王を表す計八つの駒が与えられ、王の駒を取った方が勝ちだ」


 なるほど、将棋に近いものを感じる。ボードにも将棋のようにマス目が作られていて、既に七つの駒が一列に並べられ、その一つ後ろの列に一個だけ駒が置かれていた。これが王かな。でも、魔眼と王を表してるって言ってたのに書かれてる模様は全部同じで、どれがどの駒か分からないな。


「でね、こんなふうに並べるんだけど、初めはどれがどの駒かはあいてにはわからないの」

「へー…じゃあ、ゲームはどうやって進めるの?」

「まずね、それぞれの駒は進めるほうこうが決まってるの。ななめに動けるのは破滅のまがん、たてよこに動けるのは業火のまがん。しかもこの二つは二マスずつ動けるんだ」

「ほうほう…」


 角行と飛車みたいな感じか。


「平和のまがんと魅了のまがんは前の三つのほうこうに進めて、後ろとよこにはいけない。略奪のまがんは全ほうこうに動けて、透視のまがんは動けないの」

「……透視は動けないんだ?」

「うん」


 カルディア……。


「でねでね、王はぜんぶのほうこうに一マスずつ動けて、仮定のまがんは後ろ一マスにしか動けないの」

「仮定は後ろ一マスだけ?」

「うん」


 またおかしな駒だな……どうやって使うんだろ。


「駒が分からないようになってるのは何でかな」

「あのね、実はね、この後ろにポツンとある駒が王とはかぎらないんだ」

「そうなの?」

「うん。ぷれいやーは初めに全部で八この駒を、この一列とその後ろのまんなかの一マスに、じゆうにおいて良いんだ」


 なんと、めちゃくちゃ奥が深いじゃないか。駒は初め隠されていて、動ける方向はそれぞれ決まっていて、置く場所も自由…。


「まだ終わっていないぞ、アラタ」

「え?」

「まだあるけど、聞く?」

「……聞く」


 興味が湧いてきてしまった。ここまで来たら全部聞こう。


「駒にもトクベツなのうりょくがあるの」

「例えばどんな?」

「業火はね、一度だけだけど、あいての駒を取ってその駒を消せるの」


 消す……つまり、自分の駒として再利用できない代わりに、ゲームから完全に排除できるということか。


「略奪はね、取った駒を自分のものにできるの」

「……あ、普通は無理なんだ?」

「むりだよ?」


 なるほどなるほど、勝手に将棋と比べてしまっていたが、相手の駒を取りながら進める遊びではないらしい。


「魅了はすすむ先にある駒を二ターン『こうどうふのう』にできて、平和はすすむ先にある駒が業火か略奪か破滅だったら、一度だけそのこうかをなくせるんだ。取られるときはふつうに取られちゃうけどね」

「ふむふむ……」

「透視はね、自分からこうかは使えないけどね、ぎゃくにあいての駒にこうかを使われるとね」

「使われると?」

「あいてのかくれてる駒が全部わかるの」

「わお」


 やるじゃないかカルディア。


「破滅のまがんはね、あいての駒を取るときとあいての駒の『たいしょう』になったときに、じぶんとあいての駒を消すんだ。

「道連れってこと?」

「そう」


 リスキーな駒だな。平和の魔眼の駒で対処しろということか。


「でね、仮定はね、一マス後ろにすすむと、なんでも好きな駒になれるんだ」

「ほうほう……王はどうやって取るの?」

「どれでも取れるよ。魔眼にこうかを使われたら負け」

「なるほど……面白いね!」


 聞くだけで面白そうだ。同時に難しそうだけど。


「ふむ、基本的なルールは分かったようだな」

「あ、はい。エルリアのおかげで」

「ならやってみるか」

「いいんですか!?」

「顔と声に出ていたからな」

「あ…お恥ずかしい」

「さて、エルリア、まだやれるか」

「うん!」

「え?」


 この流れはもしや。


「俺エルリアと戦うんですか?」

「ああ。だが、侮っていると立ち直れないほどに負かされるぞ」

「……やろうか、エルリア」

「うん!」


 こうして、エルリアと俺の激戦が始まった。


 このゲームは、相手の駒が何なのか、どれが王なのかを推測しながら王を追い込むのが基本的な流れらしい。一度効果を発揮したらその駒の正体が正式に割れ、駒が光る。なんと魔力を使うボードゲームのようで、駒自体がぱっと見ではどれが分からず、魔力を流して光らせることで分かるようになっていた。


 うん、奥が深い。業火と破滅は二マスずつ動けるという話だが、だからと言って下手に動かすとすぐに正体がバレてしまう。仮定なんかは後ろに動かすだけで相手にバレてしまうし、どの役割を持たせるかも重要になってくる。何気に魅了がめっちゃ大事かもしれない。動きを二ターン封じれるってデカいな。最大二つ完封できる。


 それから何戦かした。かかる時間は場合によってまちまちで、俺はかなり奮闘したのだが……。


「やっぱり勝てねえ……」

「なんだ、分かっていたのか」

「確証はなかったですよ。でもエルリアが相手だとそんな気がしちゃうんですよね」

「あまりそういうことを言うなよ。中身はちゃんと少女だということを忘れるな」


 そこは忘れるわけがないので安心して欲しいが、エルリア強すぎるって。そもそも、普通前列のど真ん中に王置くか? 戦略が玄人のそれだし、心理戦強すぎる。


「さて、もう良い時間だ。そろそろ寝よう、エルリア」

「うん」


 エルリアは目を擦りながら返事を返した。しまった、熱中し過ぎたか?


「大丈夫だよ、おにいちゃん。楽しかった」

「え!? あ、ああ、うん。なら良かった」


 ゲーム直後だからか、心を全部読まれる。あるいは顔に出てしまっているのかも…気をつけよう。


「えへへ、きょうは楽しかった! また遊ぼうね!」

「……うん。また遊ぼう。おやすみ、エルリア」


 そう言い残し、俺は部屋を後にした。そして一階に向かい、机で談笑している他の面々に加わった。


「どうだった? エルちゃん、満足してたかしら」

「はい。良い笑顔でした」

「よかった……全く、貴方がケンカとかするから心配になっちゃったじゃない」

「悪かったって。でもそれ、悪いの俺だけじゃねえよな?」


 そう言うと、アッカドはカルディアに視線を移した。カルディアの顔には先程の赤色が少し残っており、なんか、うん。ごめん。


「……はあ。あーあー、やめたやめた。アラタが要らないこと言うから辱めを受けたじゃないか。どうしてくれるんだ!」

「悪かったよ……でも、ちょっと仲深まったんじゃないか?」

「深まる必要はないと思うけどね」

「あるよ。そっちの方が楽しい」

「君って変に陽キャだよね。引くんだけど」

「当たりが強い……」


 引きずりすぎではないだろうか。


「明日からはまた修行再開っすか?」

「そりゃあもちろん。君たちには強くなってもらわないと困る」

「俺たちも明日からは金稼がねえとだな」

「そうね。ここに仮定の魔眼は無いみたいだし、頑張って早めに終わらせましょう」


 そんな感じの雑談を挟んで、俺たちは各々寝る準備をした。俺は二階の男陣の寝室に向かい、床に横になった。


 今日は全体的に見れば楽しい一日だった。エルリアも満足してくれたようで何よりだ。明日からはまた修行が始まる。頑張ろう。

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